Ryoji TanakaJun 33 min read
One and Many Chairs (Semitransparent Design)

この作品は、ジョセフ・コスースの作品《1つと3つの椅子》(1965)を参照しています。実物の椅子と写真の椅子、そして辞書による椅子の定義を三つ並べて提示することで「椅子」という観念がどのように規定されているのかを問いかけるこの作品は、コンセプチュアル・アートの代表的作品と目されています。この作品に、デジタル・メディアとは切り離すことができない「変換(encode)」と「復号(decode)」という要素、さらにインターネット普及後の知のあり方の変容を示す好例といえるウィキペディアのテキストを取り入れることによって、作者は《1つと3つの椅子》の再構成を試みています。

椅子の左側にあるディスプレイに、その椅子をカメラで撮影した映像がリアルタイムで表示されています。ディスプレイの左にはさらに4台のディスプレイが設置され、各ディスプレイの正面にあるカメラがコンピュータを経由して隣のディスプレイに接続されています。カメラが撮影したそれぞれの映像は、画像変換アルゴリズムによって変換または復号という可逆操作を施された上でディスプレイに送られるため、会場の環境や映像に入り込む鑑賞者の存在などの不確定要素を取り込みながら、椅子のイメージのさまざまなヴァリエーションが提示されます。椅子の右側にはもう1台ディスプレイが設置され、英語版ウィキペディアの「Chair」の項目が更新履歴順に表示されています。

