ライフストーリーは面白い

金成隆一『ルポ トランプ王国』を読んで思い出したのは、今は同志社大学グローバルスタディーズ研究科におられる内藤正典先生の『ヨーロッパとイスラーム』(こちらも岩波新書)。

どちらも、いわば、「忘れられた人々」のようなところに焦点を当てて、そのライフヒストリーを聞いて行くというもの。もちろん、それだけではなく、現状の分析などもあります。

この本も面白かった。

ヨーロッパに行っても、今となっては当然ですが、「ヨーロッパ」の人だけがヨーロッパにいるのではありません。この日本にいたら、根本の感覚とは全く異なるものを、ヨーロッパでは突きつけられますし、そのことは、私のヨーロッパの原初体験でもありました。

少し話は違いますが、ロンドンに住んでいた時の隣の家族は、アルメニア人だと言っていました。一体どういう経験を経て、西ロンドンの隅っこに住むようになったのか、文字通り隣人であった時には、さほど興味もなく、しっかり聞くこともなかったのですが(そもそもアルメニアという国がどこにあったのか知らなかったです)、たまたま引っ越してきた先が、イギリスであり、ロンドンであった、ということは当然ですが、考えられません。

ちなみに、今では「アルメニア」という国はちゃんと存在していますが、当時はまだソ連邦の一部でしたので、非常に歴史ある国(2000年以上!)ではありますが、独立国とはなっていませんでした。

この家族の、親世代の話なんかを聞くことができれば、ものすごく興味深いものになっていたかもしれません。

また、この家の大家はインド人でした(入居してしばらくは、家中がカレーの匂いで充満していたのを今でも思い出します)。彼らは、比較的成功している家族でした。彼らも、どんな人生を送ってきていたのか、日本人もかなり多くの人がイギリス、ロンドンに行ったり住んだりしていますが、おそらくかなり高い確率で出会うであろう、英国旧植民地からの移民のことをどれくらい知っているのか、おそらくほとんどないのではないかと思います(そういう本もあるのかも。知ってたら教えて欲しいです)。

当時は、「イラン・イラク戦争」なんてのもありました。この時に、着の身着のまま、国外に脱出し、イギリスに亡命したなんて人もいました。

亡命といえば、難民、難民といえばシリア。以前訪れた時に、すれ違った人々も、当然ながらそれぞれの人生があるはずです。ある人は平凡かもしれないですし、ある人は波乱万丈の生活だったかもしれません。そこに眼差しを当てて、文章におこしてゆく作業は、やっぱり面白いはずです。そんな本も、もっと読んで見たいものです。

事実は小説よりも奇なり、なのですから。

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