ビジネスで大切なことの一部は北大で学んだ(第10話)

Yuta Kokubun
8 min readMar 16, 2017

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第10話 To communicate with you is really frustrated

(第9話)

勇んで渡米したが、激しく打ちのめされる事になる

ビバリーヒルズ青春白書の世界にきた

アメリカ行きの飛行機は長い。10時間ほど飛行機に乗り、日本との時差マイナス16時間のポートランド空港に着いた。時差やワクワクで全く寝られず。昼14時くらいに出発して到着は朝8時。もうフラフラだったが、彼女が車で出迎えてくれ、住んでいたシェアハウスに連れて行ってもらった。男女計5人のシェアハウスで、なんかビバリーヒルズ青春白書っぽいなと思った。ビバリーヒルズ青春白書の正確な設定は知らなかったが、アメリカ人の男女が共同生活してる=ビバリーヒルズ青春白書という、何とも短絡的な連想をしていた。もし、ファンの方がこれを読んでたら本当に無知で申し訳ない。

ポートランド州立大学の授業に紛れ込んだ挙句、居眠り

日本は春休みだが、アメリカの大学は9月始まりなので学期中。彼女が通っていたポートランド州立大学の授業に紛れ込ませてもらった。あまりにも早口の英語(少なくとも純ジャパのぼくにとっては)と、時差ボケによる強烈な眠気で居眠りをしてしまう。授業後に「あなたが来たいと言ったから連れてきたのにどういうこと!?私に対する先生の印象も悪くなるじゃない!」と、彼女から激烈に怒られた。正論過ぎて反論できない。確かに自分が反対の立場なら絶対にキレる。30代を迎えた今現在も、他者への気遣いや配慮が足りないことが多々あるが、大学生のこの時期は本当に自己中野郎だった(遠い目)。

お前のアイデンティティを見せろ

ちなみにポートランドの街はトラムと、バスが発達していて、移動は快適だった。いまや全米随一の住みたい都市だが、規模感もちょうど良く、郊外に行けば自然があり、凄くいい街である。ポートランド滞在時に自分の英語力のなさを実感した出来事がある。彼女や彼女の友達とクラブに行った時に、入り口で”Please show me your identification.”と聞かれた。「お前のアイデンティティを見せろ」だなんて、入り口からとんでもない無茶ブリ。アメリカのクラブはなかなか手強い。でも、自分のアイデンティティを一瞬で理解してもらうには、どんな一発芸をやればええんやと苦悩していると、”Do you bring a passport?”と追加の質問が。「ああ、identificationって身分証のことか!」と気付き、凄く恥ずかしくなった。勘違いしたまま一発芸をかまさなくてよかった。

何のために大学院に行くのか

当時、北大で仲良くなった英語の先生(日本人)がいたのだが、彼はオレゴン州南部の海岸沿いの街にも家を持っていた。先生はスタンフォード大学で音声認識の分野で博士号を取り、いくつかの大学で教鞭を取った後、北大で英語の講師をしている変わった人だった。先生なのに偉ぶらず、ぼくみたいなダメ学生の悩みも親身に聞いてくれた。春休みにポートランドに行く事を伝えると、ご自宅に招待してくれたのだ。車で先生のお宅に向かい、到着後みんなでしばらく談笑していた。ぼくがふと、アメリカの大学院に進学希望だと伝えると、「何のために行くのか」と先生から問われた。しかし、驚くほど何も答えられない。当然だ。彼女の近くに住む事が動機なわけだから、ろくな返答ができるわけがない。「研究室を志望する理由や、自分がどう研究室に貢献できるかをアピールできないと教授は受け入れないよ」と、先生は優しくアドバイスをくれた。そこからは、教授と話す時に英語で志望動機を言えるよう、暇さえあれば文章を書いていた気がする。

突然来た謎の日本人に対しても、親身な教授に感動

翌週、UCバークレーを訪問した。ネットで環境分野の先生を探し、一番自分の興味と近い先生にメールをした。「ぼくは日本人で、あなたの研究室に進学希望だから、この日時で訪問していいか」という打診をし、先生は快くOKを出してくれた。そして訪問当日。自分で準備した事を伝えると、先生も親身に話を聞いてくれ、「うちの研究室は熱意のある学生が欲しいし、受験前に訪ねてくれて嬉しいわ」と言ってくれ、凄くテンションが上がった。その日は宿に帰り上機嫌で先生へのメールを書いていた。
”I wanna join your lab. ;)”的なノリで文章を書いていたのだが、それを見た彼女は「友達じゃないんだから、さすがにそれは失礼よ」と教えてくれた。アメリカ人はノリが良いから、顔文字とか駆使してフレンドリーな感じ出すべきかと思ったが、さすがにどんな言語にもTPOはある(当たり前や)

デトロイトはリアル”ファイナルファイト”の街

そのまた翌週は、東海岸に飛行機で飛んで、色々な大学を回った。手始めにミシガン州立大学に行ったのだが、教授とはアポが取れず。飛び込みで研究室に行き、準備した志望動機テンプレを話していると「お前はサイエンスとエンジニアリングの違いがまるで分かっていない」と一蹴された。海原雄山に酷評された料理人ってこんな気持ちになるのかなと、残念な気持ちになった。ちなみにミシガン州立大学はデトロイトにあるのだが、自動車産業が廃れた都市故か、スラム街が多い。車でスラム街を通った時に、こんなファイナルファイトのような街が実在するのかと、内心震えていた。車窓から外を眺めている時に、「ジロジロ周りをみると危ないよ。みんな普通に銃を持ってるからね」と彼女から忠告を受け、更にガクブル感が増した。

ファイナルファイトの世界観

ミスコミュニケーションの積み重ねはやばい

その後はハーバード大学、イェール大学、デューク大学と、名門校を軒並み回った。ミシガン州→一瞬カナダ入国→ニューヨーク州→マサチューセッツ州→ニュージャージー州→メリーランド州→ワシントンDC→バージニア州→ノースカロライナ州と、合計10日くらいかけて車で回った。違う国の人間同士が2人で長旅をしていると、様々なミスコミュニケーションが起こる。

彼女「お腹すいてきたね、何食べたい?」
ぼく「なんでもいいよ」
彼女「マックが見えてきたけど、どう?」
ぼく「マックはちょっと。。。」
彼女「なんでもいいっていったじゃない!(怒)」

こんなことも起こった

彼女「私は運転するから、あなたは地図を見てナビしてね」
ぼく「(アメリカ初めてなんですけど)うん、やってみる」
彼女「ところで、ニューヨークはこの道行けばいいんだっけ?」
ぼく「あ、さっきの道を右折だった」
彼女「なんでさっき言わないの!(怒)」

To communicate with you is really frustrating.

こんな些細なすれ違いを積み重ねるうちに、段々と関係は悪くなっていく。何度目かの揉め事が起きた時に、彼女がぼくに対して放った言葉は、未だに一言一句違わず脳裏に刻まれている。

“To communicate with you is really frustrating.”

自分の英語力のなさ故か、英語だと日本語ほど話者の感情を読み取れないのだが、この言葉だけはなぜかくっきりと相手の感情が読み取れた。「あなたとコミュニケーション取ると、めっちゃイラつく」である。辛い。プロボクサーはボディーブローでダウンすると、地獄の苦しみを味わうというが、まさにそんな状態。ぼくの心のろっ骨は、もうバキバキに折れてしまったのである。しばらくして仲直りしたのだが、この言葉のダメージはずっと引きずり続けた。

そこからポートランドに戻り、その2–3日後に日本への帰国することに。空港のセキュリティを通り、振り返ると彼女が小さく手を振っていた。もう二度と会えない。内心気付いてしまっていた別れの予感から、必死で目を逸らしながら、帰国の途についた。
(つづく)

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Yuta Kokubun

ビズリーチの中の人。所属組織遍歴は北大工学部→東大新領域→アルテミスインターナショナル→レアジョブ→ビズリーチ(今ここ)。職種遍歴は業務系コンサル→エンジニア→海外事業→セールス→プロダクトマネージャ→経営企画(今ここ)