スタートアップは、営業に力を注ぐ必要がある:ジェシカ・リヴィングストン

PeraPera
7 min readFeb 23, 2017
YCombinatorの共同創業者、ジェシカ・リヴィングストン

シリコンバレーで読まれているブログをこちらのアプリから毎日更新しています!:http://www.perapera.co

アーリーステージのスタートアップがマーケティングに関して心に留めておかなければならないことは、マーケィングを今までの経験通りに考えないということです。スタートアップはおそらく「マーケティング」という言葉を使って説明するような活動は、一切すべきではないのです。

営業とマーケティングはそれぞれ、連続体の両端に位置しています。人々へのリーチに関して言えば、営業は狭く深く、マーケティングは、広く浅い方法です。そして、アーリーステージのスタートアップにとっては狭くて、深い方法が適しています。――これは、ユーザーへのアプローチ方法だけではなく、プロダクトの開発の参考にもなります。つまり、アーリーステージのスタートアップが実施すべきマーケティングは、営業と見分けのつかないものであるべきなのです。全体として関心のないマスの人々ではなく、自分たちが開発しているものに対して熱心に興味を持っている、少数のユーザーと話をすべきなのです。

成功するスタートアップはほとんど、狭く深い方法から始めています。例えばAppleは、スティーブ・ウォズニアックが、ホームブリュー・コンピューター・クラブの友だちを驚かせようとして作ったコンピューターから始まりました。クラブのメンバーが沢山いた訳ではありませんが、本当にみんな彼らのプロダクトに興味を持っていました。そしてFacebookは、ハーバード大学の学生を対象に始めたものです。これもまた、潜在的ユーザー数は多くありませんでしたが、彼らは本当にFacebookを求めていました。成功するスタートアップがこの狭く深い方法から始める理由の一つとして、多くのオーディエンスにリーチする力を持っていないということが挙げられます。本当に興味を持っているユーザーを選ばざるを得ないのです。また、プロダクトがまだ完成途中であることも理由の一つです。初期ユーザーとの会話自体もまた市場調査なのです。

私たちY Combinator*(以下YC)では、大半のスタートアップに対し、まずアーリーアダプターのコアなグループを探し出すことから始めて、個々のユーザーと対話し、プロダクトに登録してもらうよう説得することが大切だとアドバイスしています。

例えば、Airbnbにとってのアーリーアダプターは、ニューヨーク市のホストとゲストでした(YCは2009年冬のバッチでAirbnbに資金提供しました)。Airbnbが成長するためには、新規ホストを獲得し、既存ホストのコンバージョンをさらにあげる必要がありました。そこで、ブライアン・チェスキーとジョー・ゲビアはホストたちと会うため、毎週ニューヨークへ飛び彼らの部屋の価格の決め方、より良い写真の取り方などを直接教えました。また、そのホストたちから新しいホストになってくれそうな人たちを紹介してもらい、直接会いに行ったのです。

Stripe(YC 2009年夏のバッチ)は、会社を初めて間もない頃、ユーザーを営業して獲得することに特に熱心なスタートアップでした。特にStripeのようなサービスにとって、YC卒業生たちは、アーリーアダプター探しに最適なコミュニティーで、共同創業者のパトリックとジョン・コリソンはユーザー1人1人に対し丁寧に仕事を行いました。Stripeを試してみる事を了承した人がいたら、リンクを含んだメールを送るのではなく、その場でStripeをインストールしてあげたのです。今では、私たちはこのテクニックを「コリソン・インストール」と呼んでいます。

YCのゲストスピーカーの多くはよく、ユーザー獲得の初期のプロセスにとって足を動かす事は大切だと語っています。Pinterestは今や大衆消費者向けの製品ですが、ベン・シルバーマンは、営業してユーザーを獲得したと話していました。ベンは、パロアルトのカフェに足を運び、適当な人たちにPinterestを試してもらうようにお願いし、フィードバックを集めていたそうです。

スタートアップが「マーケティング」という言葉を使うことはとても危険です。スタートアップが力を入れるべき事は、「マーケティング」の延長線上にはありますが、完全に真逆だからです。正しい方に力を注げば2倍の効果をもたらし―ユーザーを獲得して、製品を定義することです―間違った方に力を注げば、2倍の危険を及ぼします。会社が成長しないだけでなく、プロダクトの欠点から目をそらしたままでいてしまう可能性があるからです。

私はいままでに、平凡な製品を作り、世界に発表し、ユーザーがいないことに気付き、次にどうしたらいいか途方に暮れてしまう創業者の姿を何度も見てきました。ユーザーを全く獲得できないどころか、これらのスタートアップは製品を改善するのに必要なフィードバックすら得られないのです。

でも、なぜ創業者たちは皆、ユーザー1人1人と交流し始めないのでしょうか?それは、難しくて、気が進まないような作業だからなのです。営業は、「マーケティング」では得られない、ある種辛辣なフィードバックを受けるものです。プロダクトを誰かに使ってもらえるよう説明しても、使ってもらえない事もあります。こういった対話は過酷ではありますが、必要な事なのです。私の経験からすると、自分のプロダクトが不十分なことから目をそらしたい、あるいはスタートアップを始めることの難しさに耐える事ができない創業者たちは、ユーザーと直接話をすると不愉快な真実に直面してしまうので、営業をせず無意識に広く浅い「マーケティング」のアプローチを好んでいるのです。

足を動かす努力の効果を測定するためにはどうすればいいでしょうか?絶対的な数値よりも、成長率に焦点を当ててみましょう。最初は絶対的な数値が小さくてもがっかりすることはありません。ユーザーが20人いたら、10%成長するには、今週もう2人獲得するだけでいいのです。多くのプロダクトにとって、ユーザー2人というのは小さな数ですが、週に10%というのはすばらしい成長率です。週に10%のペースで成長を続けたら、絶対的な数値はいずれ立派なものになるでしょう。

YCが送るアドバイスは常に、本当に優れた製品を作ること、足を運んでユーザーを獲得することです。この二つは相伴っています。本当に優れた製品を作るには、初期ユーザーと個別に話をする必要があるからです。営業/マーケティングの連続体の、狭くて深い方法に力を注ぐことは、最も効果的なユーザー獲得方法というだけではありません。これをしないと、あなたのスタートアップは死んでしまうのです。

--

--

PeraPera

シリコンバレーで最も読まれているブログポストを日本語でお届けします。もっと読みたければ、アプリをダウンロード:www.perapera.co