The DAO 事件から1年 — 熱狂する ICO バブルと、これからの資金調達手法

Akinori Machino
Jun 17, 2017 · 9 min read
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The DAO 当時の Web ページ

ちょうど1年前の今日(2016年6月17日)、後に「The DAO 事件」と呼ばれる大きな出来事がありました。The DAO というプロジェクトが当時の価値にして約65億円を盗まれ、結果 Ethereum というブロックチェーンプラットフォームの分裂にまで至りました。暗号通貨/ブロックチェーン業界全体に波紋を広げたため「第2の Mt.Gox 事件」とも呼ばれます。

この記事は、「暗号通貨」や「ブロックチェーン」の概念は知っており、最近「ICO」という言葉をよく聞くけれど、それが何なのかはよく分かっていないという方を対象に、主に資金調達手法の観点から、一体今何が起こっているのかを、なるべく平易にご紹介したいと思います。

Ethereum とは

Bitcoin がブロックチェーン上に BTC の送金履歴を記録するだけである一方、Ethereum プラットフォームでは、開発者がチェーン上に任意のプログラムを書き込むことができます。ブロックチェーン上に記述されるプログラムは「スマートコントラクト」と呼ばれ、それによって実現される分散アプリケーションは Ðapps と呼ばれます。

DAO とは

Bitcoin のような仮想通貨が、ブロックチェーン技術を使うことによって特定の国や特定の管理主体に属さない「貨幣」を実現したように、DAO はブロックチェーンを使って自律分散的な「組織」を実現するわけです。

The DAO とは

仕組みとしては、The DAO が発行する独自トークン (DAO Token) を多数の投資家が Ether で購入することでファンドを組成し、そこから個別のプロジェクトに投資していきます。また、保有する DAO Token に応じて、投資先の選定に対する議決権を持てるような設計になっていました。

The DAO 事件とは

しかし 6月17日、The DAO のプログラム(スマートコントラクト)のバグ(脆弱性)を突かれ、集まったファンド資金の3分の1以上を盗み取られるという事件が起こりました。論争の末、これを「無かったこと」にするために Ethereum のブロックチェーンを強制的に分岐(ハードフォーク)するという決定がなされ、Ethereum は Ethereum (ETH) と Ethereum Classic (ETC) に分裂するという事態になりました。

ICO とは

独自通貨としてトークンを発行するプロジェクトが多いため、多くの人から ICO と呼ばれていますが、私は ITO (Initial Token Offering) という言葉を使った方が良いかなと思っています。例えば議決権を表す DAO Token のように、トークンの機能は「通貨」に限られるものではありません。

停滞期を経て ICO バブルへ

とはいえ The DAO 事件では、Ethereum 自体に欠陥があった訳ではなく、DAO(自律分散型組織)というアイデアに欠陥があった訳でもありません。しばらくの停滞期間はありましたが、今ではむしろバブルの様相を呈しています。現在の Ether (ETH) の価格は、The DAO 事件での暴落前から比べても 10倍以上になっており、何か ICO があるとなれば、詐欺のようなプロジェクトに対しても資金が集まっているのが現状です。

中でも、Bancor というプロジェクトの ICO がつい先日ありましたが、このプロジェクトは1年前の The DAO を超える熱狂ぶりとなり、The DAO が28日かけて調達した150億円を、たった3時間で調達し、クラウドファンディング調達額の歴史を更に塗り替えることになりました。

バブルを越えた先は

私はその後、トークンの機能は、通貨 (Currency) から、そのプロジェクトの所有権 (Ownership) を表すものにシフトしていくものと考えています。株式会社がその所有権を表す株式を発行して資金を集めるように、DAO として新規プロジェクトを立ち上げ、その所有権(議決権)を表すトークンを発行して資金調達 (ICO) をする形です。

ICO で始めるこれからの DAO スタートアップ

逆を言えば、玉石混交の DAO スタートアップが生まれることになるので、投資側から見れば、アーリーステージのベンチャー投資と同じようにリスクの高いものになります。既存の VC のように目利きをする役割も必要になり、新しくエコシステムが生まれていくのではないでしょうか。

既存の枠組みとの繋ぎ込み

例えば、どこかのタイミングで DAO を株式会社化する必要が出たときに、DAO のトークンを株式に転換できる権利を含んだ “Convertible Token” のような仕組みも必要そうです。株式のような証券との転換可能となれば、既存の法規制の対象になるはずなので、今後うまい法整備が実現できると良いなと思っています。


追記(2017年8月10日)

まず、初期ステージのスタートアップにおいて、ICO による資金調達総額が、VC による調達額を既に上回っていることが話題になりました。実際私も、「VC からではなく ICO での資金調達を考えている」という話を周りから聞くことが多くなってきています。

そうした中、SEC(米国証券取引委員会)から、The DAO のトークンは有価証券に該当するとの発表がありました。全てのトークンが有価証券に当たる訳ではないですが、証券の特徴を持つトークンは、発行体が通常の会社だろうが自律分散型組織だろうが規制にかかるという見解です。

そしてついに日本にも、ICO ブームの流れがやってきました。日本のテックビューロ社が COMSA という ICO プラットフォームを発表し、VC が直接トークンを購入するという新しい時代がやってきています。今後、株式の持つ機能の中で有価証券に当たらない部分をトークン化していくことで、「株式のアンバンドル化」が進んでいくのかもしれません。

しかし心配なことも多々あります。出資者にプロジェクトの所有権を与えない現状のスキームだと、これまでグローバルな ICO で起きてきたように、詐欺プロジェクトが横行する可能性があると感じています。有価証券に該当することを避けるために内在的価値のないもののトークン化が進み、それに対して過度な資金が集まってしまうことは、いずれ弾けるバブルを生み出してしまうように思うのです。

現状に警鐘を鳴らしつつ、The DAO のようなトークンも新しい枠組みで活用できるような未来に期待をしています。

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