2017年の欅坂46シングル企画概要(2)「思い出補正」

川を眺めていて思った。汚い水も綺麗な水も混ざり、やがて大河となり海へと注いでいく。 人生も辛いことや楽しいことを経験して時は無常にも進んでいく。改めて人生を川で例えることはできないだろうか。

人々の記憶の中の思い出はいつも美しく、振り返るとそれは事実よりもいつも美しくなっているのではないか。それをインターネット上では「思い出補正」というようだ。「思い出補正」によって人はどんな楽しいことも辛いことも振り返るとみんな今の自分を形成する上で、必要なことだったんだと思うことができる。少し話が逸れるが、かつて戦後日本の焼け野原から生まれた流行歌の女王、美空ひばりは「川の流れのように」を人生最後のシングル曲として歌った。

美空ひばり「川の流れのように」

秋元康作詞の「川の流れのように」を聴いていると、平成生まれの私からすれば、昭和という感じがする。そしてこの歌からは、美空ひばりのように人生波乱万丈であっても、最後は全ての出来事が自分の人生にとって必然であったと思いながら人が死んでいく美しさを感じることができる。この人生を道で例え、川のように流れ過ぎ去っていく日々を美しいと感じる感傷を今回、欅坂46が挑戦するテーマとして選んでみた。

では欅坂46が歌う「思い出補正」とはどのような歌にすべきだろうか。平成の「川の流れのように」を作るためには、時代設定や歌い手が背負っている時代背景を変える必要がある。例えば、来年にも今上天皇は退位され、新しい元号を日本は迎えることになるので「平成の終焉」が時代設定になり、時代背景は、バブル崩壊とともに始まった失われた20年を経てさらに先が見通せず混迷を極める政治・経済にすべきだ。

また、この平成の「川の流れのように」の歌い手は欅坂46であり主人公は若者である。日本の若者は失われた20年を青春時代として過ごし、さらにどうなるか分からない不透明な時代を迎えることになるが、これから経験するであろう全ての出来事が必然であり、つながっていたといつか思える日がくるという前向きな詞を書くべきだ。それは決して、AKB48の「RIVER」や「Beginner」のような攻撃的で若さで乗り越えようという歌ではなく、大らかに包み込んでくれるような詞が求められている。

最後にAppleの創業者であるSteve Jobsがスタンフォード大学で講演したときの言葉を引用すると、

Again, you can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backward. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something — your gut, destiny, life, karma, whatever. This approach has never let me down, and it has made all the difference in my life.
Video of Steve Jobs’ Commencement address on June 12, 2005.

この卒業講演でSteve Jobsが若者に伝えたかったことは、自分が人生において経験する、したすべての出来事は、点であり、点と点を先で結べば、辺になり、それが3つになると三角形になり、四角形、多角形となりやがて円へと近づくことではないか。私にはそう思えてならない。

つまり欅坂46が歌う平成の「川の流れのように」と呼ばれるであろう「思い出補正」は、先が見えない世の中でも全ての事に全力で取り組んで、死ぬ間際に生きていて良かったと思える人の一生をテーマにした歌にすべきである。