小型サンショウウオのこと

私は、2002年(平成14年)8月10日、十方山・細見谷で行われた「小型サンショウウオ観察会&調査」に参加した。そして、そこで初めて小型サンショウウオを見た。注:調査自体は、私の参加した10日とその次の11日の二日連続で行われた。

この時まで、サンショウウオといえば、オオサンショウウオのことしか知らなかった。西中国山地に小型サンショウウオというものがいて、十方山林道沿いの清流(細見谷川に流れ込む各支流)にある小石をちょっとはぐれば、すぐに見つかる存在だなどとは全く想像すらしていなかった。

紹介者、故・原哲之さんのこと

観察会&調査当日、私は妻と二人の孫を連れて参加した。だから調査というよりは、観察会に参加させていただくという程度の軽い気持だった。ところが、観察会の成果は、書籍『細見谷と十方山林道(2002年版)』の一部としてまとめられ、後の出版報告会で私たち夫婦にも一冊づつ無料で配布された。巻末の参加者名簿には、なんと私たち二人の名前まで載っている。

この時私を誘ってくださったのが、『細見谷と十方山林道(2002年版)』の編集者である故・原哲之さんだった。そして数年後、こんどは私が『細見谷と十方山林道(2006年版)』の編集者を務めることになった。その簡単な経緯については、本書「はじめに」で書いたとおりである。

十方山・細見谷の学術調査は、「森と水と土を考える会」などの環境NGOによって、この2002年に始まった。その成果はさっそく『細見谷と十方山林道(2002年版)』としてまとめられ、十方山・細見谷における初めての本格的な学術調査記録として高い評価を得ている。

私の『細見谷渓畔林と十方山林道』との関わりもこの時に始まった。私のこの本の内容は、『細見谷と十方山林道』2002年版および2006年版に負うところが大きい。私にとって、小型サンショウウオを初めて見たあの日は、決して忘れることのできない大切な一日となっている。

その他いくつかの出会い

私たちはこの観察会で、「廿日市・自然を考える会」の高木恭代・代表と網本えり子さんのお二人と同じ配車になった。この時が初対面のお二人には、その後彼女たちが主催する集会などに幾度もお誘いをいただいた。

またこの時、言葉を交わすこともなく過ごした人たちの中で、後にあるキッカケからメール交換をするようになった方がいる。小型サンショウウオを介して、これまた大切な出会いであった。(6–1. 「落葉広葉樹林の代表-ブナの森」参照)。

西中国山地の小型サンショウウオ

西中国山地では、3種類の小型サンショウウオ(ブチサンショウウオ、ヒダサンショウウオ、ハコネサンショウウオ)の幼生が混生しているとされる。

それぞれのおおまかな分布は、ブチサンショウウオ:近畿、中国、四国、九州。ヒダサンショウウオ:中部、近畿、中国。ハコネサンショウウオ:ほぼ本州全般。そして、ヒダサンショウウオとハコネサンショウウオは、西中国山地が分布の最西端となっている。

この時の調査(10日と11日)では、小型サンショウウオの合計個体数39のうち、ハコネサンショウウオが圧倒的に多くて9割近く(個体数34)を占め、ヒダサンショウウオ1割強(同4)、ブチサンショウウオは不明1(ヒダサンショウウオと区別つかず)となっている。その他、ゴギ4、タゴガエル1である。(『細見谷と十方山林道(2002年版)』pp.33–40)

採集場所として、報告書は「(細見谷川に流れ込む)沢と林道の境界から2m以内で多数採集されたことが注目されます」(同上P.34)としている。細見谷川本流で小型サンショウウオが採集できたのは一箇所で、それが私たちの観察ポイント(9号橋付近)であった。ただし、そこは標高約960mあり、細見谷川最源流部ともいうべき場所となっている。

十方山林道の舗装化は、彼らの生態に対してどのような影響を与えるのであろうか。

環境保全調査検討委員会での議論

私は、環境保全調査検討委員会を一度だけ傍聴したことがある。2005年7月10日のことである。この手の会合はほとんどすべて平日開催となっている。しかし、この時(第7回)だけはなぜか日曜日に開かれた。理由は分からない。何はともあれ、日曜日開催は普通の勤め人にとってはありがたい。

当日の委員会の前半部では、小型サンショウウオ類についての議題が続いた。その中の一部をメモから書き起こしてみよう。

機構側の提出した冠山(吉和冠山のことであろう)における観察データによれば、ハコネサンショウウオの産卵場所は、標高1050~1200m付近で、山から滲み出す湧水地帯(水温6~8度)にあるという。

ならば、冠山近くにある細見谷のハコネサンショウウオも、本来の生息場所とされる細見谷川本流付近の支流(十方山林道の標高約960m~800m程度)から、産卵場所までさかのぼる時期があると考えるのが自然である。

十方山林道は、渓畔林部分では細見谷川右岸に沿って付けられている。そして、細見谷川右岸には、五里山系(京ツカ山1129.6m~焼杉山1225.1m)から数多くの谷(沢)が落ち込んでいる。これらの谷(沢)をさかのぼって産卵場所をめざすのだろう。もちろん、左岸に流れ込む十方山の谷(沢)でも同様の現象がみられるはずである。

しかしながら、機構側では、細見谷におけるハコネサンショウウオの産卵場所は特定できていないという。また、この時の検討委員会では、通常の生息場所は(支流の沢ではなく)本流であるという前提で話が進められたように思うが、産卵のため、林道を横断して支流の沢に移動するという事実も確認できていないらしい。

小型サンショウウオに関しては、既存未舗装の林道の影響評価は全く手付かずの状態といってよいようである。このように、現状に関する基礎データがないにもかかわらず、それに手を加えた(舗装化した)場合の影響について評価することなどできようはずがない。(3–4–5. 「環境保全フォローアップ調査計画」参照)。


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