アラームプレイングゲーム 『dreeps』
のスタッフインタビュー

Ongaku
8 min readMay 24, 2015

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アラームプレイングゲーム『dreeps』はクラシックなコンソールRPGの電子音楽とドット絵に影響を受けて、インディー開発者によって作られたiOSアプリです。私たちは、東京をベースとして活動するイラストレーター平岡久典、プログラマー渡辺大輔、音楽家藤田喬平の3人のチームに『dreeps』の開発について聞いてきました。

アプリのコンセプトの着想はどこからきましたか。そしてコンソールとスマホ、両方のスタイルのユーザーへのアピールを考えましたか。

平岡氏: 一言で説明できないので少し長くなっていまいますが…思いついたのは5年前くらいで、当時ぼくは仕事が忙しくて朝から夜遅くまで休みなく働いていました。

ゲームで遊びたいけど、ぼくが好きなのは異世界にどっぷり浸かって冒険旅行のできるRPGで、それを遊ぶには自由な時間や気持ちの余裕が必要になります。休憩時間に少しずつRPGを遊んだりもしましたが、仕事が忙しくなって何日かゲームを起動しなくなり、久しぶりにやってみると、セーブしていたダンジョンから出られなくなったり、必要なアイテムが何だったか忘れてしまいます。

きっとゲームの中の主人公も大変な思いをしながらがんばってくれていると思うのですが、残念ながらぼくは細かいところまで面倒を見れなくなってしまいます。ゲームの中の勇者になる資格がぼくにはないんだと思いました。だから、一緒に眠って起きて、プレイヤーは仕事や勉強や家事を、主人公は冒険をがんばるという感じに、並んで進んでいけるようなものがあったらいいな。そんな風に思ったのがきっかけです。

渡辺くんが良き相談相手になってアイデアを出したり意見をくれたのも今の『dreeps』が生まれた大きな要因です。また、彼が初めてプログラミングするものだったので、できるだけシンプルな構造で完結するアイデアにしなければならなかったというのもあります。

『dreeps』で遊んでくれる人物像に関して言えば、伝統的なコンソールRPGで遊んでいても、スマホアプリで遊んでいても、眠る前にアラームをセットする時間はあると思うので、『dreeps』のビジュアルやBGMに興味を持ってもらえたら、どんな人でも楽しんでもらえると思っています。

子供のときの好きなゲーム、また影響を受けたゲームをおしえてください。それはdreepsにどのような影響がありましたか。

平岡氏: 挙げればキリがないですが、『ドラクエII』は最初のRPG体験をさせてくれたゲームです。『シーマン』は触ったことのないものに触れる新鮮な喜びや、ゲームというカテゴリーの懐の深さに驚きました。『ワイプアウト』は世界観の魅力によって楽しみがより増すことと、デザイナーズリパブリックやテクノミュージックを知るきっかけを与えてくれました。

渡辺氏: 『Mother3』と『アクトレイザー』です。とくに『Mother3』は平岡くんからGAMEBOY microを借りてプレイしたのですが、エンディングで大泣きしてしまいGAMEBOYを濡らしてしまいました。(笑)そのように世界観やストーリーに浸って「ゲームの世界を冒険する」という体験は、間接的に『dreeps』の制作に影響しているかもしれません。

藤田氏: こどもの頃好きだったのは『ロックマン』や、『星のカービィ-夢の泉の物語-』や、『聖剣伝説2、3』などです。『dreeps』への影響でいうなら後者2つと、ここ数年の中で一番印象に残ったゲームである『洞窟物語』の楽曲などは参考にさせていただきました。

このチームはどうやって出会ったのでしょうか。打ち合わせやメールなど開発時はどのようなスタイルで制作を進めていたのでしょうか?また、お互いにゲームデザインをチェックしたりしていましたか。

渡辺氏: 僕と平岡くんはデザインの専門学校の同級生で、2人ともグラフィックデザインを専攻していました。 『dreeps』は平岡くんがグラフィック、僕がプログラムを担当、でも僕らは音楽は作れないので、このゲームの世界観に合う楽曲を作れる人を探していたところ、妻が藤田さんを紹介してくれました。

妻は映像や番組制作をしていて、そのなかで以前藤田さんにインタビューをしたことから彼の楽曲の良さを知っており、『dreeps』に合うんではないかと思ったそうです。そして実際にその通りでした。

制作中はお互いにメールやSkypeで連絡を取り合いながら、ときどき実際に会って打ち合わせをしながら進めていきました。開発の後半は毎日Skypeでビデオチャットで打ち合わせしていましたね。先ほどの話のとおり、それぞれグラフィックとプログラムで担当は異なっていたのですが、お互い色々とアイデアや注文をつけながら進めていきました。

また、楽曲は藤田さんらしいものを自由に作ってほしいと最初に彼に伝え、基本的にはお任せしていました。でも制作する中で、時々僕らも細かい注文をつけて困らせていたと思います(笑)。でも、いつも必ずその注文に応え、期待以上のものを作ってくれました。

『dreeps』は普通のゲームと異なるようですが、そのコンセプトを伝えるためにトレーラーで工夫した点などはありますか。

渡辺氏: まず制作中盤の昨年6月にティザートレーラーを作りました。『dreeps』のコンセプトは忙し人でもアラームをセットするだけでRPGの冒険気分が味わえることです。そのため普通のゲームの楽しみ方とはかなり違うので、「ユーザーの1日に『dreeps』が寄り添っている」というイメージを伝える絵コンテを描いて撮影しました。

リリース直前には、新しいリリーストレーラーを作りましたが、この時にはすでに『dreeps』が完成していたので、前回よりもゲーム内のアニメーションの動画を増やし、魅力的なキャラクターやピクセルアートがユーザーに伝わって興味を持ってもらえるようにしました。僕らは映像を作った経験がなかったので、どちらのトレーラーも妻に協力を頼んで撮影と編集をしてもらいました。リリーストレーラーの時には僕らの絵コンテではユーザに伝わらないんじゃないかということでボツになって、結局、妻がほとんど構成を決めて編集してくれました。(笑)

最近はスマホアプリがとても増えてきましたが、これによってゲーミングが変わったと思いますか? また、このトレンドは『dreeps』の開発に影響はありましたか。

平岡氏: これまではゲーム機本体を買わないとコンピューターゲームは遊べなかったので、スマホとスマホアプリによって色々な人が遊べるようになったのはいいことだと思います。電車の中で、オシャレをした女の子がゲームで遊んでいるという光景を、今では普通に目にするようになりました。『dreeps』はスマホがなければ生まれなかったので、自由にアプリ開発・リリースをさせてくれる環境にもとても感謝しています。

藤田さんは最近Bandcampでソロアルバムを出しました。アルバム作りと『dreeps』のサウンドトラック作りはどのように違いますか。

藤田氏: アルバムopus0.1は、今僕の持ってる物で、少しでも新しい、そして魅力的な音楽を作れないかと音楽を中心として挑戦した物になっています。『dreeps』の楽曲は、平岡さんの描く絵や、お二人の作り上げたゲームのコンセプト、世界観にどれだけ自然にマッチする楽曲を作れるかという、『dreeps』を中心として作ったものですので、その制作姿勢の違いが一番違う点だと思います。

若いデベロッパーに対して『dreeps』のように伝統的なゲームとは対照的な実験的なゲームを作るほうが良いと感じますか。

渡辺氏: 若い人に限らず、またゲームに限らず、誰かの気持ちをほんのちょっぴりでも豊かになると思うアイデアを持っている人はチャレンジして欲しいです。 そういう考えでモノをつくっている人には、必ず助けてくれる人がまわりに現れます。『dreeps』も多くの人のサポートがなければリリースまで来れたかわかりません。

『dreeps』リリース後ですが、なにか探求したいプロジェクトやアイデアなどがあったらお聞かせください。

平岡氏: ワクワクするようなものを作っていけたらなと思っています。また、『dreeps』はぼくが昔から考えている世界の中のほんの一部なので、物語の続きやもっと古い時代のことなど、表現させてもらえる機会があったらいいなと願っています。

渡辺氏: 『dreeps』製作中には様々なアイデアがでました。その中には今回は泣く泣く実装を見送ったアイデアもあります。もし『dreeps』が皆さんに受け入れられて制作資金ができたら、そういったアイデアを盛り込んだ次回作が作れたらいいなと思ってます。また、個人ではゲームやアプリに限らず、面白そうなアイデアならそれを実現するために何でも勉強したいです。

藤田氏: やりたいことはいろいろあるのですが、今年は久々に歌ものを作りたいと思っています。どんな形であれ、少しでも新しい音楽を模索していきたいです。

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