『チョコボの不思議なダンジョン 時忘れの迷宮』 ミュージックインタビュー

(c)2007 SQUARE ENIX CO.,LTD. All Rights Reserved. CHARACTER DESIGN /Toshiyuki Itahana

2008–02–06

ジョーダウンスタジオは北海道に拠点を置く音楽制作会社である。最近ではスクエアエニックスによる任天堂 Wii 用のRPGゲーム『チョコボの不思議なダンジョンー時忘れの迷宮』のオリジナルサウンドトラックの編曲を手がけている。プレーヤーがチョコボとなり、記憶を奪われた人々が住む街を中心に様々な謎を解いていくゲームである。ゲームの中で使われている音楽は、古いものでは任天堂エンターテイメントシステム時代の『ファイナルファンタジー』にまでさかのぼったものがアレンジされている。NINTENDO DS用のゲーム、『チョコボと魔法の絵本』でジョーダウンスタジオによる編曲を聴いたのを覚えている人もいるだろう。今回の作品では、Wiiが持つ新しいオーディオ機能と。ジョーダウンスタジオが持つ様々なオーディオ機器がフルに生かされている。『ファイナルファンタジー』の伝統的な音楽を、新しい世代のゲーム機で、従来とは一味変わった形で楽しむということをジョーダウンスタジオが可能にしてくれた。

ジョーダウンスタジオー (北海道 札幌市)

先月日本で発売された『チョコボの不思議なダンジョンー時忘れの迷宮』は全31曲を含む。作曲のほとんどは植松伸夫氏が手がけている。ゲームの中でアコースティックな音を模倣したり、シンセサイザーの一番高い音調層と同じ音を出すことが不可能だったスーパー任天堂時代のスクエアによる音楽を思い出す人も多いのではないだろうか。『時忘れの迷宮』OST の公式ウェブサイトで試聴可能な ”Memory of a Distant Day”を例として聴いていただきたい。

この曲は『ファイナルファンタジーV』の街のテーマをアレンジしたもので、曲の中では、アルバム『Dear Friendsーmusic from FINAL FANTASY』からの曲、”Home, Sweet Home”に敬意を表する意味でかすかなハミングが聞こえる。また”Pop−Up Duel”では、『ファイナルファンタジーII』 のバトルテーマがノスタルジックな響きのチップチューンから一転し、オーケストラバージョンとして聴くことができる。最近のものでは『ファイナルファンタジーX』で使われた濱渦正志による雷平野のテーマのリミックス、“Guardian of Light 1”があり、この曲の中では時計の秒針の音とギアの「ウィーン」という音が使われている。

冨井昭次氏はジョーダウンスタジオの代表取締役、またスタジオプロデューサーとしてジョーダウンスタジオが行う様々な音楽プロジェクトを総管理している。今回、最新ゲームのサウンドトラックのマスタープロセスの最中、RPGFanの為にジョーダウンスタジオの背景、そして彼らのスクエアエニックスとの最新のコラボレーションについて語ってくれた。

『時忘れの迷宮』オリジナルサウンドトラック

●株式会社ジョーダウン — 代表取締役 (冨井昭次)

Q: 北海道は日本のゲーム開発のコア地域から地理的に離れてはいますが、 数々の有名なミュージシャンの出身地としてはよく知られている土地ですね。 ジョーダウンスタジオは創立してどのくらい経つのですか。会社はどのような 環境のところにあるのでしょうか。

A: お陰様で弊社は今年で創業20周年を迎えました。 なぜ日本の北に位置する北海道、その中心である札幌なのかと申しますと、 単純に私(冨井)が札幌生まれの札幌育ちであり、 人口180万人という大都市でありながら自然も豊富で 四季がはっきりしている素晴らしい環境の札幌が好きだからであります。

●ジョーダウンの歴史

Q.ジョーダウンでは色々な媒体の音楽を作られているようですが、 ビデオゲームの音楽はどのくらい前から作られているのでしょうか。

A: ゲーム音楽制作に関わったのは15年程前からで、 Nintendoのスーパーファミコンやゲームボーイなどから始まり、その後 SONYプレイステーションやSEGAサターンなどを経て、現在はNintendoのDS やWii、マイクロソフトのXbox360などの音作りに携わっております。

弊社の特徴としては、多数の音楽制作スタッフと録音エンジニアを社員としてかかえ、 音楽制作(作曲・作詞・編曲・演奏)・オペレート作業・効果音制作、 そして録音スタジオでのセリフ収録や音楽録音など、 ゲームに必要な音すべてに対応できる体制と設備を整えていることです。 また、ゲーム好きなディレクター担当がトータルに監修して、 ユーザーに満足と感動をしていただけるように音の完成度を追求しております。

ゲーム音楽以外の仕事では、TVコマーシャル音楽・携帯電話の着信 メロディ・舞台音楽・TVやラジオの番組音楽など幅広く携わっております。

本当に小さな音楽制作会社ではありますが、音作りにかける情熱はどこ にも負けないとの意気込みで日々取り組んでいます。

ジョーダウンスタジオ内の風景

●作曲者について

Q.『時忘れの迷宮』の中では、従来の『チョコボ』のゲームシリーズと 同じく、聴く人に親しみのある『ファイナルファンタジー』シリーズから の音楽が使われていますが、今回の作品の中では特になつかしい曲が ふんだんに使われており、『ファイナルファンタジー』の熱狂的なファン にはたいへんうれしい内容になっていますね。過去に『ファイナルファンタジー』 の音楽作りに貢献してきた作曲家のどれくらいが今回の『時忘れの迷宮』 に携われているのでしょうか。

A: ゲーム内のBGMは作曲家植松伸夫氏(SMILE PLEASE代表)をはじめ、 スクウェア・エニックス所属の作曲家、浜渦正志氏、仲野純也氏、水田 直志氏、谷岡久美氏らによるものです。どれもFFシリーズで使用された 原曲です。さらに、今作ではオープニングデモ曲とオープニングムービー 曲には新曲が使われております。これらは谷岡久美氏が本作用に書き下ろ しをされた楽曲です。

●選曲について

Q.過去、数百曲以上の曲が、20年の歴史を持つ『ファイナルファンタジー』 シリーズ用に作曲されてきたわけですが、今回作品に使う曲はどのようにして 選ばれたのですか。

A: 最終的にはSQUARE ENIX様、ハンド様で決定されました。選曲に関しては、多く関わっておりません。ただ、要望としてより古い作品……ファミリーコンピューター、スーパーファミコン時代の曲をアレンジしたいと思っていることを伝えました。理由は、多くの音が使えるプレイステーション時代の音源をリアレンジするよりも、3和音、8和音時代の音楽を扱うほうが、ユーザーがより変化を楽しめると感じたからです。また同時に、古い曲のほうが 「時忘れ」の名に相応しいとも考えたからです。

ジョーダウンスタジオー

●新しい効果&感情表現

Q:『時忘れの迷宮』のオリジナルサウンドトラックに使われている曲について少し具体的にお話を聞かせて下さい。

A: ダンジョンRPGゲームとして機能させるために、単にファイナルファンタジーの原曲をアレンジしたという訳ではなく、どの場面で使うのかを検討し、シーンに合わせることを試みています。

ゲーム中に使われて面白くなければ意味がないと考えました。 ダンジョンで使う曲ならば、不安を煽る要素を取り入れ、戦闘シーンで使う曲であるならば、派手に気分を盛り上げる演出と、「時忘れの迷宮」のための楽曲がユーザーを盛り上げる手伝いをする。そのような方向になっていると思います。

解説をすれば数え切れないほどの工夫があるのですが、例えば「火のダンジョン」では、鉱山の雰囲気を出すためにツルハシの音をリズムの中に取り入れて使い、金属を擦ったような音が雰囲気を出しています。 「水のダンジョン」では、ふわふわ~っとした深海を演出する不思議なシンセサイザーが面白い味を出しているでしょう。記憶を取り戻すダンジョンでは、楽曲を一部逆再生させるなど、原曲のイメージ+アルファの部分にゲーム内容との「関連性」を持たせているつもりです。

DS「魔法の絵本」では限界があったサウンドの表現手法が、プラットフォームの変更=Wiiでオーディオ化されたことにより、いろいろ実験したいことを実現できました。(あくまで原曲を壊さない範囲です) こうしたアイディアは、用途があらかじめどのシーンで使われるのかが、決まっていなければ不可能なことでした。ゲームをプレイされる際にそういった 音楽のギミックによる面白みや意図を感じていただけると、より深くゲームを楽しんでもらえるかもしれませんね。こうしたアイディアは、用途があらかじめどのシーンで使われるのかが、決まっていなければ不可能なことでした。ゲームをプレイされる際にそういった音楽のギミックによる面白みや意図を感じていただけると、より深くゲームを楽しんでもらえるかもしれませんね。

懐古的な過去の名曲のリアレンジという意味だけではなく、あくまで「時忘れの迷宮」という新作ゲームで効果的に使われる楽曲として、面白いものになっていると嬉しいです!

Takahashi Yuzo

●アレンジ担当者としての個人的なコメント(高橋雄蔵)

Q: ジョーダウンスタジオが手がけた『チョコボ』シリーズでは、どのようなお仕事をされてきましたか。

A: 私は「魔法の絵本」ではアレンジ・作曲・マニピュレートを、「時忘れの迷宮」ではアレンジとジングルの作曲を担当しました。2年間、「チョコボ」そして、名曲たちとお付き合いしてきました。素晴らしい機会を与えていただいたことを感謝します。

今作の音楽は、ファイナルファンタジーを知っている人たちなら、「分かってもらえる」アレンジになっていると確信しています。今後世界中のユーザーに、これからこのアレンジ集が聴かれることになるかと思うと、とてもエキサイティングな気分です。最後に、私事ですが、このゲームが発売された12月に長女が生まれました。思い出深い仕事になりました。

●一番好きな曲

Q:『時忘れの迷宮』の中で使われている曲で一番好きな曲はどれですか。

A: どの曲もよいと思いますが、強いて挙げるならば、今回中ボス戦で使われている「ゴルベーザ四天王とのバトル」は凄く好きです。小学生の時、この曲をFFⅣ(英語圏ではⅡですが)のゲーム中に聴いて心底震えました。

そのときの自分の感動が、初めて聞くかもしれない若いユーザーに伝われば良いのですが!

翻訳: カオル・バートランド