1. モバイルVRは、最も広く使われるVRの形になる
モバイルVRは、使うのが簡単で低コスト、そして気軽に持ち運べることから、大きなポテンシャルを持っている。普及の面で、モバイルVRこそがVRの覇権的な形になると、強く信じている。そして、モバイルVRは多くの人達にとって初めてのVR体験であり、VRと言ったとき最初に頭に浮かぶものになるだろう。
多くのユーザーがVRアプリを起動させるに足るパワフルなスマートフォンを既に持っていることから、ユーザーに必要なのは、スマートフォン上のVRアプリを使う上で必要な安いハードウェアだけである。Google Cardboardは(制限はあるものの)無料、Gear VRは$99と十分に安価で、スマートフォン($500ほどはする)を持っているユーザーにとっては、どちらもすぐに買えるような選択肢である。これはOculus Rift ($599)やHTC Vive ($799)と比べると非常に安価だし、またそれらを使うにはPC ($1100-$1500)が更に必要になる。ソニーの Playstation VRは、上記の選択肢よりも安く、必要とするのも比較的安価なPlaystation 4 ($350)である。
スマートフォンを差し込むためのハードウェアは必要だが、モバイルVRはどのハイエンドなVRシステムよりも安価だ。
モバイルVRの普及が遅れている主な原因は、スマートフォンを差し込むためのハードウェアがサポートされているスマートフォン向けVRヘッドセット(例: Gear VR, Google Cardboardではない)が普及していないことだ。ここで普及を加速させる触媒となるのは、iPhoneで使えるGearVRのようなデバイスだ。
アップルはまだVR市場に参入していないが、既に市場を狙っている。今年のMobile World Congressには、いくつかの新しいスマートフォン向けVRヘッドセットが登場するだろう。
2. 飛行機と空港での使用事例が、モバイルVR活用の先駆けになる
飛行機を使う旅行者たちは、機内と空港内で1人の時間を過ごそうと試みてきた。
ノートPCやDVDプレイヤー、タブレットなどがそのために使われている。モバイルVRはよりよい体験を彼らに提供するだろう。
(仮想の)スクリーンは、タブレットや席の後ろに張り付いているディスプレイよりも遥かに大きく、ノートPCや大きなタブレットよりもかさばらない。そしてユーザーは仮想的にリビングや映画館に座ってコンテンツを体験できる。
他の乗客から離れて1人になる。VRの無愛想で孤独なユーザーデメリットが、この用途ではユーザーにとってメリットに変わるのだ。
あなたのスマートフォンを使うことで、持ち込みデバイス向けの機内Wifiに接続することもできる(例えば、ユナイテッド航空のほとんどのフライトで可能だ)
3. 大手モバイルアプリのデベロッパー達は、新しいVR用のアプリを投下するよりも、既存のアプリにVRモードを組み込む
これから数年で、様々なタイプとブランドのモバイルVRヘッドセットが登場するだろう。その中で、新しいアプリを作るよりも、大抵のアプリデベロッパー達はヘッドセットが接続されたときVRモードになる機能を既存のモバイルアプリに組み込むだろう。
例えばHuluやNetflixは、GearVRなどのヘッドセットが接続されるとVRシアターモードになる。
既存のアプリにVRモードを組み込む事には、様々な利点がある:
・既存のアプリをアップデートすることで、新しいアプリをダウンロードさせる事なくユーザー達をVRに適応させることができる。
・既存のプッシュ通知の許可がそのまま使える
・多くのユーザーにとって、1つのアプリでユーザー体験が完結する方が良い
・App Storeなどで、ランキングの順位を維持できる。
4. 未来のモバイルVRゲーム最大の成功者は、既存のモバイルゲーム最大の成功者ではない
最大の通信会社が最大のソーシャルゲーム会社ではないのと同じように、モバイルとVRの間にはUI/UXの面で大きなDNAの変化がある。VRにフォーカスした新しい会社たちが登場し、大きな成功をおさめるだろう。トライアンドエラーを繰り返し、すばやくプラットフォームの強みを生かせる小さなチームこそが、優れたコンテンツを開発するのだ。
モバイル領域で成功したモバイルゲームたち (Words with Friends, Angry Birds, HayDay, Candy Crushなど)は、タイトルがヒットする前から新しい分野を拓いてきたモバイルファーストな会社が開発した。プラットフォーム上で覇権を取るタイトルが登場するまで、iPhoneが発売されてから何年かを要したものだ。Words with FriendとAngry Birds はiPhone発売から2年、Candy CrushとHayDayは5年かかっている。
VRにも固有のデザインや課題があることから、モバイルVRゲームにおける勝者が出てくるまで、R&Dが繰り返される期間が続くだろう。
5. ポジショントラッキング、最終的にはハンドトラッキングはモバイルVRでも使えるようになる
ポジショントラッキングについては、OculusのJohn Carmackが開発中だと言っているので、これは予言とは言えないかもしれない。
(VRScriptについての質問に対して)
“VRScriptは重要だと思うよ。けど自分の時間はほとんどGearVR用の位置トラッキングに使っているよ。VRScriptについてはもう1ヶ月も触ってない”
モバイルVRにおけるポジショントラッキングは非常に重要だ。ハンドトラッキングができれば、全く新しい体験を作り出せる。iPhoneがGPSに対応したことで、それを使った様々なアプリが登場したことにも似ている。
それを考えると、ハンドトラッキングは(GPSへの対応よりも)面白い。ユーザーたちが手をつかって仮想世界に触れることができれば、無限に応用が利くからだ。Tilt Brushや、DJ’ing in VRなどのアプリはVRの可能性を拡げてきた。ハンドトラッキングとスマートフォンのカメラが合わされば、モバイルベースのARへ進化するだろう。GoogleのProject Tangoは、それを可能にしようとしている。
ハンドトラッキングは仮想世界と関わる上でとても直感的な方法で、より没入感のある体験を作る助けになるだろう。
https://medium.com/@amitt/5-predictions-for-mobile-vr-1b7cc51adcc9#.kfkw49nqq
Amitt Mahajan
Managing Partner, Presence Capital; Co-creator, FarmVille; Serial entrepreneur
Translated by Kei Seki