ロゴデザイン、22の確認すべき大事なこと

22 important things to check for logo design, thinking for creating design guidelines.

brooklynのアップルストアの看板(筆者撮影)

9月にロゴデザインのワークショップをやることになりまして、対象者に向けて予習の意味も兼ね、久々のデザインエントリーです。

「長く使える」「様々な用途に使える」「時を重ねてその精度が増す」「デザイン担当者の負担が少ない」「関わるクリエイターの創作意欲が湧く」「複数のデザイン関係者が扱いやすい」…

などなど「ブランドデザイン担当者」として、また普段は「デザインガイドラインなど作成している立場」から特に重要な「ロゴデザインのポイント」だけをざっと書き出してみました(個別のエントリーはまた後日ということで)。

まず、最初は東京オリンピックなどでも話題になった「知財」「意匠系」のポイントからです。それではどうぞ。


<知財・意匠系>

1.既視感がなく独自性を確保しているデザインか

「ロゴっぽいもの」がロゴではありません。アイデンティティデザインシステムの最高位になりうるものをロゴと言います。何かにそっくり、よく見かけるような種類のものはロゴにはなりません。

2.意匠、商標、知財権をクリアできるデザインか

すでに権利を保有している意匠と似かよっているもの、別の誰かが権利を有しているデザインと判別しづらいものはロゴとして使用できません。

よくセミナーなどで例に出すのは、思わず食べてしまいたいような美味しいりんごを育てて販売しているりんご園でさえ「かじったリンゴのシルエット」ロゴは使えないというようなことです。

3.記号として認知できるものか

そのロゴデザインが記号として「意味するもの」=「意味されるもの」の関係が成り立たなければ、ロゴのデザインとして成立しません。

『伝わるロゴの基本 — トーン・アンド・マナーで作るブランドデザイン 』より抜粋

1〜3については、UJIの「視覚マーケティング」セミナーに参加されている方にとっては「耳にタコ」かもしれませんね。次は、ロゴの運用編です。


<デザインの資産運用>

4.アイコンやFavicon、サインにも使えるか

「せっかくロゴを作ったのに、アイコンにしたら潰れてしまった」というようなことはありませんか。

ロゴのデザインがフォントを核とした「ロゴタイプ」であれば、シンボルマークを作っておくか、あるいは一文字だけデザインに特徴を出しておくなどしておくとあとあと便利ですね。

(ブルックリンのブルーボトルにて筆者撮影。「ついインスタに上げてしまう」ロゴデザインは重要)

5.ブランドのグラフィックに展開が可能か

ロゴデザインの一部分を展開したグラフィックのパターンは、持っているととても便利なデザインの資産です。

もちろん、LOGOでないグラフィックでも構わないのですが、意匠の面からはLOGOからの展開であればすでに意匠権を持っているものの二次創作になるので、とてもセイフティーなデザインだということになります。

6.ブランドフォントを格納しているデザインか

ブランドフォントについては「今、自分のブランドにはないなあ」と思ったら、新設して定義する事をお勧めしています。

もう、ここだけで、多分本1冊くらいかける重要事項なのですが今日はさらっと次にいきます。


<ブランドの「らしさ」の醸成>

7.デザインシステムの核となるトーン・アンド・マナーを有しているか

トーン・アンド・マナー(広告業界の人はよく略して「トンマナ」などと言います)とは、ブランドの空気感、らしさ、ふさわしさ、と考えてください。詳しくは、こちらの本に詳しく書いています。

『生まれ変わるデザイン — 持続と継続のためのデザイン戦略 』から抜粋

また、その「トンマナ」がきちんと体現されているかどうかについてデザインテストをする事をお勧めしています。


<デザインテスト系>

8.ショッピングバッグにロゴだけ入れてサマになるか

当社ではこれを「ショッピングバッグテスト」と呼んでいます。ロゴのデザインを決めるとき、リ・デザインするとき、候補となるデザインをショッピングバッグのダミーにただ入れて見比べるというもの。

「ショッピングバッグ」を作らなくても、重力がある世界の中でデザインシミュレーションしておく事をお勧めしています。

『生まれ変わるデザイン —持続と継続のためのデザイン戦略 』では、会津下郷にある老舗のまんじゅう屋のリ・ブランディングを事例に取り、デザインシステムの構築、デザインマネジメント、デザインガイドライン作成などについて、詳細を記しています。

9.他のロゴと並べておいた際に見劣りしないか

デパートやショッピングセンター、モールなどで、ロゴが一気に並べられてしまう時ってありますよね。

ショッピングバッグテストと同じ意味でロゴのデザインはA3カンプの中で考えず、様々な状況を想定してデザインテストをする事をお勧めします。

『伝わるロゴの基本 — トーン・アンド・マナーで作るブランドデザイン 』より抜粋

<ダイナミックアイデンティティ、デザインシステム系>

10.商品化に役立つか

こちらはテラスホテルの食卓塩。シンボルマークにブランドフォントで商品ラインアップを入れただけのシンプルデザインですが、旅行客のお土産買いたいココロの気をひくに十二分なクオリティです。(『視覚マーケティング戦略』という書籍を執筆する際に、ブランドロゴの活用事例として取り上げさせていただきました。ありがとうございました。)

(http://www.terrace.co.jp/)

11.新しいサービスができた時に素早く対応できるか

ロゴデザインに、シリーズフォーマット(デザイン)やダイナミックアイデンティティの要素を入れておくことが重要です。これらはデザインマネジメントや生産性、スピード感に如実に反映されます。

12.ターゲットや事業展開に合わせて、変化をつけることが可能か

ライフスタイルホテルとして注目を浴びる1 HOTELブランドですが、セントラルパークブルックリンなど、立地場所によってロゴの背景テクスチャーが異なることに注目してください。(砂漠にできたら、背景は砂漠になるんでしょうね。)

1HOTEL セントラルパーク外観のロゴ(筆者撮影)

13.一次的な流行にとらわれず長く使えるか

「使える」ように最初から作っておくことも重要ですし、リニューアルの際にデザインの資産を活用するという考え方も重要です。

世界のブランドロゴの変化の軌跡や動向などについては書籍などを一度チェックしておくといいでしょう。

下は『ロゴライフ』という、ブランドロゴの変化を集めて解説した書籍です。

『伝わるロゴの基本 —トーン・アンド・マナーで作るブランドデザイン 』より抜粋

企業ロゴデザインの移り変わりなどを見ているととてもよく分かりますが「どこをデザインのゴールにするか」が常に重要です。


<デザインマーケティング視点>

14.誰にでも使いやすいか

こちらも東京オリンピックのロゴコンペのときに感じたのですが、落選となった某氏のデザインは大変に素晴らしいものでしたが、展開が難しく素人には扱いづらいのが落選の原因かなと感じました(あくまでも個人の印象です)。

前述(8)の通り、白い空間に入れるだけでサマになるロゴは生産性が高く、効率がいいということになります。

実際、ロゴが良ければデザイナーの出番は減るかもしれません。

15.ロゴのカラーにはきちんと意味があるか

当社開発のロゴ事例ですが、会津下郷の金子牧場さんは「ジャージー乳」「干し草(自家製資料)」に特徴があり取扱商品は「乳製品」ですのでブランドカラーは全てその世界にあるものから選ばれています。

また、使用する色数をあえて減らすことで特別な印象を作ることが可能です。スタバやタリーズ、バーガーキングやサーティワンのロゴなどを思い浮かべてみてくださいね。

『生まれ変わるデザイン、持続と継続のためのブランド戦略』より
『生まれ変わるデザイン、持続と継続のためのブランド戦略』より

16.価格帯やサービスにあったポジションを表現しているか

商品力やサービスが充実しているのに、ロゴは創業当時からそのまま…という残念極まりない例をよく見かけます。また、よく、相談されます。

ブランドロゴは「生き物」と考えて、手入れをすることが必要です。実態に合わせて、ロゴもブラッシュアップしましょう。

17.競合のブランドに対して、差別化できるように工夫されているか

後発ブランドや下位(業界トップでない)ブランドであれば、ロゴデザインは武器になります。

リポジショニングというマーケティングの手法とビジュアルを組み合わせれる事でイノベーティブなプロモーションが可能になります。


<データ形式のチェック>

18.さまざまな媒体に使用できるデータ形式になっているか

ロゴのデザインを依頼する際には、なるべくAIファイル、あるいはSVGファイルなどのデータにしてもらい、紙媒体やウェブサイトはもちろんあらゆるシーンに使用できるようにしておきましょう。

ロゴに付帯するサービス名などをテキストで入れる際は、アウトライン化されたデータだけでなく、テキストが生きた状態(編集可能)なファイルも追加でもらっておきます。使用されたフォントなども聞いておきましょう。

フリーフォントなどをそのまま使用している場合や、最初の意匠の項目とかぶりますが、データ集からの「そのまま利用」などないかなども確認が必要です。

最後に。ロゴオーナーや制作者にとっての「主観」についてです。


<感覚的、主観的チェック>

19.ぱっと目で目立つ。街中で目を引くか

街角で目を引く、すぐに見つけられるポイントについて、自分自身の目で見て、感じてみましょう。

担当者やオーナーが「惚れ惚れする」美しさが体現されていますか。チェックしましょう。

20.飽きがこないデザインか

人間は飽きる生き物(だそう)です。これは、仕方のないことなので、飽きがこないように工夫をしましょう。ロゴを変えるのでなく、色を変える、モチーフを変える、形はそのままでトンマナを変える、世界観を変える、、、などなど、新しいチャレンジをしましょう。制限はクリエイティブの神という言葉がありますね。

21.ブランドとあっているか

「あれ?」「おや?」と思うロゴデザインですが、知財などの権利で危ないことが多いです。

感覚や直感のことを書くと嫌がる人もいますが「あれ?」「おや?」と感じるデザインや「しっくりこない」デザインは要チェック。GOOGLE画像検索やPINTEREST.COMなどでキーワード検索をかけてみましょう。

22.そのロゴが好きか

ロゴ活用の実践という意味において、自己愛は重要なポイントです。企業の研修などにお伺いすると、誰もが羨むような有名企業、飛ぶ鳥を落とす勢いの先端企業、その土地で知らない人はいないという老舗企業などにおいてさえ、「私の会社なんて・・・」と、無駄に謙遜される方がいて本当に驚きます。本当に無駄です。

ロゴやアイデンティティデザインの立場からではありますが、世界にひとつであるそのアイデンティティを愛し、誇りにしましょう。

これらがレイアウトやロゴ取り扱いのポジショニングに如実に響くことは言うまでもありません。大切に扱ってください。

デザインガイドライン的な実践面でいうと「ホワイトスペースをとる」などということになりますが、一番効果があるのは世の中のハイブランド、ラグジュアリーブランドと呼ばれるところが良くやるように「積極的に使う」ことではないでしょうか。


先日、NYに旅行に行った際、タイムズスクエアーに赤い椅子が並べられていて人だかりがありなんだろうと思ったらこれだったのですね。

コカコーラとペプシのロゴについては、前のブログにもいろいろ書いているのですが、やはり傑作と言われるアイデアや広告を見て、いつも感じることは技術革新はもちろん「担当者の愛」です。

書いてあることは「冷たいコーク飲もうぜ」でキービジュアルはボトルシズルカットなんですがなんだか熱さがあってしかもクールカッコイイですね。

ロゴデザインは1度作って終わりではなく「ブランドの資産」としてきちんと手入れをして使い続けたいもの。

すべてのポイントが揃うことは難しくても、新設したり、一部を作り替えたり、突出した要素があればそれを補う「デザインシステム」「デザインガイドライン」を作ることでロゴはより使いやすく、資産価値の高いデザインなります。

ロゴワークショップセミナーは8月25日まで早割の特典があります。告知をサボっていたのですが、半数ほどがすでに申し込み済みとなりました。お申し込みは是非お早めに。

それでは、会場でお会いしましょう。

(なにやらプロの方までお申し込みいただいておりまして恐縮です。楽しんで帰ってくださいね。)

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[手を動かして考える ロゴデザインワークショップ]

http://logo-design-workshop.peatix.com/
詳細
絵を描いたりデザインをしたりするのに、すぐ、PCやツールを使おうとしていませんか?
本セミナーでは、PCやツールはいっさい使いません。鉛筆、マーカー、色鉛筆などの「筆記用具」を使用し、自分の手を動かして「デザイン」のしくみや意味を考えます。
また、そのカタチ(意匠)をつくるプロセスにおいてコンセプトのデザインやサービスの事業構想、ブランドのポジショニングなどを想定していただきます。
デザインシステムになりうるアイデンティティのデザインを「手を動かす」ことで導き出すようなカリキュラムです。
[日時]
2017年9月7日(木)19:00会場 19:30〜21:30
[会場]
サンクチュアリ出版1Fイベントホール
[持物]
鉛筆、色鉛筆、マーカー、シャープペンシル、スケッチブック、方眼ノート、クロッキー帳などなんでもいいので「筆記用具」はご自身で持参してください。
[講師]
ウジトモコ(アートディレクター/株式会社ウジパブリシティ―代表取締役)
ウジトモコ
(Art Director, Designer)
多摩美術大学グラフィックデザイン科卒 広告代理店および制作会社にて三菱電機、日清食品、服部セイコーなど大手企業のクリエイティブを担当。1994年ウジパブリシティー設立。デザインを経営戦略として捉え、採用、販促、ブランディング等で飛躍的な効果を上げる視覚マーケティングの提唱者。
ノンデザイナー向けデザインセミナーも多数開催。「福島美味ブランドプロジェクト」アートディレクター、「かごしまデザインアワード」審査員。山口県防府市「幸せますブランド」契約アートディレクター。「鳥取みらい」アドバイザー。老舗や日本の良いものを世界に打ち出すブランディング案件にも積極的に取り組んでいる。
著書に
『売れるデザインのしくみ ―トーン・アンド・マナーで魅せるブランドデザイン― 』(BNN新社)、『伝わるロゴの基本―トーン・アンド・マナーでつくるブランドデザイン―』(グラフィック社)、『新しい問題解決の武器となる 視覚マーケティング戦略』(クロスメディア・パブリッシング)、『生まれ変わるデザイン-持続と継続のためのブランド戦略』(BNN新社)、
などがある。
[企画協力] 本を読まない人のための出版社 サンクチュアリ出版 詳細URL http://www.sanctuarybooks.jp/eventblog/index.php?e=1427