What Great Leaders do ? -良きリーダーに必要なものとは?#1

Serina Mitsui
12 min readJun 19, 2016

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7月のHBRが「組織の本音」特集だったのですが、そのなかの、”Can Your Employees Really Speak Freely ?”(言いにくいことを言える職場) というトピックを読んでいて、ふと、スタンフォード大学教授のRobert (Bob)Suttonの”What Great Leaders Do”という講義を、このあいだYouTubeで見たのを思い出したので、内容をまとめておこうと思います。

話しがとっても面白い。いつか実際に授業を受けてみたい。Robert I Suttonの主な著書:「あなたの職場のイヤな奴」「Good Boss, Bad Boss

Magnification Effect (拡大効果)

上司になったり、リーダー的なポジションに付くことで、1.「率ているメンバーから行動のひとつひとつを注意深くみられる」、2.「組織(やチーム)のパフォーマンスに値するよりも、より多くの非難を受けたり、より多くの功績を認められる」という効果があることが紹介されています。

When people are placed in a position of authority over others a number of things happen:

1. The people who you lead watch your every move very closely.
2. You will get more blame and more credit than you deserve for organizational performance.

だからこそ上司や、地位の高い、リーダー的なポジションにあるひとは「自分の振る舞いに対して、他の人がどう反応するかを理解しようと、努力を惜しまない」ことが必要だと言っています。

サットンいわく、平均するとリーダーは、ある組織のパフォーマンス(良いものも悪いものも含む)において15%ほどしか寄与していないのですが、そのパフォーマンスにおける50%程の非難を受けたり、功績を認められたりするとのこと。

ちなみに、ボスがメンバーから頻繁に、注意深く見られている、という事例は、生物学的にも遺伝子学的にも似たものが報告されているそうで、ヒヒの群れでは、最優位のオスが30秒に1回のペースで!群れの他のメンバーから見られているとのこと。

This happens to baboons too. The typical member of a baboon troop will look at at their alpha male once every 30 seconds. Something biological or genetic going on here.

また、2009年のリーマンショックのときに発生したレイオフも引き合いに出していて、「ある会社である社員を解雇する必要があった。そのことは誰も知らない事実だったが、ある日、(解雇される)本人がマネージャーに、私の解雇はいつですか?と聞いてきた」そう。そのマネージャーは(内密になっていると思っていたのに)突然言われたことにびっくり。実は、その(解雇される予定の)社員はそのマネージャーが最近、目を合わせなくなったことから、自分が近いうちに解雇されるのでは、と感づいたそうです。

それほど、立場のある人は周囲のひとに注意深く見られている。結構大変ですね・・・・。

Power Poisoning

また、サットンはPower Poisoningについても触れています。これは、性格に関わらず、人は他のひとよりもパワーを持つポジションにいると、1.自分のニーズや関心ごとにフォーカスするようになる 2.他のひとが持っているニーズや関心への興味が薄くなる 3.ルールは自分には当てはまらないのだ、といった振る舞いをするようになるのだそう。

Independent of personality when you put human beings in power positions over other human beings three things happen pretty reliably:

1. They focus more on their own needs and concerns.
2. They focus less on the needs and concerns of others.
3. They act like the rules don’t apply to them.

講義の中では、HP(ヒューレットパッカード)の元CEOのセックススキャンダルを例にだしていますが、特に業績がすこぶる良いときにこそ、上記の三つのことが最も起りやすいと言っています。

また、UC Barkleyで実験されたCookies Studyというのも紹介されていて、3人の学生を一つの部屋にいれる。そのうちひとりを上司だと識別できるようにし、5つのクッキーが乗ったお皿を実験者が持ち込みます。その3人の学生にクッキーを食べるように言うと、4つ目のクッキー(お皿には残り2つしかない)は上司と識別された人が食べる傾向にあったのだそうです。(最後の1つのクッキーは最も食べにくいため、誰も手を付けない。結果、2枚のクッキーを食べるのは上司と識別された学生だと….!)

科学的にも証明されているように、周囲よりもパワーを持った位置にいると、上記のようなことが、無意識的に起こってしまうものとのこと。

パワーをもつことで無意識的に、振る舞いが変わってしまうというのも、あるあるだなあ、と思いますが、より注目を集めるリーダーだからこそ、慎重になる必要があるのだとサットンは言っています。

Hallmarks of in tune bosses

だからこそ、(最悪の上司(リーダー)にならないために)Good Boss(Leader)はいくつかのことを実践していると紹介しています。

1.Be perfectly assertive.

「アサーティブ(Assertive)」の訳語は、「自己主張すること」。 しかし、アサーティブであることは、自分の意見を押し通すことではありません。 自分の要求や意見を、相手の権利を侵害することなく、誠実に、率直に、対等に表現することを意味します。

必要なときに必要なタイミングでメンバーと対峙するのをいとわないし(時にはネガティブフィードバックもする)、そして、適切な時がきたら引き下がる能力があるのがよい上司だと言っていて、つまりは、結果として、あなた(メンバー)のために働いている、だったり、あなたのニーズをよく理解しているよ、といった風に見えることが大切だといっています。

“I believe managing is like holding a dove in your hand. If you hold it too tightly you kill it. If you hold it too loosely you lose it.” — Tommy Lasorta

一方でマネジメントをする上で、(前にでるときと、下がるときの)タイミングが難しいとも言っていて、その中で、サットンはシリコンバレーのスタートアップの例を出していてるのですが、シリコンバレーのスタートアップでは、リーダー的なポジションにいる人は、往々にして、10分ごとにプロジェクトの進捗を送れ、だったり、あるいは、あれは今どうなっているんだ、みたいな質問を、部下にやってしまったりすると。

けれども、(特にクリエイティブな仕事をしているメンバーを率いている場合は)、マイクロマネジメントはメンバーの創造性を毀損してしまう。だから、(ときには)メンバーを放っておくほうが良いとも言っています。IDEOのCEOの例を出していますが、彼はその場(ミーティングの場など)に自分が必要なくなったな、と思うと自ら部屋から出ていくのだそうです。それは彼自身、自分が(ほかのメンバーより)権威ある立場にいることを認識していて、仮にメンバーと同じ部屋にずっと居てしまうと、メンバーがうまくブレストができなくなることを理解しているからだそうです。

Management by walking out of the room. CEO of IDEO does this. He will leave a room if he is not needed. Because he recognizes he is an authority figure and if he stays too long that can mess things up.

前にできるときと下がるときの絶妙なタイミングって超難易度高い・・・。

2. Attitude of wisdom.

そして、サットンによると、人は一般的に、「自信があり、能力があり、責任感があり、意思決定をしてくれる」ひとにリードしてもらいたいが、「傲慢だったり、話を聞かない」といった人のもとで働きたくない、と思うのだそうで、Good Bossたちはこれら二つのラインをうまく保つ方法を見つけているのだそうです。

その一つとして、”Listening”(=話を聞くこと)、を挙げているのですが、Good Bossは「今、このとき、正しいと思っていることに従い行動する勇気と自信を持っているが、同時に、新しい情報が舞い込んできたときにはそれをアップデートする謙虚さをもっている」つまり「自分が間違っていた、と気づいたときは、それを修正することができること」が二つのラインを保つ方法の一つだと。だから、「間違っていた」と気付くためにも、”Listening”(周囲のひとの話を聞くこと)が重要で、それが上司として、リーダー的ポジションにいる人の振る舞いとして、賢い態度(=attitude of wisdom)であるとのこと。

Good bosses have the courage and the confidence to act on what they know right now, along with the humility to update when new information comes along.

“I think it is very important for you to do two things: act on you temporary convictions as if it were a real conviction; and when you realize your are wrong correct course very quickly” — Andy Grove, Intel

また、褒めることも、賢い態度のひとつとして紹介していて、サットンは自分自身の例を挙げているのですが、会うたびに、「君痩せた?」と言ってくる20年来の友人がいるのだけれど、(彼は本当にそう思っていっていないのだけれども)嘘でも言われるとちょっと嬉しい、と。研究結果では、(本当に思っているかに関係なく)「褒める」ことで、相手が自分に対して、より好意を抱く効果があると言われているそうです。

だからこそ、コミュニケーションをとる際に上司として相手を「褒める」ことを実践することを挙げています。

一方で、「褒める」効果は逆説的に、良くない効果ももたらすとも言っています。相手にとって悪いことを伝えることは、相手が自分のことを嫌いになってしまう。だから人間は、(嫌われたくないため)相手には悪いことを言わない傾向があるとのこと。これが、ヒエラルキーの中で起こると、部下は上司には悪いことを言わなくなるという問題をはらんでいるらしいです。

スペースシャトル”Challenger”が打ち上げに失敗したあとの調査で、ある研究者が、「スペースシャトルのメインエンジンはどれくらいの確率で爆発すると思うか?」という質問を、現場のエンジニアとそのチームの上司に聞いたのだそう。すると、現場のエンジニアは1:200、そして上司は1:100,000の確率だと答えたとのこと。これくらい、ヒエラルキーにおいて、悪いニュースは上司に伝わりにくく、事実が把握しにことなのだと。

3. Fighting in a constructive way.

上記のことを防ぐために、Good Bossは、「建設的な方法で議論できるようにする」必要があることを挙げています。建設的な方法で議論するために、「自分が正しい、という態度で議論するけれども、聞くときは自分が間違っているというような態度で聞く」ことが重要であると言っています。また、「アイディアを出し合う初期段階(=ブレストをしているとき)は、議論をせず、ある一定程度のアイディアが出たら議論を始める。そして(これが最も難しいと言っているのですが)ある時点で、議論をやめ、(必要であれば)負けを認め、(自分が反対するアイディアだとしても)それを導入するために手助けをすることが大切だと言っています。さらに、(反対するアイディアの場合は特に)それを導入する段階で”精一杯”手助けすることが重要だと。この”精一杯”というのがポイントで、実際に導入フェーズで手を抜くと、失敗したときに、そのアイディア自体が良くなかったからなのか、導入プロセスが悪かったからなのか判断できなくなる、と言っています。

“If you disagree with an idea, you should work especially hard to implement it well because they way when it fails you’ll know it was a bad idea. Not bad execution.” — Andy Grove.

長いので後半に続く・・・・・・・・・・・・

世の中的に、退職理由のNo1.は上司や自分より上の立場のひとが嫌で辞めることが多いと言われています。一方で、(だからこそ?)マネジメントやリーダーシップについての研究がたくさんなされていますが、やっぱり実践となると、難易度高いのだなあと、改めて思います・・・。わかっていても難しい・・・。ただ、きっとここが肝なんだろうな、と。もう少し勉強していきたいと思います。

そういえば、先日ニュースで見たヒラリー・クリントンのスピーチが印象的だったので、載せておこうと思います。アメリカの(世界の?)リーダーと言えば、ですが、毎回、この類のスピーチを書くひと、本当によく考えているなあと思います・・・。よいリーダーに見える・・・。

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