シリコンバレーで方向を見失わないためにすべきこと

世界中からシリコンバレーに来ている大企業の大半はイノベーションの種を探しに来ている。日本企業でもこれは同じだが、おかしがちな間違いの一つが短期のゴールと中長期のゴールを同様に扱ってしまうことだ。

まず短期のゴールについて考えてみよう。

今あるビジネスが伸び悩んでいる、あるいは下降気味になっているといった状況ではこれを打開するためにスタートアップの新しいアイデアを取り込むことでビジネスを活性化しようというのはまっとうなゴールだ。スタートアップのサービスやプロダクトをうまく自社の既存のビジネスに取り込むことができれば、このゴールを達成することは可能である。

このために必要な人材というのは既存のビジネスをよく理解しているベテラン、また本社側でいわゆる顔が利く人材、特に事業部のビジネス責任者を説得して新しいアイデアを取り込むためにスピード感を持ってスタートアップと協業を進められるよう関係者のコンセンサスを得ることに長けている人だ。ここではこの事業部側の協力を得るという点が成功のカギとなる。

一方で中長期のゴールについてはどうか。

本当の意味でのイノベーションというのは既存のビジネスの延長上にない場合が多い。むしろ既存のビジネスを根幹から脅かすようなアイデアがどんどん生まれてくるのがシリコンバレーなので、こういった新しいアイデアを取り込むこと、あるいはアンテナを張っておくことも重要な課題だ。むしろこちらの方がシリコンバレーで活動する意味があることとも言える。短期のシナジーを求めるだけであれば日本国内でやった方が簡単なこともあるからだ。

まずこうした新しいアイデアは事業部からの理解は得られないので、事業部を巻き込んでPOC(Proof of Concept)をやったりということよりも、むしろ事業部からは目につかないところでこっそり進められる方がやりやすい。かつてアップルがマッキントッシュを開発していた時にSteve Jobsはチームを完全に隔離した状態で始めたが、これは同じところでやっていたら潰されてしまうというのがわかっていたからだ。その意味で担当者は既存の事業に精通している人物よりも、むしろコアの事業部とは離れたところにいた人の方が向いているかもしれない。

ここで難しいのがシリコンバレーに派遣されている担当者が一人の場合だ。短期のゴールを達成するために動くのは事業部の理解を得られやすいのでやりやすいが、一方で同じ担当者が中長期の既存ビジネスを脅かしかねないアイデア開拓に動くとコンフリクトが発生するおそれがある。またこれはすぐには結果が出ないので、本社側から何をやってるのかわからない、何のためにシリコンバレーにいるのだという余計なことを言われる事態を招き、本来の新規アイデア開拓という目的を達成する前に社内調整に奔走するという本末転倒なことになる。

これを避けるためにはどうすればいいのか?

理想的なのはリソースを投入してチームを分けることである。短期的なシナジーを追求するチーム、中長期を見据えて新しいアイデアを開拓するチームを編成する。それぞれのチームが明確にゴールを持つことで、コンフリクトが発生しない活動が可能になる。中長期を見据えたCVC投資をやっている会社で、本体とは独立したチームを編成してやるところが多いのはこのためだ。

ただそこまでリソースがない場合はどうするか?

一つは担当者がまずは短期的なゴール達成に集中すること。ここで実績を上げてある程度本社からも理解を得られるような土壌を作ることができれば、さらにリソースを増やして新しく中長期を見据えたチームを作ることもできるようになるかもしれない。

あるいは一人で中長期を見据えた取り組みだけをするというのももちろんありえる。ただし短期的なシナジーは考えずにとりあえず新しいアイデアの開拓に集中するというのであれば、トップマネジメントレベルでこの取り組みが時間のかかることであるということを理解した上で、強力なサポートがあることが前提条件だ。

いずれにしても重要なのはこの二つの異なるゴールを混同しないこと。ここを明確にしておかないと、どちらかの動きで何かうまくいかないことがあった瞬間にもう一方の動きまで影響を受けるということになってしまう。あるいはどちらに軸足を置くのかという不毛な議論が社内で起こってしまい、担当者が振り回されてしまうということにもなりかねない。

短期、中長期、それぞれのゴールを明確にし、それに沿った体制作りをすることが肝要だ。

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