佐俣 アンリ
2 min readJul 3, 2016

「心安らかに経営する」ということ

ANRIの投資先も40社あまりになり、ANRI創業前の会社から数えると50社弱の会社を創業から関わらせてもらっている事になります。

今、創業期の投資家と話していて考えるのは彼らが「心安からかに経営する」ために何をすればよいかという一点に尽きます。

起業家にはとにかくプロダクト、そして事業に向かっていてほしい。ただ、全ての起業家は人間なのでそれぞれのストーリーを抱えています。妻がいる、子どもがいる、親を支える必要がある、家族に大病がある、借金がある、など。起業家が事業を立ち上げるときにストレスは想像を絶します。僕自身もゼロからベンチャーキャピタルファンドを立ち上げている最中は、今思うと正気ではない瞬間がありました。その時期に、なるべく事業以外にストレスが掛かる要因を無くしたい。

創業期の投資家と話す時は、なるべく彼らの抱えるストーリーを共有してもらい、何があれば「心安からかに経営する」ことができるかを話しあうようにしています。特に学生でなく、家族を抱える年令になった起業家はそこに重点を起きます。その結果短期的には非合理的に見えるような金額の投資や、相場より高い役員報酬にしてのスタートを切ることも多いです。

これは別に、僕のファンドが甘い条件だと言っているわけではなく、むしろ非常に厳しい条件を起業家に突きつけていることを認識しています。つまり、起業家の失敗の要因、逃げたくなる場所を徹底的に除く努力をする代わりに一心不乱に正面から事業に向き合ってほしいとリクエストしているからに他なりません。

事を成し遂げるのは長く、険しい道です。1–2年でできることはたかがしれていて、再現を尽くしたとしても社会にインパクトを与える活動は5年は戦い続ける必要があります。その5年を経て、自らがやっと入り口に正しい立ち位置に経ったことに気づく起業家も多くいます。

社会へのコンプレックスや恨みをエネルギーに戦う起業家がいることは否定しませんが、僕自身は大きく難しい事を成し遂げるために、なるべく心安らかに経営することを支援していきたいと思っています。

「心安らかに経営する」ことは楽をすることではなく、志高い起業家にとって大きなことを成し遂げるために必要な重い責任という認識を新たにしています。