驚くほど野心的なスタートアップのアイデア Part.1 :ポール・グレアム


文章が長いため、Part1とPart2に分けています。


ポール・グレアム 出展: Flickrより

Y コンビネーターで働いて驚いたことの一つは、スタートアップの野心です。この投稿では、例を使って、どのようなことを意味しているのかお話したいと思います。どのスタートアップにも、大成功する可能性があります。それだけでは魅力的に聞こえると思いますが、実際に聞けば、ビビってしまうでしょう。

安心してください。ビビったからといって、あなたが弱腰であるわけではありません。正気であるしるしです。最も大きなスタートアップのアイデアというのは、恐ろしいものです。単純に大変そうだからではありません。最も大きなアイデアというのは、あなたのアイデンティを脅かしかねないからです:それを助けるだけの野心が自分にもあるのか心配になってきます。

マルコビッチの穴という映画の1シーンで、主人公はとても魅力的な女性に出会います。彼女は、「私を手にしたところで、あなたは私をどうしたいのかわからなくなってしまうでしょう。」を言います。まさにそのような感じです。

この現象は、スタートアップについて知っておくべき重要なことです。[1] 大きなスタートアップのアイデアというものは魅力的であるだろうと思っていても、現実的には引いてしまうようなことばかりです。そしてそれは問題です。それはつまり、これらのアイデアは、ほとんどのスタートアップの人が無意識的に避けているということです。最も野心的な人ですら、慎重にアプローチをするべきでしょう。

1. 新しい検索エンジン

最も革新的なアイデアというのは、不可能と紙一重です。これが不可能でないと断言はできませんし、もしかしたら可能なのかもしれません。新しい検索エンジンをつくるということは、Googleと直接競争するということです。そして最近、Googleにヒビが入っているようです。

Microsoftが道を失っているとはっきり分かったのは、彼らが検索ビジネスに手を出し始めた頃です。それはMicrosoftにとっては自然な動きではありませんでした。彼らが手を出したのは、Googleを脅威に感じて、Googleが検索ビジネスにいたからです。しかし、これはつまり 1. GoogleにMicrosoft の目標がつくられていて、 2. Microsoftのその目標には、苦手なことばかりが含まれていたということです。

Microsoft : Google :: Google : Facebook

これだけで、検索エンジンにスキがないということは証明されていませんが、最近Google検索を使っていると、昔のことが懐かしくなります。Googleがもっと素直であったときのことです。昔のGoogleは、正しい検索結果を素早く、無駄なく表示してくれました。しかし今では、サイエントロジーの「正しいとは、あなたにとって正しいことである」の信念に感化されているかのような検索結果を表示します。表示も、以前のようなすっきりした印象はありません。昔のGoogle検索結果は、Unixツールの出力したような見た目でした。今では、間違えて変な場所にカーソルを移動させたら、何が起こるかしれません。

ここで勝つには、ハッカーの使う検索エンジンを作り上げることです。トップ10,000人のハッカーのためだけの検索エンジンは、小さくともとても強い位置づけになるでしょう。最初のGoogleのような状況です。そうすれば10年ぶりに、私も検索エンジンを変えようか悩むでしょう。

この10,000人のハッカーの中の誰でもその企業をつくれるため、なにをすべきかは明確です。自分の欲しい検索エンジンをつくることです。ハッカー好みな仕様になっても大丈夫です。コードの検索に特化させるのも良いでしょう。チューリング完全にしても良いでしょう。その10,000人のユーザーを獲得させるものならば、なんだって良いことです。

長期的に問題になるかもしれないことなんて気にしないでください。最初の中枢ユーザーを獲得しなければ、そもそも長期的に存在しないのですから。もし、純粋にGoogleよりも好きになれるものがつくれたら、Facebookがハーバードの学部生を取り組んだ時と同じように(彼らは気づいていなかったでしょうか)、IPOまで10%進んだということです。

2. メールの代替

メールは、今の私たちのような使われ方のために開発されたものではありません。メールはメッセージ用のツールではありません。タスク表です。少なくとも、私の受信箱はタスク表のようになっていて、メールを使ってこなしています。しかし、とんでもなく使い勝手の悪いタスク表です。

この問題には様々な解決方法があると思いますが、軽く受信箱をいじっただけでは解決しないでしょう。メールは全く別の新しいツールに置き換えられなければなりません。確かに単純に書いた文章を読んで欲しいからという理由でメールが送られることもありますが、このツールはメッセージではなくてタスク表として作られるべきです。

タスク表として、このツールには受信者にとってもっと便利でなければなりません。他の人が私のタスク表に何かを載せるときは、なにかしらの制限があって欲しいと思います。そして、誰かが私のタスク表に何かを投稿した時、具体的に何をして欲しいのか明記して欲しいと思います。単純にメールを読んで欲しいだけなのか?どれほど重要なのか(重要じゃないことを投稿できないような機能も必要ですね)?いつまでにしなければならないのか?

最強の鉾と最強の盾のようなアイデアです。一方では、根についたツールを代替させることは不可能です。しかしもう一方では、100年後に人々が今と同じメール地獄にいるということも不可能でしょう。そして、いずれメールが代替されるのであれば、今しない理由はありません。

もし正しく行うことがあれば、代替できなさそうな問題を回避することができるでしょう。世界で最も有力な人が真っ先に代替するからです。彼らも、メール地獄に苦しめられているのですから。

何をつくるにしても、素早く動くものにしてください。Gmail はとても遅いものになってしまいました。[2] Gmailよりも優れていなくても、より素早く動くのであれば、Gmailからユーザーを持ってくることができるでしょう。

Gmailが遅いのは、Googleがあまり投資を行なえていないからです。しかし、この製品のためならば人はお金を払います。私だって月50$払ってもいいと思っています。私がどれほどの時間をメールにとられているかを考えれば、いくら払うべきかの計算の合計は大きな金額になります。少なくとも月1000$でしょうか。1日に数時間メールの読み書きを行なっているとして、有料であっても人生を楽にさせてくれる安いオプションです。

3. 大学を代替させる

最近熱くなっているアイデアで、なにか掴みかけていると思っています。数千年間存在してくた大学機関が、ここ数十年の間違いのせいで終わりになると考えにくいことですが、確かにここ数十年、アメリカの大学は間違った方向に進んでいます。もっと安く、もっと良いものを提供することができるでしょう。

大学が完全に消えることはないと思っています。ただ、学問における現在のような独占はなくなると思います。学び方には色々あり、大学とは違う勉強方法もあります。Yコンビネーターも、その一つかもしれません。

学問というのは、大きな二次効果を生む可能性のある、大きな課題です。例えば、誰かの学歴だけで、その人の信憑性は変わります。学問を小さく分けてしまえば、学歴制度はなくなってしまいます。また、キャンパスライフの代替も必要になるかもしれません(YCでは、そのことも取り入れて考えています)。

高校も代替させることはできますが、それにはスタートアップを遅らせる官僚的な障害があります。まずは、大学からです。

4. ネットドラマ

ハリウッドはインターネットを取り組むのが遅かったです。それが大きな失敗だと思うのは、今配信方法における絶対的な勝者が生まれ、それはケーブルではなくてインターネットだからです。

ケーブルテレビの管理者やテレビそのものに問題があるということもあります。私たちの家族は、その代替のためにApple TVを待ちませんでした。テレビがあまりに嫌いで、数ヶ月前にiMacを壁に取り付けました。無線マウスで操作するのは少し面倒ですが、テレビのひどいUIよりもはるかにマシです。

今多くの人がテレビや映画を見て過ごす時間は、SNSアプリなど全く関係のないものに代替されるかもしれません。関係のあるもので言えば、ゲームなどに代替されるかもしれません。しかし、いつだって、ただ座って見るだけのドラマなどへの需要はあるでしょう。ならば、インターネットを通してどのようにドラマを配信するにはどうすればいいのか? なにをつくるにしろ、Youtube 動画よりも大きなものにしなければなりません。座って番組を見る時、なにかしらの期待があります:知っているキャラクターの登場や、映画のようなものです。

配信と課金が重なると、2通りの未来の可能性があります。一つ目は、NetflixやAppleなどがエンタメのアプリストアになり、そこを経由して顧客に届くこと。二つ目は、アプリストアが大き過ぎたり、柔軟性にかけたりして、配信企業が単独でドラマ制作と結びつくことです。そのような未来になれば、もはやインフラ企業など必要なくなりますね。

… Part. 2 へとつづく


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注釈

1. VCがスタートアップについて間違える最も重要なことの一つです。ほとんどの創業者がはっきりとした未来についての計画を持ち、それを元に判断しようとしています。大きな成功の結果とは、最初の計画とあまり関係ないことがほとんどです。

2. 元の文章では、「Gmailはとても遅い」でした。ポール・バッケート、修正ありがとうございます。

原文:http://www.paulgraham.com/ambitious.html

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