SUGEEとの対話<第二回>

テクノロジーと祈り

2014年5月下旬


20代前半、都市での暮らしの中で癒しや祈りとはかけ離れた生活を送り、自分自身と日常生活との乖離の中でパニック障害をわずらってしまったSugeeは、偶然に導かれ、旅に出た。

沖縄の久高島、東南アジア、アフリカなどを旅してまわり、自然や神など「コントロールできない非自己」と関わることで自らと向き合い、大きな癒しを感じて生きる人たちの姿を多く目撃した。

そのような人たちのコミュニティに飛び込み、一緒に過ごすことで都市の生活で失った自分をじょじょに取り戻していった。Sugeeは旅の途中である確信を持つ。

「どのような場所で生きていようと、根源的な力とつながる感覚がないと人間は生きていけないものなのではないか?」

現代の都市生活者は、自然の脅威や神の力と向かい合わなくても行きてゆける。おおきな力と向き合い寄り添う方法としての「祈り」の感覚とは分断されて過ごしている。

<第一回>祈りのバージョンアップ

プリミティブな祈りの世界に飛び込み感じたインスピレーションを、Sugeeは東京で表現し続ける。都市のシャーマンが感じている世界の変化とはどのようなものなのか?

今回は、テクノロジーが変える世界のデザインという話から、じょじょにイメージをふくらませて行く。

豊月祭(2014.7.27)


楽観主義者の未来予測



種田 楽観主義者の未来予測という本が非常に面白いんです。

全ての問題は科学とテクノロジーによって解決できるというスタンスのアメリカの楽観主義者が語る「指数関数的な技術の進歩がもたらす連続的なイノベーションと潤沢な未来の社会の話」です。

世界中の人口が引き続き増加していって、地球にある資源が本格的に不足していくことは明らかなので、持続可能な生き方を心がけよう!というような話はよく聞きますが、テクノロジーを駆使してもっともっと潤沢な世界にすることで地球の問題を全部解決してしまおう。と考えるのが楽観主義的な未来の見方です。

前者は相対的に「悲観主義」の見方になるという事ですね。



途上国では、清潔な水を手に入れることができないために、不潔な水を飲んで病気になって、命を落とす人がまだまだいます。海水を飲み飲料水に変える浄水器が多くの人の命を救う可能性があります。

スマートフォンとWi-Fiへの接続が可能な環境を用意することで、教育を受ける機会は多くなり、彼らは慢性的な貧困状態から抜け出すことができる可能性があります。

(相対的に)悲観的な見方では、限りある資源を分け合う方向で解決策を探りますが、テクノロジー礼賛の楽観主義者たちが技術とデザインで地球の問題を全て変えて行こうとしているさまざまな挑戦が上下二冊に渡ってどんどん出てきます。

日本からはあんまり見えていなかったりするんですけど、そんなSFのような世界観を現実として実行しようとしている「楽観主義者」がいるんだ。と驚きました。


Sugee たしかにアフリカに旅をしたとき、電気もガスも通っていないようなところの人たちも既に携帯電話を持っていました。

ストリートには太陽光パネルで充電してくれる充電屋さんがいたりして。

我々日本人の、冷蔵庫・洗濯機・TV・パソコンがあって、携帯が来た。みたいな順番を全部すっ飛ばしていて、家に家電がまったくないのに携帯は持っていて、インターネットにもSNSにもアクセスできる状況が現時点で整っていたりします。

人と人との爆発的な繋がり方は、国家の垂直統合が前提になっている貨幣経済そのものすら覆しかねない、本当に革命的な変化ですよね。

前回武力を背景とした国どうしの奪い合いの話をしましたけれど、現状の社会に仕組みの中のエスタブリッシュたちは、強い力を持った個人同士がつながってしまったら困ってしまいますよね。

なんとか止めようとして強く反発するんじゃないかな。


種田 とめようがありますかね?


Sugee 止めようはないですよね。止めようがないからこそ、強く押さえつけようとするでしょうね。それはもう、あの手この手で阻止しようとしてきます。

例えば武器だったり、戦争だったり、原発だったり、…そういった人類が抱えてしまった負の遺産に関わって富を得て生活している人たちは、本気で科学技術で潤沢な社会を目指す動きを見て、どのように考え、あるいは考えを変え、どんなふうに生活していくか?という問題って、これから重要な問題になっていくと思います。


二項対立から共存・共生



種田 最近のニュースで「偽装」に関する問題が立て続けに起こりました。権力者の不正をネットワークでつながる人間の力を駆使して暴こうとする発想がすごく現れているように思います。

1人1人は持たざるものの連合組織と、既得権を持った人間とのあいだにも、かなりギスギスした対立がおこっているという感じがしますよね。市民と貴族の対立がくすぶっていたころのフランス革命の前夜のような、何がおこってもおかしく無いという感じが世の中に漂っています。


Sugee そうですよね。でも革命が起こること自体にはそれほど意味はなくて、どんなカタチの新しい世界を作って行けるかが問題なわけです。革命がうまくいって権力者が変わっても、今と同じような奪いあう世界を作ってしまっては意味が無いわけです。

二項対立して足を引っ張りあっている場合じゃないじゃないですか。二項対立を超えた何かを発見しないといけません。共存・共生のための道とは一体なんなのか?っていう話をこれからもっとしていくべきですよね。


種田 楽観主義者の未来予測では、発展途上国に「水が潤沢に行き渡り、ネットワークを普及させる」イノベーションが今後の人口問題の解決の直接的な解決策になる。と言っています。

途上国に子供が多い理由を説明するたとえ話として「一家に3人子供が必要だ」という話が出てきます。理由としては、3人のうち1人は死んでしまうから。1人が家の田畑で働いてお金を稼ぎ、もう1人を学校に行かせるため。そして教育を受けた1人が都市で働きお金を送金して、今の生活を脱出する。という連携プレー的な兄弟像が途上国のステレオタイプとして認識されているため、出生率が高いそうなんです。



清潔な飲み水をコミュニティに提供する技術があれば、不衛生な水を飲んで命を落とす事がなくなり、インターネットを通した高等教育が居ながらにして受けられるならば(カーン・アカデミーなどが有名)、誰もが働く機会を得られるかもしれません。

技術によって常識が変わり、新しい常識が世界のデザインを変化させていくとするならば、3人必要だった子供が1人か2人になるかもしれない。

実際の調査と統計で、安全・安心に暮らして行ける環境が行き渡ることと、出生率の低下には相関関係があるというデータも一緒に示されていました。

人口爆発がひき起こす、地球が足りないという問題をテクノロジーを駆使して解決してやろうと、かなりマジで頑張っている人が、少なからずいるんだということです。

あくまで相対的な見方ではありますが「ボトム・オブ・プラミッド」なんて言葉もあったりして、近代ではそういった人たちをボトムのまま押さえつけてやろうという動きが主流だったように思いますが、楽観主義者たちがが、世界はひとつにつながっているのだから、彼らがよりよく暮らせるようにすれば、地球全体としていい塩梅になると考えているんだとしたら、それは注目に値すると僕は考えているんです。

結局のところ未来をつくって行くのは人の想いと、その実現のための具体的な行動なわけじゃないですか。楽観主義者のテクノロジストは既に具体的に動き始めているんですよね。


Sugee なるほど。力をつけた「ボトム」が台頭するのを押さえつける方向で動く人たちもいるし、どんどんひっぱりあげようとしている人たちもいる。それらの人たちも協力・共生していったらもっと面白くなりますね。

彼らをボトムと見なすような、高度資本主義社会の根幹を支えているようなエスタブリッシュな人たちと、地球をハックしようと具体的に行動しているテクノロジストたちも、もっと理解を深め合うことができそうな気がしますね。そこの二項対立も越えて、先進国と後進国の二項対立も越えて行ったら地球全体が大きく変化しそうですね。

そういう相互理解が深まる場として、インターネットがもっと活用されるべきだと思うんですよ。


種田 「いいね!」ばっかりしてる場合じゃないですね。


叡智が集まるインターネット



Sugee インターネットを介して様々な人たちの叡智が集まるようなイメージが実現できたら面白いですよね。

種田 「Fablab」ってご存知ですか?

ファブラボ(ふぁぶらぼ、: Fab Lab、fabrication laboratory)は、 「ほぼあらゆるもの(”almost anything”)」をつくることを目標とした、3Dプリンタやカッティングマシンなど多様な工作機械を備えたワークショップ。世界中に存在し、市民が自由に利用できる事が特徴。「ほぼあらゆるもの」の中には、大量生産・規模の経済といった市場原理に制約され、いままでつくり出されなかったものが含まれる。ファブラボは、個人が、自らの必要性や欲求に応じて、そうした「もの」を自分(たち)自身で作り出せるようになるような社会をビジョンとして掲げており、それを「ものづくり革命 (Industrial (Re)volution:第2次産業革命)」とも呼んでいる。「ファブ」には、「Fabrication」(ものづくり)と「Fabulous」(楽しい・愉快な)の2つの単語がかけられている。

wikipedia ファブラボ

設置されているものが規格化されていて、世界中に点在していて、日本だと、鎌倉・筑波・渋谷・横浜なんかにあるんですけれど、DIY好きの集まりなので、自分固有の問題を解決するために、工作機械を使ってハンドメイドしちゃうわけですよ。時にはlabに居あわせた人たちの協力をいただきながら。


Sugee なるほど


種田 それだけだと、ただの工作好きの人たちって世界中に点在しているよねってだけの話になっちゃうんですけど、Fablabのいけてるところは、問題解決の方法を全部公開してオープンソースにしちゃったりするところなんですよ。

例えば、廃材の板があるから、一枚板を切り出して作れる椅子を作っちゃおう!と渋谷の誰かが思ったとするじゃないですか。それで実際に心ゆくまで作ったあとで、レーザーカッターで切るための設計データのようなものも、マシンの細かい設定データも全部公開しちゃうんです。Youtubeの動画つきで。

それを見た、ニューデリーとかアムステルダムとかスペインのFablabにいる工作好きが必要なものをダウンロードして、なんとか一枚板を調達できたら、すぐ椅子を作れちゃうようになるんです。

もちろんニューデリーの人が、自分好みにカスタマイズしたCADデータのようなものをさらにまとめて一式公開しちゃうという連鎖が続きます。「一枚の板から椅子を作る」というプロジェクトが世界中で同時多発的にあーでもない、こーでもないされてどんどん洗練されていく過程を想像すると、とってもわくわくしますよね。

http://youtu.be/yU2KUMKsGNI

僕が好きな話は「人ごみでどうしても叫びたくなってしまう」というサンフランシスコの女性が、問題を解決するためにあるバッグをつくるんです。形はリュックをお腹の方で持っているような感じのものなんですけど、もし、そういう状態になってしまったときには、そのバッグに顔を突っ込んで叫ぶことができるようになっています(たぶんちょっと防音になってるんだと思います)。

その叫び声はバッグの中で録音されていて、あまり人がいないところまで行ったら、バッグの蓋を大きく開けて再生してやることができる。人に迷惑をかけずに自分の衝動をきちんと解放してあげるという、たのしくてかわいい発明です。

世界には同じような問題を抱えていて、どうにも解決できないという人が、たくさんはいないかもしれないけれど、必ずいると思うんです。その人がこのバッグの作り方を見つけたら狂喜乱舞するでしょうね。

僕が思う「インターネットに叡智が集まっている状態」ってそんな感じです。

ある人の悩みから、コミュニティ全体の豊かさに関する問題まで解決しうる存在が既にあるんですよね。


Sugee すごくおもしろいですね!

それは、ものづくりの根幹に関わってくる話ですね。大量生産大量消費のもうひとつの選択肢なわけですね。


種田「適量生産」という言葉を使ってました。


Sugee 価値の発生やお金の発生にも関わるので、今の経済中心の社会が大きく変わる兆しですね。

それは例えば、人口爆発した地球の食料問題にも関わってくると思うんですけど、農村=大量に食料を生産する地域があって、物流があって分配されるという図式なんかも、今後どんどんうつりかわっていきそうですね。

これからは、それぞれの食料自給率ってどんどんあがっていくと思うんです。エネルギーに関してもそうだと思う。

アメリカの楽観主義のハッカーの人たちが既に始めてしまっている、地球の全ての問題をテクノロジーとデザインで解決しようという方向のラディカルな動きは、人間の価値観と社会のあり方を根本的に変えようとする野心的な動きです。

良いか悪いかはまだ判断つきませんが、途上国の人たちはそれを受け入れて大きな変化の渦に突入して行くのではないでしょうか。

大きな変化に向けてうごめく世界で、何が大事かを見極める必要があると思います。

Sugeeのパレスチナの友人から届いた停戦後のGAZAの様子

<次回に続く>

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