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『SIREN:New Translation』楽曲インタビュー

2008–08–14

Siliconera インタビュー

日本の羽生蛇村を舞台にしたプレーステーション2ゲーム『SIREN』は2003年に日本でリリース、2004年にアメリカでリリースされた。この薄気味悪いストーリは、羽生蛇村に伝わる心霊的なオカルト話、奇妙な儀式、そして「屍人」と呼ばれ夜になると響き渡る不気味なサイレンに導かれ人間を襲う死体達などの真相を探る為にやってきた若者のグループを中心に展開される。

プレーヤーが他人のキャラクターの視界を覗き見ることが可能な「視界ジャック」というユニークなシステムが導入されており、三日間に渡る羽生蛇村での逗留を生き延びるにおいてプレーヤーの慎重さとスキルが試される。外山圭一郎監督は、時系列順に進まないストーリー展開でもプレーヤーにチャレンジしている。不気味な声と気味の悪い音響が強調されたアンビエントサウンドは冷水ひとみとゲリー芦屋によって制作されており、登場する人気のない片田舎の村人達に独特の地域特性を与えている。

そしてあれから2年経った今、プレーステーション3のゲームとして『SIREN』が再び羽生蛇村へ戻ってきた。『SIREN New Translation』では新しいアプローチが試みられ、ゲームの構成はTVドラマのように全12エピソードから成り立っており、プレーステーションネットワークのオンラインストアでエピソードのダウンロードが可能になっている。日本では『サイレン:New Translation』というタイトルでリリースされており、今回はアメリカ人の映画撮影スタッフがキャラクターとして初登場し屍人を相手に戦うことになる。新しい戦闘システムとスプリットスクリーンでの「視界ジャック」も楽しめるようになっている。

『SIREN New Translation』では前回に引き続き冷水ひとみが音楽を担当。8月27日には日本でTeam Entertainmentよりオフィシャルアルバムがリリースされる。そして今年の終わりには『SIREN』のオリジナルサウンドトラックもリリースされる予定。今日は、テレビ、映画、ビデオゲームを手がける作曲家として大活躍する彼女にインタビューした。

冷水さん、今日はお忙しいスケジュールの中、Siliconeraのインタビューの為にお時間を作っていただきありがとうございます。『SIREN』シリーズでの冷水さんの音楽と、冷水さんのミュージシャンとしてのキャリアについてお話を聞かせて下さい。

冷水氏: そうですね。今までいろいろな事をやってきましたので、実体をつかみにくい存在になっているかもしれません。
大きく分けると、”冷水ひとみ”という個人名での、映画やテレビなどのサウンドトラックの作曲家としての活動と、”Syzygys” (シジジーズ) というバンドとしての演奏、作曲活動が並行しています。Syzygysは、バイオリニスト”西田ひろみ”とのDuoで、John Zorn主催のTzadik レーベルからアルバムを発売しています。

カンタンに言いますと、単独で作曲したものは”冷水ひとみ” 、二人で作曲している場合”Syzygys”ということになります。『SIREN』のようなコワイ音楽を私が作っていることをSyzygys ファンは全く知らないと思います。聴いたら驚くんじゃないかな。“冷水ひとみ” 個人の作品も、ホラーからコメディーまであまりに多様なので、これまた全体像が掴みにくいかもしれません。

Syzygys のウェブサイトでは、冷水さんの映画音楽についての情報が載せられています。2001年のコメディー映画『ウォーターボーイズ』は日本アカデミー賞で最優秀音楽賞を受賞、フランスで行われた第27回アヌシー国際アニメーション映画祭では短編アニメーション『頭山』がグランプリを受賞。冷水さんはライブアクションとアニメーション映画の両方のお仕事をされたことがありますが、音楽の媒体としてのビデオゲームならではの特徴は何だと思われますか。

冷水絶対時間が固定していないことだと思います。実写でもアニメーションでも、時間は一定方向に流れ、その長さ(duration)も固定しています。上映の度に「今日は早く終わりました」なんてことはありません。

ゲームの時間は、時折戻ったり、繰り返したりしますから、プレイする人によってその長さも違ってくるわけです。音楽というものは、時間芸術であり、通常は、不可逆な時間の上に成り立つものですから、ゲームにおける音楽は特殊なケースで、特殊な形式にならざるを得ません。いわゆるLoopです。

そこで、Lloopを作ることを前提に作曲をすすめることになりますが、こういうLoop作りの苦労というのは、ゲーム音楽にしかない難しさだと思います。しかもloop回数はplayする人に委ねられるものですから、ゲーム中のBGMが実際、最終的にどういう風に鳴るか、作曲者は完全にはコントロールできないのです。

Siliconera『SIREN』シリーズのテーマに比べると、上にあげた二つの映画は大変楽しい内容のものでしたが、一般的に「サバイバルホラー」として知られているジャンルをどう思われますか。冷水あまりよく知らないのです。ジョンカーペンターの作品などは好きです。ホラーでは、「サスペリア」や「キャリー」のような女の子モノが好きです。

プレイステーション2の『SIREN』の音楽を担当されることになったきっかけは何でしたか。それ以前に携われていたプロジェクトの種類に比べてそれは大きな飛躍でしたか。

「学校の怪談」というホラーのTVシリーズを担当していたのがきっかけだと思います。それは一般向けのテレビ番組で軽めのものでしたので、本格的にホラー1色というようなものを作ったのは『SIREN』が初めてで、雰囲気に入り込むのに少し時間がかかりました。

プレイステーションはそれまでにもいくつかてがけていましたが、「牧場物語」など、どちらかというとホノボノしたものばかりで、ホラーとはかけ離れたものでした 。

作曲をされるにあたって特にリクエストや指示はありましたか。
それともすべて冷水さんの独断で作曲されたのですか。

冷水この時は新シリーズのスタートでしたので、すべてSCEのサウンドディレクターの指示のもとに作曲していきました。

「楽音は極力使わない」「音楽表現は避け、ひたすらアンビエントでなにも起こらない5分以上の長いLOOP」「和の要素」など音楽家にはなかなかキツイ注文でしたね。

ゲーム映像は開発中で、まだ見ることができない状態でしたから、たくさんの写真とシナリオ等を頂き、それでイメージを描きながら作っていきました。

ゲイリー芦屋さんと共同作曲をされた感想をお聞かせください。

芦屋さんとは実際にご一緒にお仕事をされたのですか。それともお二人で仕事を分けられてそれぞれの課題を決められて作曲をされたのですか。冷水基本的には声を素材にした部分を私、それ以外をゲイリーさん、と大ざっぱに分担し、あとはその都度相談しながらすすめていきました。同じ事務所所属ですし、お互いの特性を知っているのでやりやすかったです。

『SIREN』シリーズの開発当時、外山圭一郎ディレクターとシナリオライターの佐藤直子さんにとって、この「屍人」の物語をゲームプレーヤーに語ることにおいて何が一番大切なポイントであったと思われますか。

「和の恐怖の抽象表現」でしょうか。直接的な恐怖ではなく、ヒタヒタと触覚で感じるような圧迫感みたいなものの演出ではないかと思います 。

曲の多くはゲームの中に出てくる場所の印象や雰囲気をまるで模倣している感じのものばかりです。羽生蛇村に独特の声を与えるということは冷水さん独自のアイデアだったのでしょうか。

冷水まず羽生蛇村という場所の情景と雰囲気を作り上げることが最重要課題でしたが、その土地に因習のように伝わる土着信仰みたいなものの宗教観を表現するのに、声の要素は不可欠だろうということは、最初のミーティングで話し合いました。

BGM中にも声をちりばめているのは、どんなノイズの中においても、人は人間の声を敏感に聞き分けますし、それをあるはずのないところにおくことによって、不安感や恐怖感をあおれるのではないかという意図でした。Siliconera『SIREN』のテーマは日本で大注目されました。

『SIREN: New Translation』用の音楽には新しいアレンジメントが施され新しい楽器も加わっているようです。このオリジナルのテーマに戻り、さらに新しい解釈を加えた裏にはどのような意図があったのでしょうか。冷水これは、新しく作り直すかどうか、かなり最後まで迷いましたが、物語の舞台が『SIREN』の羽生蛇村に戻るので、テーマ自体は同じにして、ゲーム同様、文字どおり新訳ということで新アレンジにしました。旧『SIREN』のファンには、懐かしく感じられて喜んでいただいたように思います。

今回は柚楽弥衣( Yula Yayoi)さんの大人気のVocal versionの他に、インストゥルメンタルバージョンも新たに作りました。

時空の歪みのような世界観を表現するために、オンドマルトノというフランスのvintage電子楽器を、数少ないオンディスト市橋若菜( Wakana Ichihashi )さんに演奏してもらいました。「なんの楽器かな」と不思議に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

『SIREN: New Translation』では声の出演はされましたか。例えば、ゲームのクレジットが流れている時に聞こえるお経を唱えるような声など。

していません。屍人にはなりたくないです!

プレイステーション3用に作られたこのタイトルはテレビドラマを思わせるスタイルになっています。これはテレビドラマファンにとってこのゲームを馴染みやすくする為の試みだったのでしょうか。

エピソードごとにダウンロード販売という新しい方式のためです。
今回は1エピソードごとにダウンロードが解禁(注:日本版)されていく、という面白い試みで、テレビドラマのように楽しめる作りになっています。

最初この話を聞いたときは驚きました。私はテレビドラマ「LOST」の大ファンで毎回予習復習をしながら見ていますが、それと同じように、毎回、次をまちわびながらゲームをplayするのはきっと楽しいだろうと思いました。私自身はそういうのに夢中になるタイプですから。

『SIREN』シリーズのアルバム3枚を今年リリースすることになった一番の理由は何でしょうか。

SIRENファンからの熱い要望あってのことだと思います。本当に嬉しいことです。この場をお借りして深く感謝します!

最後の質問になりますが、冷水さんのウェブサイトによると、冷水さんはSFファンということですが、『スタートレック』の中でなりたいキャラクターなどがいれば教えて下さい。

コスプレでライブなどしたりもしています。恥ずかしいですネ。
ええと・・、ボーグの下っ端ドローンになりたいです。
集合意識の生命体に憧れています。


2008–07–01

Siliconera インタビュー

近年のデジタル配信の普及によって、多種多様なゲームが市場に出回っている。パズルゲームのジャンルでもその流れを受けて今、新しいスタイルのゲームが注目を浴びている。

Playstation 3とPSP専用タイトル、「無限回廊」 はあの画家M.C.エッシャーの独特な作風、特殊な線の構成からなる錯視を利用した絵画から直接インスピレーションを得ているという 意味でも革新的な一作だ。「無限回廊」ゲームプレイ中の物理原則は全てプレイヤー独自の視点の切り替えによって決定され、本来は実行不可能なアクションも 錯覚によって不思議と可能にしてしまうのである。作曲家、坂本英城はこの革新的なゲームの音楽を書くにあたりクラシック音楽のスタイルを大胆にも起用。こ れによって従来のゲーム音楽には無い斬新なサウンドトラック を作り上げたのだ。ここでは、作曲家坂本英城氏を招待し、この型破りなゲーム「無限回廊」の型破りなゲーム音楽、そしてさらにはゲーム開発の裏側へも深く迫っていこうと思う。

>> Noisycroak 「無限回廊」楽曲インタビュー

— — 坂本さん、この度はインタビューにご協力くださりありがとうございます。

坂本英城: いえ、とんでもないです。こちらこそよろしくお願いいたします。

— — 早速質問ですが、今回はタイトル無限回廊、坂本さんはゲーム開発のどの段階で音楽作曲を開始しましたか?

坂本英城: 一般的には、音楽の制作は企画やシナリオ、グラフィックがある程度出来あがってから始めることが多いのですが、本作「無限回廊」では、他のゲーム制作と比較してかなり早い時期から作曲に着手させて頂きました。目で見ることのできる資料が、またゲームの基本ビジュアルイメージとコンセプトだけの状態で、すでに作曲に着手をしていたと思います。

— — ゲームの視覚的デザインは画家M.C.エッシャーからの影響を大きく受けています。有名な科学者ダグラス•ホフスタッターの著書に『ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環』というのがあるのですが、そこでは絵画と音楽の構成のシンメトリー性についてが書かれています。坂本さんにお聞きしますが、一般のゲーム音楽で使用される電子音楽とは対照的にクラシック音楽のスタイルを起用する上でゲームの視覚的な方向性にあった音楽を作曲するということで、どのような作曲的アプローチがありましたか?そのプロセスについてお聞かせください。

坂本英城: そうですね・・・「無限回廊」の削ぎ落とされたシンプルでスタイリッシュな外観にマッチする音楽が何か、という点では当初非常に悩みました。

開発者のみなさんの意見を伺いつつ、結果的にクラシック風の楽曲の採用を決めましたが目から飛び込んでくる情報が、非常にシンプルなゲームですので、耳からの情報に具体性が強すぎてはいけない、という思いはありました。

そういう意味で、あらかじめ楽器の特定されているクラシカルな音楽であれば少なくとも普遍的・一般的に人々の意識に浸透しているクラシカルな楽器以外の特殊な楽器や音色を使用することは無いわけなので、その点で具体性を幾分か排除できることを期待しました。

— — 楽器構成の弦楽四重奏をお選びになったのは理由というのは?

坂本英城: これは前述の延長で、より具体性を排除した結果です。バイオリンが2本とビオラ、チェロという構成は非常にシンプルで無限回廊の世界に合うかな?という漠然とした思いがありました。

しかしながら、シンプルな楽器構成ということはつまり、音色やサウンドエフェクトなどで楽曲同士の差別化を図れないので作曲力、編曲力を大いに試されることになります。このことが、制作を進めていくにつれ少しずつ自分自身を苦しめていくのですがこの段階ではまだ「弦楽四重奏にしたらかっこいいんじゃん?」くらいにしか考えていませんでした。

— — 曲名に素数をお使いになった理由をお聞かせください。

坂本英城: 歌詞のあるメッセージ性の強い楽曲は別としまして、曲名というのは私自身、本来あまり必要のないものだと思っています。曲名はあくまで曲を識別するためのものでありながらも、それが曲の印象を決定付けてしまうことも往々にしてありますので特に無限回廊のような作品では慎重を期しました。

最初は哲学的な言葉を曲名にするアイデアも私の頭の中にはあったのですが、ある時突然、数字、それも素数にしてみてはどうだろう、面白いのではないか、というひらめきがありました。

楽曲を聞いたときの受け取り方は、人それぞれあって良いと思います。言語や文化を超越した素数という概念を曲名に用いることで極力、楽曲に先入観を持って頂いたり、付加価値を感じられたりすることのないようにしたのです。

— — 楽曲のどれをとってみても、非常に情熱的で深みのあるものばかりですが、実際のゲームプレイではいわゆるRPGのジャンルで見られる壮大なストーリーやドラマは目立ってございません。それにも関わらず、実際は音楽がゲームに素晴らしい程マッチしていると思うのですが、実際に曲を書くプロセスではその外見上のギャップによる不安のようなものはありませんでしたか?「これは合わないんじゃないか」とか。また、それが「マッチする」という確信に変わったきっかけは何でしたか。

坂本英城: マッチする確信に変わったのは、曲がゲームにアサインされてからですね。それまでは「この楽曲ならおそらく無限回廊の世界に合うだろう」という想像のようなもので制作を進めていました。

今回は主人公が戦闘をするわけでもないし、さらわれた姫を助けに行くのでもない、不幸に直面するわけでも、恋に落ちるわけでも、大声で笑うわけでもない、そのような無感情な題材に対して、音楽を制作するということは初めてでした。ですから、途中までは「おそらく」「たぶん」というように感覚的に作曲をしていました。

しかし、ゲームにおいて音楽の持つ力は計り知れないことも知っていましたので無感情で機械的な楽曲を作っても面白くないし、私が担当する意味もないと思いましたので、逆に「すべての感情もあわせ持っている」ということを表現するために、様々なアプローチを試しました。

また、クラシックとはいえ、模倣とならないよう、クラシック音楽の歴史にあまりないタイプの楽曲を作ろうという意識は強く持っておりました。

結果的には、まんべんなく感情のバリエーションが各楽曲に行きわたりクラシックとして、新しい試みにチャレンジすることができた手ごたえを感じています。弦楽四重奏という楽器構成が、楽曲が具体化しすぎないよう良い具合に歯止めをかけてくれたお陰で、音楽がうまくゲームの中に浸透できたと思います。

このような苦労がありましたので、音楽にゲームがマッチしていると仰って頂けることは私としては本当に嬉しいことです。

— — トラック「prime #3」は北薗るみ子さんの透き通るような声が印象的な曲目ですが、当初どのような意図があり声楽を入れようとお思いになったのでしょうか。

坂本英城: 「prime #3」 はPSP版無限回廊のオープニングテーマですが実は北薗さんの声楽入りのトラックはあと2曲あります。1曲は「prime #2」で、こちらはPS3版のオープニングテーマです。実はよく聞くと、PSP版とは違う曲なのです。

もう1曲は、なんとサントラにしか収録されていない「prime #9973」です。この曲は色々と訳あってゲームには収録されなかったのですが、とても情熱的で感動的な曲に仕上がっております。

ご質問に戻りますと、まずオペラは、オープニング曲を他の楽曲と明確に差別化したい、という意味で、本作のプロデューサーであるSCEの鈴木氏と相談のうえ、採用を決めました。声というものは他のどのような楽器よりも説得力を持っていますからゲームへの入り口に立っているということを、ゲームを起動するたびにプレイヤーに感じてもらうことで、同時に他の楽曲も引き立つのでは、という思いがありました。

— — ゲームをプレイする側にとっても、はっとするんですが、音楽がゲーム中ループされていないんです。これによってはっきりと始まりから終わりまで完結したという感覚が生まれるんですが、パズルによって曲が決まっているわけではないのでプレイヤーは特定の曲とパズルを関連づけることはないわけです。開発段階では曲をループをして特定の曲には特定のパズルをつけるというような実験を試みたようなことはありましたか?

坂本英城: それは開発途中、一度も試してみたことがありませんでしたね・・・。プロデューサーである鈴木氏の強い意向で、当初から楽曲をランダム再生することはほぼ決まっておりました。

パズルと楽曲を組み合わせないことは、どのパズルに対してもプレイヤーごとに異なる思いを抱いて頂いてよい、という制作側の意図の表れであると思って頂けるとよいと思います。

ゲームによっては、よりプレイヤーの意識をストーリーに惹き込むために音楽の力で悲しみや喜びや強さ、優しさなどを表現することもありますが無限回廊で大切にしたのは、プレイヤーが感じたそのままの感覚です。音楽でプレイヤーの心をコントロールすることのないよう努めました。これも、私にとっては初めての経験であり、非常に勉強になりました。

— — ノイジークローク についてお聞きしたいのですが、ゲーム音楽を専門に扱われているという事で映画やテレビ番組の音楽をやっているスタジオとの決定的な違いはなんでしょうか。また、たくさん演奏家がいらっしゃるわけですが、みなさんは実際ノイジークロークに所属しているということでしょうか?

坂本英城: ゲームサウンドは、他のメディアにはない特殊さで溢れています。たとえば、同じ曲をループ再生する、データ容量に注意しながら曲を作る、プレイヤーの任意操作で音が出る可能性がある・・・などなどです。

チェスのルールを知らない人が勝負に勝てないのと同じく、これらの特性をしっかりと把握していないと、プレイヤーの心に響くゲームサウンドは絶対に作れないのです。

ノイジークロークがゲーム音楽を専門としているのは、専門にしなければ極めることが出来ないほど、ゲーム音楽の世界は広く深いということなのです。

私たちもまだまだ日々勉強を重ねていますが、ゲームサウンドに関するスキルは少しずつ蓄積されてきたと実感しています。そのような経験や情報力がものを言うスキルと、高い音楽性を併せ持つこと、そして何より作曲家が音楽に込めた情熱や心の温度が高いほどゲームの芸術性や面白さをより高めることになると信じています。

今後のゲーム業界は、ゲーム音楽にもっとスポットを当てるべきですし私たちのような作曲家も、そうなるように努力しなければなりません。

また、ノイジークロークに所属しているスタッフは演奏家ではなく多くは作曲家です。それぞれがゲームサウンドに長けており、作曲以外にも効果音制作など一通りのゲーム音楽制作作業を行うことができます。

あと、みんないいやつです。

— — 近年のゲームの止まらない挑戦といいますか、どんどん新しいものが生まれて来ています。ゲーム音楽に関しても、新しいものが出て来ていますが、この全体の流れについてどう思われますか?

坂本英城: 新しいものが生まれるということは、それだけ多くのアイデアが生まれているということなので、とても素晴らしいことだと思います。

私たちは、ゲームでの音楽を再生する仕組みや仕掛けのようなものは、まだまだ新しいアイデアが埋もれていると思っており毎日のように頭をひねっています。

しかし音楽そのものは、あまり流行に左右されるべきではないと思っています。音楽の本質的な良さを知ることは、作曲家にとって大きなテーマであり商業主義的に音楽を作っていては、絶対に到達できないものです。

新しいものが、イコール良いものなのかどうか、それを見極めることのできる眼や耳を持つことが何より大切なことだと思います。

— — 無限回廊が過去のゲームのハード機器で同じような完成度を達成するとは考えがたいですよね。ゲーム音楽の作曲者というお立場から将来、どのようなコンセプトでの制作の取り組みが本当に素晴らしいゲーム音楽プロジェクトを成功させると思いますか?

坂本英城: 仰る通り、無限回廊を過去のゲームハードで動かすことは考えにくいことですね。

今後もゲームハードの性能は進化を続けると思われますが、その性能を存分に発揮することに意識が行き過ぎて制作者の心が宿らない作品が世に出るのは寂しいことです。

思えば同時発音数も限られていた8bitサウンドの時代には、ゲームから歌声やフルオーケストラが流れてくる時代を夢見ていました。

それが現実となった今、私たちは「次世代機ならではのクオリティの高い音楽」と「ゲーム音楽としてのオリジナリティ」というある意味相反する2つの壁に挟まれてもがいています。

プロジェクトの成功が、商業的な成功ということではなく作品としての成功というアーティスティックな意味であれば、やはり、ゲームサウンドの仕組みをしっかり把握したうえで、音楽力を磨くことが、成功のために何より必要なことでしょう。

私の目標は「映画のような素晴らしい音楽ですね」ではなく他のメディアの作品を「ゲームのような素晴らしい音楽ですね」と言わしめる時代を作ることです。

— — 坂本さん、本日は貴重なお話ありがとうございます。

坂本英城: 長々と失礼いたしました。こちらこそありがとうございました。


2014–05-10

Final Form Games は17世紀植民地の雰囲気の漂う火星を舞台とするサイエンスフィクションのシューティングゲーム、『Jamestown』をこの夏までにPlayStation 4用にアップグレード移植すると発表した。

『Jamestown Plus』には、オリジナル版のシューターに加え、さらにアップグレードされた種類の戦闘機や火星の衛生であるフォボスとダイモスを舞台とする未公開のレベルも用意されることになっている。このゲームはPlayStationネットワークからダウンロードすることができ、これまでに無い広大な時空の果てに広がる深いストーリーを楽しむことができる。

GunpointやFrog Fractions 2などのゲームミュージックを共同作曲してきたチリ出身の作曲家フランシスコ・セーダは、このゲームのサウンドトラックをリマスタリングしてリリースする予定でいる。

彼のメールによると、このアルバムには「最終レベルのファンファーレ、ゲームオーバーのテーマ、メニューマップのテーマやカバーバージョン、そしてB面版などのオリジナルゲームのサウンドトラックには収めきれなかった残りのサウンドトラックがすべて」再検討されて収録されることになっているそうだ。

PlayStation Blog — Jamestown Plus coming to PS4 this summer


200–7-5

GameSetWatch インタビュー

この度、GOMIBAKOが北欧圏でも待望のリリースとなった。このタイトルはPlaystation CAMPに集結したインディペンデントゲーム制作者たちの手によって制作され、昨年のTGS Sense of Wonder Night でもクオリティの高さとその斬新さが大変注目を浴びた。ものを”ぶっつぶす”スタイルのこのゲームのお手ごろ低価格ぶりもまた魅力の一つだ。

さて、今回のインタビューはこのゲームの音楽を担当したスタジオMega-Alpha Incより、藤門太郎氏、加藤智之氏のお二人をお招きしお話を伺った。Mega-Alphaは 朝倉紀行率いる東京を拠点として、アニメやゲームといった様々なスタイルの音楽制作を器用に手がけるトップクラスの音楽制作スタジオである。今回はこの音楽制作スタジオのお二人にサントラ制作時のサンプリングの工夫の仕方やオーケストレーションについて詳しくお話いただいた。


2009-7–20

日本で大人気を誇るタイトル「龍が如く」シリーズは北米での人気も高いのだが、「極道」を背景にしたこの日本ならではのゲーム設定。海外のユーザーに同等に楽しんでもらうために、緻密な翻訳作業が必要になるわけだが、シリーズを通してローカライズがなかなか実現されないという現状があるのはこのテーマ設定のためかもしれない。

今作の「龍が如く 見参!」では宮本武蔵を主人公に世界が繰り広げられるわけだが、日本のサムライをテーマにした内容という事で西洋のファン待望のローカライズにはさらに慎重な作業を要したようだ。音楽もまた、ロックの要素に古楽器を混ぜるという大変面白い仕上がりだ。今回の記事では「龍が如く」シリーズ制作に携わったコンポーザー、サウンドデザイナーの方々5名にお集まりいただき、シリーズを通してのサウンド制作についてお話しいただいた。

インタビューに参加いただいたのは、作曲家、庄司英徳氏。「龍が如く」シリーズの最新作がPS3にて進められているが、その音楽を担当しているのがセガのコンポーザー庄司英徳氏だ。さらに音楽制作会社ノイジークロークよりディレクターの坂本英城氏。

ノイジークロークより加藤浩義氏、いとうけいすけ氏、湯川強氏の三名もそれぞれ今作のサウンドを手がけ、それぞれのお仕事についてお話しいただいた。ゲーム「DANCE DANCE REVOLUTION」のダンスミュージック作曲を担当した加藤氏は今回主にミニゲームの音楽を担当。遊女のシーンを担当した、いとう氏はゲーム「銃声とダイヤモンド」の音楽もソロで担当し、サントラが先日リリースとなっている。ゲームの要素でも重要な、効果音部分を担当した湯川氏は「龍が如く2」よりシリーズの制作にサウンドデザイナーとしての重要な役割を担っている。

ゲームのストーリーが時代劇スタイルと初めて聞いた時どう思いましたか。それはいいアイデアだと思われましたか。

庄司英徳: 最初は冗談だと思いました。

音楽についてどう思われましたか。

庄司: 時代劇ということで、古風な昔の「和」の音をもっとフィーチャーするべきかという悩みは初めはあったんですが、宮本武蔵が桐生一馬之介になっているっていう設定の段階でもう時代考証っていうのは関係ないなと。

これはもう「イッツ エンターテイメント!」っていうことで現代のロックとかをベースにしよう、っとなりましたね。

もちろん「和」の音も入れるべきところは入れたいなっていう気持ちはあったんで、締めるところは締めて、突き抜けるところは突き抜けてしまうようにしました。

庄司さんは“TAKUMI”という曲の現在のバージョンがありますけど... その曲についてお話をきかせてください。

庄司: 古牧(こまき)というキャラクターがシリーズを通して出て来るんですけど、2まで修行のシーン専用の曲がなかったんです。

修行をして得られる物というのも本編とはまったく別のものなので、専用に特別曲を書くということはしてなかったんですけど、『見参!』になってからは割と修行をして強くならないと本編で大変な目に合うというゲーム内での位置づけが大分変わって来たので、『見参!』の時には修行のシーンも盛り上げましょうという話になりました。専用の曲を書くようになって、『見参!』以降『龍が如く3』でも古牧と言えばこのテーマ!みたいな位置づけでアレンジして使いました。

坂本さん, ノイジークロークについて説明していただけますか。

坂本: 株式会社ノイジークロークの代表取締役の坂本英城と申します。『龍が如く 見参!』の劇伴部分で主にお世話になりました。他には、『無限回廊』は『勇者のくせになまいきだ。』などのサウンドを作っています。

いつ設立されましたか。

坂本: 2004年3月からですので、ちょうど5年目になります。僕自身がフリーランスでゲームのサウンドを作っていた時に、ちゃんとした「会社」じゃないと、メーカーと契約ができなかったという理由で法人化しました。なので最初の二年間は一人で会社を運営していました。

過去に音楽の勉強は専門的にされていたのですか。

坂本: 4歳のときからピアノを習っていたくらいで、他は好きな音楽を聴いてコピーしてみたりだとかっていうことをやっていただけです。ゲームは小学生のときに出会ってから夢中でやりました。その時にファミコンブームがありましたが、その前に「カセットビジョン」っていうものがあったんです。もっとさかのぼれば「ゲームウォッチ」ですよね。

小さいときから本当にゲームが大好きで、まあこれはあちこちで言ってますけど、当時ピアノを習っている男の子というのは珍しかったので、よくからかわれました。ところが、ある時ゲームの音楽をピアノで弾いてみたらヒーロー扱いされて勘違いしちゃったみたいな感じです。

そのときはゼルダとかマリオとかドラゴンクエストとかを弾いた気がします。みんなに「弾いて!弾いて!」と学校の音楽室で言われてました。そして先生が来て「授業はじめるぞ!」「きゃ〜!」みたいな感じです。

ゲーム音楽を作りたいと思われたのはいつ頃でしたか。

坂本: それが中学の時なので、作曲にも興味がありましたし、ゲームも好きだったので、親に無理を言ってパソコンを買ってもらいまして。当時は「MML」っていって自分でキーを打ち込んでFM音源を鳴らして「にんまり!」みたいな。そんなことをずっとやってました。

最初に仕事を頂いたのは23歳の時だったと思います。「予算がないからお前にしか頼めない」って言われて(笑)。確かパソコンソフトの音楽でした。

現在の従業員の数は何人ですか。

坂本: 現在、社員が3人でアルバイトが2人、作曲家が10人ちょっとです。

スペシャルイベントなどの予定はありますか。

坂本: そういったイベントの予定はないんですが、来月6月の中旬にゲーム音楽作曲の大御所と言われている人たちをここに集めて皆で騒ごう!っていう会があって、そこではビデオも撮り、写真も撮り、みなさんの会話をテキストにまとめて、ノイジークロークのサイトで公開しています。出演していただく方が庄司英徳さんはじめ光吉猛修さん、佐野電磁さんってご存知ですか。『リッジレーサー』シリーズで知られる佐野信義さんのことなんですが。それからスーパースイープの細江慎治さん。モンスターハンターの甲田雅人さん。『クロノトリガー』の光田康典さん。それからブレインストームの中村隆之さん。それからいとうけいすけくん。で、私、坂本英城。

みんな集めて一般のユーザーの方からの質問を一ヶ月くらいの間募集して、その質問に対してみんなで議論するという形のものです。

あとはノイジークロークのスタッフだけでバンドを組んでライブをやろう、やろう、という話はあるんですけど、例えば「ドラムやりたい人!」って言ったら5人くらい手を挙げてしまって全然まとまりがなくて出来てないんです(笑)。

ノイジークロークが『龍が如く2』にどのように関わるようになったのか教えて下さい。

坂本: 最初に、別件でWiiの「スーパーモンキーボール」の仕事を先方からいただいて、その時に「僕は『龍が如く』の大ファンで...」みたいな話をしていたら「それでは2でのお手伝いをお願いできますか」と言って下さって、それがいきさつです。

『龍が如く 見参!』に関するどんな音楽を作りたいと思いましたか。

坂本: 最初は色んなアイデアがありました。ヒップホップにしようとかラップを入れようとか。でも僕らが担当させていただいていたのは、動画に付く音楽だったので、やっぱり観る人は映画のような感覚で観るじゃないですか。

なのでここは外さないでストレートで行こう!ってことで、和風オーケストラみたいな感じの曲にだんだん絞られて決まった、という感じですね。最初は本当に試行錯誤してて、加藤君がデジタル系のアプローチでサンプルみたいな物を作ってくれたときもあったんですけど、やっぱり合わない、みたいな感じで。

三味線とか鼓とか。動画の中で後ろで楽器を演奏しているようなシーンがあったところが、映像に演奏を合わせる必要があったので一番大変だったような気がします。太鼓とか、鼓、三味線、尺八みたいに、いわゆる聴いてすぐ日本の楽器と分かるような楽器は積極的に使っていったと思います。

『龍が如く 見参!』のミニゲームはどのようなゲームですか。

加藤浩義: さっき出た滝修行ととっくりボーリング、それからカルタ。いわゆる日本の伝統的な遊びのゲームが3つか4つあります。共通して使われている曲も多いんですけども。

どんな音楽を作りたかったですか。

加藤: ミニゲームでもさっきの滝修行とトラディショナルな遊びとはまったく別で。『龍が如く』自体の音楽にしてもストーリーにしても振り幅が広いんですね。シリアスだったりジョークがあったり。だからミニゲームではちょっとコミカルな部分を出そうかなと思って楽器とかも昔の楽器を使いました。

ゲームは昔から好きですか。

加藤: 小学校の頃、坂本さんと同じでゲームばっかりやっててゲームのサントラとか買ったりして、その後は、高校くらいからはバンドをやってました。バンドとコンピューターミュージックをやっていました。最初はゲーム音楽からはちょっと離れていていわゆる従来のレコード会社の音楽ですとかダンスミュージックを多くやっていました。

ゲームの中の音楽でも歌の入った音楽とかも多くなってきて、いわゆる昔からのゲーム音楽とポピュラー音楽との差があまりなくなってきて、それでその時にノイジークロークに行き会ったという感じです。それで坂本さんにお会いして、彼の人柄に惹かれて今に至るという訳です。

『見参!』のプロジェクトの中で何かおもしろいことはありましたか。

加藤: いわゆる生楽器とエレクトロニック楽器のミックス。正直なところ、僕もあんまり考えてはいないんです。ただし『見参!』にしても日本っぽいフレーズとかそういうのは意識しなくても染み付いているものなので、特に混ぜて...難しいですね。 昔で言えば反対の方向の音楽なのでミスマッチと言われてたんですが、最近の世界的なダンスミュージックでもロックでもなんでも結構日本の楽器が取り入れられていたり日本語のセリフが入っていたりすることが多くて、ミスマッチと思いつつ「俺が良ければいいのかな」という感じであまり考えずに。

いとうさん, 自己紹介をお願いします。

いとう: ノイジークロークで作曲をしているいとうけいすけといいます。今までさせていただいたお仕事では今回の『龍が如く 見参!』『龍が如く3』、その他には『ポケモン不思議なダンジョン』とか『忍道 戒』という忍者ものですとか、色々やらせていただいてます。

サウンドトラックでは、夢路屋とあざみ屋というお店のシーンの曲を作りました。これは何かというと日本の昔の京都という都市の中にある祗園という町の中にあるお店なんですが、簡単に言うと女の子と遊ぶ店です。

そんなお店の音楽を作る、ということなんですが、『龍が如く』はシリーズ内でキャバクラというものが出てきます。まあやってることは一緒なんですが、格調の高いお店という設定なのでエロスなのではなく高級に、上品に女性と遊ぶ為の音楽、みたいなものを求められたのでつややかで高貴なものを日本の伝統音楽に沿って作ってみたという感じです。 また、サウンドトラックには収録されておりませんが、ムービーの劇伴曲はほぼすべてノイジークロークで制作していまして、そのうちの大半は私が制作しています。キャラクタの動きや演出に合わせて曲を変化させていますので、是非ゲームをプレイしながら聞いて頂ければと思います。

伝統的な日本の音楽自体に興味はありますか。

いとう: 興味はあります。 まあ雅楽という日本の固有の楽器を使って音楽プラス舞踏というか舞、まあ言ってみればダンスと音楽が一体した「能」という日本の文化。そういうところに興味があります。

湯川さん, どんなSFXを作りましたか。

湯川: 例えば『龍が如く2』であれば、基本的にビルに囲まれているところで人の会話のシーンがあったりするんですけど、『見参!』の時は周りが森だったりとかそういう環境になりますので、それに合う環境音などの制作を進めて行ったという感じです。

『見参!』の制作についてどう思われますか。

湯川: 『龍の如く2』から制作を担当させていただいているんですが、2のときは現代の時代設定なので車の音ですとか、わかりやすくてイメージしやすい音なんですが、『見参!』の時は時代設定が全然違うので、その辺がある意味SFXは想像で色々と音を考えて環境音などは作っていったという感じです。

制作にあたってリサーチはされましたか。

湯川: 時代劇は色々と観ました。ドラマからたけしの『座頭市』ですとか。それで「ああ、こういう感じの音になるんだ」という情報は集めました。天啓ムービーというのは町を歩いていて鳥が飛んで急降下するシーンとかがあるんですが、そういうところをパッとみた時に何か技を思いつくみたいなそういうシーンがあったりとか、猫がねずみを追いかけて捕まえるシーンですとか。

サブストーリーであれば、僕の大好きなキャラクターなんですけど、それは1からずっとシリーズを通して登場してるキャラクターなんですが、秋本くんというちょっとダメダメなキャラクターがいてですね、『見参!』の中では遊女に騙されているんですけど、彼がお金を巻き上げられてしまうシーンですとか、そういったシーンの感情の部分も効果音で気を使って表現しようと努力しました。

庄司: その季節独特の環境音ってあるじゃないですか。例えば春のシーンで鳴いてちゃいけないはずのカッコー鳥が鳴いてるとか、そういう部分を取り外したりする苦労などもありますか。

湯川: その時代の森に生息していた鳥なんかをネットで調べたりとかしました。そういう所って結構聞き流されちゃう部分かもしれないんですけど、そういうところをちゃんとやってる自分に悦びを感じるというか。


2008–11-11

PlayStation2専用ソフトウェア『龍が如く2』では主人公「桐生一馬」をとりまく極道社会による計画犯罪の闇を描いた世界が繰り広げられる。今回はこの「龍が如く」の世界を演出する音楽を手がけた作曲家の中から株式会社セガの庄司英徳氏、そしてゲーム音楽制作会社ノイジークロークの坂本英城氏にそれぞれの音楽制作の裏側のお話を伺った。庄司氏は言うまでもなく、初代「龍が如く」から作曲を担当し注目を集めた動的でエネルギーにあふれたスタイルの音楽でファンをより一層惹きつける。今作から担当の坂本氏はノイジークロークの代表取締役を務め、そしてあの話題のゲーム「無限回廊」の音楽を手がけた。

欧米では現在、「龍が如く」シリーズ1作目から2作目へ進むという段階ですが、主人公「桐生」の新しいストーリーを欧米のゲームプレイヤーたちに向けて簡単にご紹介ください。

庄司英徳氏: 今作は1作目の「消えた100億」を巡る一連の事件から1年後のお話になります。 桐生は慎ましくも幸せな日々を送っていたんですが、東城会の5代目である寺田の死を切っ掛けに、様々な思惑や陰謀が渦巻く事件に巻き込まれて行きます。東城会の過去など、今まで語られなかった部分も徐々に明らかになっていきます。

前作は神室町の中での事件が主でしたが、今作は「西と東の覇権争い」とストーリーの幅も広がっていて関西という新たな要素が入っていますので、歩けるステージも神室町だけでなく関西の街も歩ける様になります。同じ日本の街でも西と東では見た目もかなり違うので、その辺りも楽しんでもらいたいと思います。

「龍が如く」シリーズが他のゲームタイトルと一味違うのが、リアルさの追求というのがあると思います。例えば、ゲーム中に出てくるレストランなどは実際に現実にあるお店だったりといったような。このような、シリーズを通して「現実性を追求する」というアイディアから、庄司さんが作曲をなさる上で受けた影響や、特に気を配った点などはありましたか。

庄司英徳氏: 「現実性の追求」と一言で言ってしまうと語弊がありますが、シリーズを通して根底に流れているのはエンターテインメントだと思っています。細かい所を言えば嘘だらけの世界です。ですが、その嘘を感じさせない様にする事が「エンターテインメント上のリアル」だと思います。ゲーム中のレストランが現実にあるお店というのも、嘘を感じさせないアプローチの一つに繋がっていると思います。 それらの前提の上で楽曲はどういう役割を担えるか。そう考えると世界感の確立という一言に尽きます。そこで生活している人達が居て、その中でイザコザが起きた様な”ライヴ感”といいますか。そういう”泥臭さ”といった事をコンセプトに作曲や選曲をしましたので生弾きの楽器が多いです。その辺りでエンターテインメントながらリアルに感じる世界感に一役買えていると思います。

坂本さん、インタビューにご協力頂きありがとうございます。早速ですが、今回「龍が如く2」の音楽を担当なさることが決定したいきさつを簡単にお話いただけますか。

坂本英城氏: セガのサウンドマネージャーでおられる冨田晴義さんが私たちの作るサウンドに興味を持って下さり、まず最初に「スーパーモンキーボール ウキウキパーティー大集合」(2006年作・Wii)の作曲を担当させて頂いたんですね。それがきっかけでセガさんとお仕事させて頂くことになりました。元々、私が初代「龍が如く」の大ファンでしたので、その熱い思いを冨田さんに伝えましたところ、「龍が如く2」のご依頼を頂けることになりました。

ゲームのオリジナルの曲をお聴きになり、作曲家の庄司英徳さんの曲からどんな印象をうけましたか?また、続編の音楽を担当される上でどのようにして、坂本さん独自の音楽を取り入れようとお考えでしたか。

坂本英城氏: 庄司さんはギターで作曲をされるのに対しまして私はピアノで作曲をするというところが最も大きく異なるところだと思います。 庄司さんの曲は私にとっては非常に刺激的なものばかりでした。とても独創的かつエッジの利いたパワーとスピードがある曲で、楽曲のエディットの方法や楽器の使い方など、勉強させて頂くことばかりでした。私の音楽はどちらかというと、クラシックがルーツとなっており、和声やメロディを重視する傾向にありますので、そういう意味でも庄司さんの楽曲とうまい棲み分けが出来れば良いなという思いはありましたね。

「龍が如く」と同じように極道社会を取り扱った映画や本などは日本にたくさんあると思いますが、その中でも庄司さんが特筆すべきものはございますか?また「龍が如く」では、どのような形で極道社会の忠実な描写と同時に独自の世界観を表現していると思いますか?作曲の面ではこのような背景からどういう影響を受けましたか。

庄司英徳氏: やはり「仁義なき戦い」がまず挙がりますね。というか日本人としては挙げなくちゃいけない気すらします(笑) ドラマのシリーズが重なる度に当然曲も増えていて、それらの曲のジャンルは様々です。「キル・ビル vol.1」でも使われ たあの有名な曲も仁義シリーズからですしね。 「ステレオタイプでこういう曲じゃなくちゃいけない」ということが無い事を教えられた気がしたので、「龍が如く」シリーズの作曲の発想もあまり縛らず、自由にしました。

また、描写そのものについてはなんとも言えませんが、サウンド担当の立場としては声優さんの演技についてできるだけアニメっぽい演技にならない様にしようと音声収録ディレクターと密に話をした事を覚えています。怒号や人を脅すシーン などでは、アニメ然とした演技だとすごく薄っぺらくなってしまうんです。そういう演技を出来るだけ排除した事で独自の世界観、空気感を生み出す事に成功したんだと思います。

戦闘シーンでは緊迫感を出すのが重要かとは思いますが、そのために庄司さんが用いた楽器やテクニックは何でしょうか?また使われている楽器という観点から個々の戦闘シーンの音楽に違いをつけるやり方はどうプランされましたか。

庄司英徳氏: 「龍が如く」シリーズの戦闘であるという事もそうですし、僕自身がギタリストという事もあったのでディストーションギターを基本にしてアッパーな曲を入れる様にしています。ただ、今作はガラの悪さアップのアプローチとして、自分の曲では同じディストーションギターでも意識してカッティングを多用しエッジを立てました。また、ギターを含めてサイレンの様な音、弾き方の音を入れる様にしています。これはサイレンの音を聞くと不安、恐怖、緊張など負の連想をしやすいという心理効果を狙ったものです。他は、セオリー通りですがわざとスケールを外したりしましたね。

個々の戦闘シーンの音楽の違いのプランとしては、端的に言ってしまえばジャンルを変えてしまう事ですかね(笑)必然的に使う楽器も変わりますから。今作のエンカウントバトルを聴いてもらえればわかる通り、同じエンカウントバトルでも西と東でジャンルそのものが違います。最初のリストの段階からイメージで「関西のエンカウントバトルはJazzyに!」「ラストバトルはこう!」というように各シーンのジャンルを決めてしまっていたので「違いを出す為の楽器選び」という意識はないですね。

以前に「無限回廊」の音楽について坂本さんのお話を伺いましたが、「無限回廊」では弦楽四重奏の美しい音色が特徴として挙げられました。それと対照的に今回は、エレキギターを始め電子音楽と生楽器の融合が見受けられます。 「無限回廊」とはまた違った編成に特別にチャレンジを感じたことなどはありましたか。

坂本英城氏: 「無限回廊」の場合は、圧倒的に制限が多く、大いに作曲力を試された非常にハードルの高いプロジェクトだったと思いますがある程度完成形を想定しながら作曲を進めることが出来ました。

本作は逆に、格好いいリフ、音色のチョイスやエフェクトの使い方などが重視され、「無限回廊」の時とは手法も工程も大きく異なりましたし、制作中、自分でも最終的にどのような楽曲になるのかわからないという楽しみ と自分自身へのチャレンジという気持ちは強く持っていましたね。電子楽器にしろ生楽器にしろ、それにしかできない表現があるのでそれらの融合が面白い効果を生み出すことを期待しつつ制作致しました。

曲目Evil Itself, North Menace, Beast Itself で使われています、「歪んだボーカル」は大変特徴的だと思います。 このアイディアを使おうと思ったいきさつはなんでしょうか?また、レコーディングからエフェクトをかけるまでのテクニック面でのお話をお聞かせください。

坂本英城氏: 元々私はクラシカルな音楽以外にもデジロックやビッグビートなどの音楽も大好きで良く聴いていましたが、ボーカルに関してはあまり破滅的なエフェクトを掛けているアーティストが居ないと感じていたんです。私なりの今作のバトル曲に関しての楽曲コンセプトはとにかく「ぶっ壊す」ということだったんですね。中途半端は嫌だ、と。ボーカルもひとつの楽器と見なして、何を言っているかわからないくらいのエフェクトを掛けてみたところ意外に格好よかったんですね。

加工の工程としては、あり得ないくらい強めにコンプレッションを掛けたあとギター用のエフェクターを引っ張り出して来まして、フランジャーやらコーラスやらを通して最後にメタル系のディストーションで破壊する(笑)、みたいな感じです。特に方法論は無くて、かなり感覚的に作っていました。

「龍が如く2」のシナリオは馳星周さんが監修されましたが、庄司さんが初めてストーリーをお読みになったときの印象はどういうものでしたか?全体を通してストーリーに合った曲作りをするために意識されたことはなんでしょうか。

庄司英徳氏: やっぱ極道は怖いなと(笑)桐生が初めて龍司に出会うシーンなんて見てると、こんな怖い世界にはいられないなーと再確認できます。あと、お話の規模が大きくなったこともあってエンターテインメント性が強くなった印象を持ちました。

そういったシナリオはこのゲームの基礎なので、穴が空くほどよく読む事が必要になるんですが、ストーリーに合った劇伴曲作りをする為には『制作者とプレイヤーの両方の視点で読む』ことが重要だと考えています。 なぜかというと、劇伴曲はプレイヤーの心情起伏の助長が最大のポイントですから、プレイヤー視点で読まないとそのポイントを外してしまいますし、製作側としてここで何を伝えたいのかというシーンの意図を汲み取らないとシーンの大事な部分が伝わらなくなってしまうんです。だから二つの視点でシナリオを読んで、ブレない芯を自分達で持つ事が重要になるんです。

今作の劇伴曲達は、僕が付けたシーンは5シーンくらいでそれ以外のほとんどは外注さんにお願いしましたが、どれもストーリーやシーンにマッチした劇伴曲だと思っています。内作外作を問わず的確な劇伴曲が出来たのは、サウンド部隊がその芯を持てていたからという他にありません。

アルバム「龍が如く 龍が如く2 ORIGINAL SOUNDTRACK」ではこの2作分の曲がひとつのセットになっています。さらに今回は庄司さんと大勢の音楽家とのコラボで完成したサントラですが、制作の経緯で特に印象に残ったことなどはございましたか。

庄司英徳氏: 1作目、2作目と2タイトル分ですから、確かに社内外を問わず様々な音楽家が携わりました。内部では部署の垣根を超えて伊藤さん、花田さん、小河さん、セガ以外の方では既にお馴染みとなっている坂本さん、そして日比野さん、ボーカルではMAKOTCHさん、YURIさん、TOMICAさん、陽季さん、河井さん。ほとんど挙げちゃいましたが(笑)こんなに沢山の方と仕事ができたという事の一つの集大成という意味で、サントラを出せた事を本当に嬉しく思います。

また、サントラを製作するにあたってチームのデザイナーと話していた時に印象に残った一言がありました。 「ゲームのサントラって、大体の曲がフェードアウトしますよね」という一言でした。話を聴いてみると、そのデザイナーが言うには、サントラというよりただのデータ集みたいで寂しいという意見でした。言われてみれば確かにその通りだな!と思いました。なので、以降のサントラでは自分の曲は出来る限り起承転結の”結”を付けようと決めて「龍が如く 龍が如く2 ORIGINAL SOUNDTRACK」でも事情があるもの以外はフェードアウトで終わるパターンを無くしました。ゲームに組込まれている部分はそのままにして結びの部分を付けるという作業はなかなか根気がいる作業でしたが、それで聴いたユーザーが少しでも愛着を持ってくれたらもうそれだけで十分満足です。

そして何よりも、サントラを出してくれというユーザーからの嘆願メールが非常に多かった事が一番強烈に印象に残っています。本当に嬉しかったです。それらのユーザーの声が無かったらサントラはきっと出なかったでしょうね。それを考えると、自分が過去に携わったサントラの中で一番大きく、そして重いサウンドトラックになりました。

スタジオ、ノイジークローク全体としての取り組みでは今回の「龍が如く2」の音楽製作ではどういったお仕事がありましたか。

坂本英城氏: 主要部分のサウンドは庄司さんの方で制作されておりますので、ノイジークロークでは、いわゆるゲーム全体を背後からフォローするような形で楽曲アサインをすべき箇所などのアイデア出しをセガさんと行いながら必要と思われる箇所のサウンド制作を進めて行きました。

たとえば、イレギュラーなバトル曲、メインストーリー以外の動画劇伴曲、キャバクラやホストクラブの店内BGM、キャバクラ経営の曲、動画への効果音制作とアサイン、ボイス編集などを担当致しました。全般的にほぼ私が制作致しましたが、一部BGMや効果音の制作、ボイス編集などはノイジークロークのスタッフで制作しております。うちのスタッフも皆「龍が如く」の大ファンだったこともありまして、最後まで無我夢中で制作を進めていきました。

「龍が如く2」ではドラマさながらのムービーによりユーザーをより作品の世界に引き込むことに成功したと思います。 このムービー部分の音楽はどのように作られたのでしょうか?また効果音についてもその制作手法についてお聞かせ頂けますか。

坂本英城氏: ムービーの音楽は、他のバトル曲などとは制作方法がまったく異なります。私の場合は、シーケンサーに動画を同期させまして、その動画を見ながら、テンポなどは意識せずピアノを弾いて録音します。その骨組みに楽器を足したりミックスを調整したりして曲として完成させます。

このように作ることで、ムービーの中のキャラクターの心の動きや、身体の動きに合わせて楽曲に変化をもたらすことができます。シーケンシャルな楽曲が合うシーンでは、逆にまずリズムトラックを配置し、動画の展開に合わせてテンポを調節して、楽曲の根幹を作り、その上にベースとギター、シンセなどを充てていくという作り方をしました。

効果音も非常に重要なファクターです。動画上のキーとなる表現を楽曲で演出するか効果音で演出するかは、それぞれの担当者の間で意思の疎通が図られます。リアルな情景描写音については、映像に見えている部分の音だけ付けてもダメでたとえば本作の冒頭部分に、ビル火災のシーンがあるのですが、映像では表現されていない要素、たとえば遠くから来る何台もの緊急車両の音などを足すことで臨場感を増しているわけですね。 このように効果音制作には豊富な想像力も必要になってくるわけです。

シンガーソングライターでいらっしゃった(故)河井英里さんが、お亡くなりになったというお知らせは北米でも大変遺憾なニュースとして取り上げられておりましたが、「龍が如く」シリーズで河井さんと一緒にお仕事をするというのはいかがでしたか?またシリーズを通して彼女の存在というのは大変重要だったと思うのですが、一緒にお仕事をされた庄司様の思いをお聞かせください。

庄司英徳氏: 最初に一報をもらった時は動揺を隠せませんでした。本当に残念極まりないです。ボーカリストとしてもそうですが1人の作曲家としても彼女を尊敬していたので、仕事をご一緒できた事は本当に光栄で、誇りに思っています。また、「龍が如く」シリーズでは設定がクリスマス前という事もあったので『本編が暴力的であるならばエンディングは反対に天使的・聖歌的にしたい』という製作意図がありました。そのため選曲にも気を配り、ゲーム中で起きた様々な事件を浄化する様なユーザーにとって存在の大きな1曲になればいいなという願いもあり、それを具現化するのには万人の心を打つ透明度の高い河井さんの歌声はまさに必須でした。柔らかい人当たりの彼女との仕事はすごくスムーズで、歌の収録では助けて頂く場面も多かったので、今後も是非とも一緒に仕事をしたいと思っていましたが、今となっては叶わぬ夢となってしまいました。

「龍が如く2」のスタッフロール曲が河井さんとの最後の仕事になってしまった事は本当に無念でなりませんが、河井さんは今後もずっと僕の目標です。


2008–05-10

『オメガファイブ』はXbox LIVE アーケードサービスで楽しめる横スクロール型シューティングゲームである。その特筆すべきおもしろさは、なんと言ってもゲーム中にあの懐かしい16ビット 機のグラフィックやサウンドを模倣した「レトロモード」を搭載していることである。 先月日本ではこのタイトルのサウンドトラックがリリースされたが、このタイトルは斬新なレトロ回帰によって近年の横スクロール型ゲームのサントラには無い新しいスタイルを作り上げたと言えよう。

作曲家の岩月博之はこのアルバムを大きく三つの明確なカテゴリーに分けている。「ノーマルモード」「レトロモード」「アレンジバージョン」である。近年 のゲーム音楽の変遷を象徴するかのように、このアルバムはゲーム音楽界におけるサントラの常識を「過去に戻る」という形で覆したと言える。

タイトル「Omega Five」の制作にあたり、岩月さんはプロジェクトチームとどのように関わりがありましたか?開発の過程で音楽制作に直に影響を与えたチームの方針などはありましたか?また逆に音楽がグラフィック制作や実際のシナリオ開発に影響を与えたということはありましたか。

岩月博之さん: 当初から、企画側から特に指示はなく、私が作った曲をそのまま受け入れる、ということでした。その後は他のスタッフにゲームやステージの内容を確認したり、開発中のゲーム画面を見ながら、制作方針や個々の曲の内容を決めていきました。 BGMが他のスタッフへ与えた影響についてはよく分かりません。ただ、レトロモード用BGMを初めて聴かせた時、メインプログラマがそれを気に入って、さらにレトロモードをより良いものにするため画面処理などを改良してくれました。これは嬉しかったです。

『オメガファイブ』は、オリジナル・サウンドトラック、リミックス、レトロなどの様々なテーマ音楽がぎっしりと詰まった驚愕のアルバムです。熱心なゲーマーはこれらの音楽に親しいですが、ゲームにレトロモードを使われたのは何故でしょうか。

元々はメインプログラマによるシェーダー(画面描画の為のプログラム)の試作から始まった、お遊び的なものでした。ですので、当初は画面処理(低解像度化+減色)のみでした。 その後完成が近付いた頃、私が当初予定していなかった専用BGMを付けました。レトロな画像処理とシンプルな音の組み合わせは他のスタッフにも気に入ってくれました。ここまで作ったのであれば、ちゃんとしたものに仕上げようということになり、独立した「レトロモード」として仕上げられました。 レトロモードは、昔からのプレイヤーの方々には懐かしく、若い方々にはかえって新鮮な表現として楽しんでいただけるだろうと思っています。


2008–02–14

東京出身の中村隆之氏は自らが認める音楽&ハイテク好きである。中学生時代にすでに学校の校内放送を通しラジオ機器に触れ、バンドを組み、自ら作った音楽を放送していた。エレクトロニック音響デザインに対し大変強い興味を持ち。毎日のように演奏し、大学に通う傍らバイトをしながら自分のオーディオ機器を購入していった。大学を卒業し、職探しの最中にビデオゲーム音楽の仕事を発見。それまでの経験を生かしデモテープを作成。即採用が決定し、ビデオゲーム、携帯電話、パチンコマシーン用の音作りの仕事に就く。

気がつくと、『エレクトロニック音楽の作曲家になる』という長年の目標がいつの間にか達成されていたというわけである。


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2008–02–06

ジョーダウンスタジオは北海道に拠点を置く音楽制作会社である。最近ではスクエアエニックスによる任天堂 Wii 用のRPGゲーム『チョコボの不思議なダンジョンー時忘れの迷宮』のオリジナルサウンドトラックの編曲を手がけている。プレーヤーがチョコボとなり、記憶を奪われた人々が住む街を中心に様々な謎を解いていくゲームである。ゲームの中で使われている音楽は、古いものでは任天堂エンターテイメントシステム時代の『ファイナルファンタジー』にまでさかのぼったものがアレンジされている。NINTENDO DS用のゲーム、『チョコボと魔法の絵本』でジョーダウンスタジオによる編曲を聴いたのを覚えている人もいるだろう。今回の作品では、Wiiが持つ新しいオーディオ機能と。ジョーダウンスタジオが持つ様々なオーディオ機器がフルに生かされている。『ファイナルファンタジー』の伝統的な音楽を、新しい世代のゲーム機で、従来とは一味変わった形で楽しむということをジョーダウンスタジオが可能にしてくれた。

ジョーダウンスタジオー (北海道 札幌市)


2013–04–09

『ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII』が2013年秋頃、スクウェア・エニックスからXbox 360、プレイステーション3向けにリリースされる。『ファイナルファンタジーXIII-2』のサウンドを手掛けた3人のミュージシャン達のオリジナル楽曲がフィーチャーされており、今回はその三部作の最終章に先駆け、浜渦正志氏、水田直志氏、鈴木光人氏の3名から「ライトニングサーガ」の為の曲作り等についてお話を伺った。

浜渦さんの『ファイナルファンタジーXIII-2』(以下『FFXIII-2』)の音楽はライトニングの物語の方向性をきめましたが、音楽を書かれるときにそれぞれのキャラクターにあわせるために行っている特殊なアプローチ等はありますか。

浜渦正志氏: キャラクターの絵や性質といった設定だけを参考にして曲を書くと、キャラのイメージのみが表現されてしまいます。キャラは環境やシナリオ、他の登場人物との関わり合いによってその立ち位置も変わって来るので、それら全てをひっくるめて表現しないと、作っている側も聴いている側も思い入れは薄くなるでしょう。

例えば「ファイナルファンタジーXIII」(以下『FFXIII』)の「ヴァニラのテーマ」の中には「FINAL FANTASY XIII プレリュード」のモチーフも含まれています。これはヴァニラが『FFXIII』の物語を時折ナレーションするような立場であったこと、そして彼女の登場する最も印象的なシーンが『FFXIII』の物語の大きなポイントになる箇所でもあったため、「FFXIII プレリュード」が頭の中で彼女のテーマと絡みあったのです。これは設定だけを見ていては思いつかなかったでしょう。

『ファイナルファンタジーXIII-2』のボーカルの一人である、MinaさんとImeruatのコンサートを行われており、『ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII』(以下『ライトニング リターンズ』)のデビュートレーラーでも聞ける「閃光Crimson Blitz — LIGHTNING RETURNS : FINAL FANTASY XIII -」等がアルバムからのオリジナル曲と共にそのコンサートの中でも選曲されていますが、Imeruatの活動、コンサートやアルバム制作等によって、ご自身がミュージシャンとして今まで通らなかった道を開拓できていると思われますか。

浜渦氏: 依頼を受けて作曲するのと、自分でコンセプトを一から作るのは大きな違いがありますので、今までの道とはかなり違いますね。開拓というより、長年頭の中にあったものを具現化していっているという感じです。

最近では日本以外での活動、フランスやポーランド、またスイスでの作曲活動等が多いですが、そういう海外での活動はクリエイティブ な部分でどのような影響を及ぼしていると思われますか。またその経験が『ライトニング リターンズ』の作曲スタイルに影響していると思われますか。

浜渦氏: これは正直わかりません。作曲はそのときそのとき、ふとした思いつきや出会い、発見によって生まれるものも大きく変わってくるので、海外での活動がいつどのようにどれだけ『ライトニングリターンズ』に影響していたのかは不明です。ただトレーラー曲はスイスで書いたので、何らかの細かな影響はどこかにあるかもしれません。

水田さん、『FFXIII-2』の音楽を書かれた時にこの音楽スタイルにしようと思われた理由はなんだったのでしょうか。

水田直志氏 : 『FFXIII-2』の場合はディレクターの鳥山さんから、今までの『ファイナルファンタジー』シリーズの音楽が持っているイメージを一度壊して新しいものにしてもらいたいというオーダーがありました。植松さんが作られてきた『ファイナルファンタジー』の音楽と言ったらこういうものだというイメージを皆さん持っていると思うんですが、それにとらわれずに、聞いたときにあまり『ファイナルファンタジー』だと意識しなくても良いような新鮮なものを聞かせてほしいと言われたので、それまでのこうだったというものに倣って作ったものではなくて、今までになかったものを作ったのが『FFXIII-2』の音楽ですね。

ということは『ファイナルファンタジーレジェンズ』の楽曲での意図とも別のものということですか。

水田氏 : 『ファイナルファンタジーレジェンズ』の場合は『FFXIII-2』とは全く別で、今までの『ファイナルファンタジー』っぽい典型的な昔風の『ファイナルファンタジー』の音楽が求められていたので全く逆の感じですね。

『ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII』の発表が、水田さんのバンド「ナナーミーゴス」(『ファイナルファンタジーXI』の曲を新しいアレンジを加えて演奏するバンド)の「FF25周年記念イベント」オープニングセレモニーと重なりましたが、それぞれの『ファイナルファンタジー』シリーズのゲームにユニークなサウンドを提供している楽器の選択を毎回どのように考えて行っているのか大変興味があります。

水田氏 : 『FFXI』を長くやってきて割とアコースティックなものが多かったのですが、『FFXIII-2』に関してはシンセサイザーをいっぱい使ったりロックをやったり、歌のある曲が多かったり、テクノっぽいのもあったり…と、いろいろと今までやっていなかったものが出来ました。元々そういう音楽のが嫌いではなかったのですが、『FFXI』の時はそういうものを作る必要がなかったので作りませんでした。しかし、『FFXIII-2』ではいろんな楽曲を新しく作れたので新鮮で楽しかったです。

昔の楽曲と『FFXIII-2』で違う事と言いますと、やはりボーカルがゲームプレイ中にも流れる事だと思いますが、それについて気にされていた事等ございますか。

水田氏 : 今回わりとボーカル曲が多かったんですが、誰に歌ってもらうかは途中まで全然決まっていなくて、デモの段階では社内の人の仮歌だったりシンセのメロディーが入っていて誰にするかずっと探していました。Joelleさんに関しては、ボーカリストさんを紹介をしてくれる会社があり、そのサンプルを全部聞いてこの人だったら合いそうというのを鳥山さん達にも聞いてもらい選びました。KOKIAさんの場合も曲が先にあって、この曲に合う歌の方、という形で漠然と探していたのですが、たまたまネットでKOKIAさんの曲を聞いて「この人の歌はこの曲にとても合う」と思ったので、全然面識はなかったのですが、「こういった曲をお願いできませんか?」とお話を持っていったところ是非と言っていただきました。

ゲームプレイ中にボーカルがこの『FFXIII-2』ほどかかるゲームはあまりないと思います。そういう意味では今までの『ファイナルファンタジー』ではなかった、そういうところで新しい感じを出したかったというのが目的ですね。あまりプレイの邪魔にならないようなミックスにするのは大事かなと思いました。やはりずっと聞いている訳ですし、ダイアログも入ってくるので歌声がそれとバッティングしないようにするというのは必要だと思うんですが、今回の場合は音楽として楽しいものを作って楽しい気分になってもらうというのが目的だったのであまり難しくは考えてはいなかったですね。一般的にはそういう工夫が必要だとは思いますが。

歌ものについてですが、「不可視の侵略者」が英語用に変更されました。日本国外でのリリースにおいて何か問題があったのでしょうか。

水田氏 : テストプレイとしてまずは北米のテストプレーヤーに持っていったところ、ちょっとストレンジだと言う感想もあり、予想もしていたのですが、米国のローカライズの方にも聞いてもらったところ、そういう風に聞こえる人もいるでしょうということだったのでかなり相談しました。そういう意見を全部取り入れてしまうと逆につまらないものになってしまう可能性があるので、どうしても押し通してこれがかっこいいんだといって出す事も出来たのですが、あまり意見を聞かないのもテストプレーイをする意味が無いというのもありかなり悩みました。最終的にはディレクターとも相談してやめておきましょうということになりました。

問題になっていたのはラップの部分なんですが、そこのラップのトラックを消して代わりにシンセサイザーでメロディーを弾きました。ジェリアスカさんはこの日本バージョンの曲を聞かれましたか。どう思われましたか。

特におかしいとは思いませんでした。僕もMusica Ludiのジャーナリストも問題無いと思いました。音楽による地域的な相違はいろんな種類の音楽がどれだけ『FFXIII-2』の中で 重要な位置を占めているかという事を再発見させてくれました。特に物語中のタイムトラベルの部分等。ゲーム中でどのように”ノーマルミックス”と”アグ レッシブミックス”の使い分けをされたのですか。

水田氏 : アグレッシブミックスを作る前にノーマルミックスがあって、それと平行してシーケンサー上にトラックを並べて、これといつ切り替えてもおかしくないように同じタイムライン上に並べてました。ドラムのトラックを増やしたり、ミックスを変えたりして、エンカウントした時にハラハラドキドキするようなミックスを同じ時間軸上に並べて作るという感じですね。わりとSF的なイメージもあったので、あまりファンタジーというだけのものではなく、いろんなジャンルの音楽を入れても大体飲み込んでもらえるというか、あまりおかしくなく聞こえるというところで、面白く出来たと思います。

アグレッシブミックスに切り替わってその後エンカウントしたときにバトル専用の曲になるのですが、最初はそうではなくアグレッシブミックスのままバトルに入る予定だったのですが、メリハリがつかなかったので、後からバトル曲を入れるというのが決まりました。アルカキルティの所もバトル曲にあのままアグレッシブミックスが入る予定だったものが同じ理由でバトル専用曲になったんですが、またさらに入れ替える事になったというちょっと複雑な経緯があったので、ちょっと特別な感じになっています。

鈴木さん、浜渦さん達とのコラボは面白かったですか。

水田氏: 面白かったですね。そんなに沢山の曲でコラボレーションしている訳ではなくて、出来上がった曲のデータを鈴木さんにお渡しして、鈴木さんから別のバージョンになって戻ってくるというものなんです。もっと沢山できても良かったなと思うんですが、実際そういうことが出来たのが1曲か2曲しかありませんでした。楽しかったのですが、もっと沢山やりたかったですね。

鈴木さん、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』のアニメシリーズでフィーチャーされているOrigaさんとお仕事されたいと思われた理由はなんだったのでしょうか。

鈴木光人氏: 声ですね。あと基本的なメロディーの消化というか、Origaさんのメロディーの解釈が面白くて、こっちが指定しているものと良い意味で違うものになるんですね。きっとこういう感じになるんだろうな、という想像していたものよりさらに上をいった感じになります。基本的なメロディーラインと同時にコーラスパートもOrigaさんが作ってくれるのですが、その音の重ね方が僕たちが作る感じと違っていて、そこは僕も単純にファンとして楽しみでした。(笑)

親しんだメロディーに驚くべき方向性を持たせた「クレイジーチョコボ」に多くの人が反応していますが、 Shawn McPhersonさんがこの曲に携わるきかっけはなんだったのでしょうか。

鈴木氏: 開発中に鳥山さんから、「ノーマルでない、クレイジーチョコボがでてきて、それにはなかなか乗れない」という話があり、クレイジーチョコボの為になるべくハードなチョコボの曲が欲しいという依頼が来ました。何かイメージはありますかと聞いたところ、「デスメタルぐらい行ってくれるとうれしい」ということで、ちょうどその時自分の曲 用にショーンにボーカルをお願いしてたんですが、彼はボーカリストとしてだけではなく、ギターも弾き、自分の曲も作るんですね。

彼の作るトラックはすごくクオリティが高く僕は大好きだったので、彼にチョコボの曲のアレンジをお願いしたら面白いのではないかと思い彼に話をしたら、ぜひやらせてくれという事で。最初にデスっぽい感じやこんな雰囲気でという説明だけしたのですが、彼から送られてきたトラックを聞いたらすごくかっこ良かったんですよ。完全にショーンの色のチョコボになっていてかっこ良いんだけど、ぱっと聞いた感じチョコボということがわからないんですね。あのメロディーラインがあまり入っていなくて、これはかっこいいけどこのままでは分からないので、それを聞きながらチョコボのメロディーを僕が1分ぐらい弾いたんです。

それをショーンに送って、例えばこの代表的なチョコボのメロディーをギターか何かで弾いてこんな雰囲気で入れてみてくれないかと言ったら、次の日彼はそのまま僕が弾いたメロディーをギターでコピーして送り返してくれたんですね。(笑) 別にそのままコピーしてくれなくても良いんだけど、と彼に言ったら、「このタイミングがクレイジーで良い」と。それなら良いかという話で皆に聞かせたら鳥山さん始めチーム皆が喜んでいましたね、「こんなチョコボは聞いた事がない」といって。(笑)

ほとんどのゲームプレイ中でボーカル曲が流れていますが、歌詞が台詞を邪魔してプレイヤーの気を散らしてしまうかもしれないというような事は考慮されましたか。

鈴木氏: ゲーム的に考えたら、イベントシーンなどで歌ものがかかるのは全然良いと思うんですが、歌は言葉があるので言葉選びが大事になるんです。そこは今回すごく注意 していた部分なんですが、ゲームの世界とまるで関係ない歌を歌っているのはまず無し。かと言って、ストーリーを説明していてもしょうがないし、ネタバレ的なことを言ってもだめだし…、というのでそこの部分は慎重にやったところです。

普通のポップミュージックと違ってゲーム音楽だから当然効果音がバンバン鳴っていたり、台詞がバンバン入ってきたりするので、あんまり歌は聞こえるべきではないと僕は考えていました。ようはケースバイケースなんですが、バーンとでるところと、バーンとひくところのバランスをすごく大事にしたいと思っています。結果的に歌ものが増えたんですが、曲の構成的に最初のバースの部分やコーラス、ブリッジにはボーカルがあるんだけれども、2番目のバースにはボーカルを入れないような作り方をしていますね。部分部分で歌を抜くような。

浜渦さんがアルバムを出版され、リリースコンサート等でライブ演奏をご一緒にされていましたが、このコラボレーションは『FFXIII』の開発中にもすでに始まっていたものなのですか。

鈴木氏: 浜渦さんが退社されてからImeruatをやられているというのは勿論知っていました。確か『FFXIII』の打ち上げパーティーで浜渦さんと会った時に、「機会があったら何か一緒にやろう」というお誘いをもらっていて、「勿論ゲーム音楽の仕事で も良いし、それ以外でも浜渦さんが何かやる時あったら手伝いますので僕で出来る事があったら言ってくださいね」という話は前からしていたんですね。

それで去年頃、「前に話していたことなんだけど具体的に相談したい事があるから」という連絡をもらって、確か年が明けてから会った時に話を聞いたら、こういうイベントがあって同時にアルバムもを作っているからそれの制作を一緒にやってくれないかというお話でした。勿論できることはやりますよ、とすぐに返事をしてやることになったのが経緯ですね。前々からやりましょうと言っていたことが形になった感じです。

English translation by Yoshi Miyamoto, and French translation by Jérémie Kermarrec.

Ongaku

ゲームミュージックニュース

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