パレスチナへの旅2014

2014年6/13。

満月の夜にイスラエルのベングリオン空港に到着した僕は、翌日からパレスチナで開催される’MUSIC DAYS FESTIVAL2014'に出演するために、主催者が用意してくれたタクシーでまっすぐ会場となるラマッラーへ向かった。

車中エルサレムから見上げた満月

折しも、ワールドカップ2014が開幕したばかり。人なつこい笑顔のドライバーは大音量でラジオの中継を聴きながら、’信じられるかい?あのスペインが1-5でオランダにボロ負けさ。時代は移り変わってるよ。’と興奮気味に話す中、僕たちはある一つのニュースを耳にすることとなる。

~パレスチナのヘブロンでイスラエル人少年三人が何者かによって誘拐され、イスラエル軍はヘブロンを封鎖、全力を挙げて犯人捜索にあたっている~

今後大規模なガザ空爆に発展するこの事件が、この時点では今後どう発展していくかも全くわからないまま、僕は何となく不安な気持ちにおそわれながらも宿となるラマッラー郊外のエバンゲリック・ゲストハウスに到着したのだった。

翌日6/14、フェスティバルを主催する音楽学校Al Kamandjati(アルカマンジャーティ)に朝一で到着した僕は、一緒にライブを行うことになっているダラブッカ(中近東のパーカッション)奏者イブラヒムと一年ぶりの再会を喜び合った。

去年も避難民キャンプを回った僕らは、同じ打楽器奏者ということもあり、すでに固い絆と呼べるべきものが出来上がっていたのだ。

ダラブッカのマスター、イブラヒムと

ライブは翌々日6/16。二日間たっぷりリハーサルをして盛大なコンサートにしようと二人で打ち合わせをしていた矢先、ある女性スタッフが僕らのスタジオをノックした。

’東エルサレムでパレスチナ少年が報復行為にあい、殺害された。今日は街中が喪に服す。明後日のコンサートを開催すべきか今話し合っているところよ。’

こう告げる彼女の声は少し震え、忙しそうにスタジオを後にした。

その後も僕はイブラヒムと話し合いを続けた。開催が危ぶまれているにしろ、僕らはしっかり準備をするしかない。そう決意した僕らは、アラブの子守唄のような伝統唄’Hala lala lia(ハラ・ララ・リア)’を含む演目をたっぷり二日間練習し、本番に備えたのだった。

当日はギリギリまでスタッフ間での話し合いが続いた。

その後、街中は少し落ち着いた状態を取り戻しつつあることと、コンサートを楽しみにしている聴衆がたくさんいるとういう理由で、野外ステージからAl Kamandjatiのホールへと会場を移し、なんとかコンサートが開催されることとなった。

Al Kamandjati(アルカマンジャーティ)ホール

午後6時。

会場となるホールにつくと、すでにたくさんの方たちがつめかけてきていた。地元の子供たち、ドイツ人、アメリカ人、そして嬉しいことに前日に挨拶に伺った日本大使館の関係者も大勢見に来てくれていた。

そして、司会の女性スタッフの’このような状況ですが、今日は体いっぱいに音楽を楽しみましょう’という挨拶の時点から、僕は最前列に座っているある一人のパレスチナ人少女の伏し目がちで物憂げな表情が気になり始めていた。

’日本から来た僕は、パレスチナの地で、しかもこのような状況下で、いったい何ができるのか?’

演奏前に自問自答することは、演奏者として決してあってはならないと思いながらも、僕はぐるぐると考え続けた。そして、この中で僕が唯一できることは、せめてこの会場にいる人々を笑顔にすることだと、自分自身に言い聞かせ、オリジナル曲や日本の民謡などから演奏し始めた。

そして、最後に二日間イブラヒムとたっぷりリハーサルを重ねたアラブの唄’Hala lala lia(ハラ・ララ・リア)’を演奏し終えると、なんと僕が気になっていた最前列の少女が満面の笑みを見せてくれたのである。

彼女に笑顔が戻ったその瞬間

丘陵にオリーブの段々畑が広がるパレスチナは景色が本当に素晴らしく、平常時は人々の笑顔が絶えない。

この笑顔が美しい人々の住む土地を、誰が犯す権利を持つというのか?そして、彼らの心からの笑顔が絶えないように、僕らは何ができるのか?

丘の町ラマッラー
Al Kamandjati男性スタッフと
イブラヒムの素敵なお母さんと

僕は繋がりの中から感じる’自由’を何よりも喜びとする。人と人とが繋がる輪を綺麗に保つこと、僕はそこにおそらく’音楽のチカラ’を見出しているのだろう。

あるひとつの場所を大切に思うことは、人を恋する気持ちに似ている。強烈に記憶に残る風景や香り、縮まらない距離感、その場所を守りたいという渇望、様々な思いが混ざり合い、切ないという言葉でしか表現しきれなくなる。

今後も僕はおそらくパレスチナとの交流を続けていくだろう。

停戦後のガザ
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