米国ではなく日本で生活する

少し前に、日本に帰ろうと思った。もう合計で17年程米国に住んでいたことになる。成人してからは三年間東京に住んでいたが、その三年間がとても楽しかった。そして何より、米国にうんざりした。近年顕著になっているのか、私がそういったことに敏感になっているのか分からないが、米国はどうしてもまだまだ白人至上主義が根強い。私は白人ではないので、生き辛い。今回は、日本に帰ろうと思ったきっかけなどを書こうと思う。

米国は自由。米国は人種のるつぼ。米国は成果主義。米国と聞くとこんなことを想像するかもしれない。事実な部分もあるし、実際にそうだなぁと実感することも過去に沢山あった。基本的に何をしていても文句を言われることもないし、学校や職場には色々な人種や文化の人たちがいるし、仕事ができる人はどんどん出世する。しかし、これらは必ずしも肯定的な事柄だとは限らない。全ての事柄に背景があるように、これらの事柄にも背景がある。

何をしていても文句を言われない。これだけ聞くと、誰が何をしていてもそれを尊重してくれる人たちから成る社会を想像するが、それはとんでもない間違いだ。何をしていても文句を言わないのは、そもそもまずどうでも良いからなのだ。あなたのことなど、そもそも存在も認識していない。日本の文化で育つと、例え知らない人でも気にかけるものである。スーパーで自分が何かを見ていてその後ろを誰かが通ろうものなら、少し前に避けて通りやすい様に空間を空ける。これは、私にとっては当たり前のことだった。なぜなら、通りにくそうなところを通ろうとしているなら、避けて通れるようにするのは当たり前だと思っていたからだ。例えそれが知らない人でも。しかし、米国では当たり前とは限らない。少し避けてくれれば通れるところでも避けない。”excuse me”と言って初めて私の存在を認識する。だけどもそれで避けるとは限らない。なぜならそこで初めて私の存在を認識しただけで、なぜ”excuse me”と言われたのかは分からないからだ 。米国とはこのレベルなのだ。他人のことを気にする能力がない。勿論全ての人がこうではない。しかし、信じられないほどの数の人がこのレベルなのだ。私は同じ人間だと思っているから、これは教育の差なのだと思うが、仮にこれが教育の差ならどういう教育を受けたらこう育つのか想像も難しい。つまり、誰が何をしていようとそれを尊重しているが故に文句を言わないのではない。そもそも認識していないのだ。

でも認識したらその後はやはり他人のすることを尊重して文句言わないのでしょう?そう思うかもしれないが、とんでもない。米国に未だに根強く存在する差別に関しては、もう語る必要もないだろうが、例えば会社での競争。相手が自分の競争相手だと認識すると、あらゆる手で自分がいかにより優れているか主張したり、蹴落とそうとしたり、抜け駆けをしようとしたり、当たり前のようにする。これに関しては、私は資本主義では当然だと思うし別に構わないのだけど、米国の人たちは、日本で教育を受けた私にはあまりにモラルが低くて考慮もしないような方法を当たり前の様に利用します。

近年だと、Martin Shkreli氏が良い例ではないだろうか。彼は、自分の会社を作り特定の薬品 (ダラプリム) の製造のライセンスを取得し、その薬品の値段を56倍にして売り出した。彼の戦略はこうだった。特許の切れた薬品を競争相手のいない状況下で独占販売できれば、新しく薬品を開発するお金の必要がない上に大儲けできるはず。彼はダラプリムの製造のライセンスをImpax Laboratoriesから買収し、更にImpax Laboratoriesがダラプリムを主な薬局で販売しないという契約も結んだ。その結果、ダラプリムが必要だった人たちは、56倍に釣り上げられた価格でその薬品を買うか薬を飲まないかの選択に迫られた。ちなみに、ここでいう56倍とは、1錠あたり$13.5だった値段が$750になったということでした。更に追加すると、米国とて$13だったものが$750になったらとても高いです。

資本主義における会社としては、とても賢く優れた戦略です。しかし、人の健康よりもお金を優先すると儲かるなと考えるだけでなく、実際に行動してしまう。これこそが、米国の人が持つモラルなのです。勿論、職場で皆が皆Martin Shkreli氏と競争する訳ではありませんし、全員が全員こういう人ではありません。しかし日本でこういう人が何人いるでしょうか?どちらが良い悪いという話ではなく、私はこんなモラルの人たちと競争するのはとても疲れます。

米国に長年住んで、働いて、気づいたのは、自分の道徳と似た道徳を持った集団に属するのが一番安心するということです。いくらソフトウェアエンジニアが優遇されようが、待遇が良かろうが、お金のために人を殺しても良いと思っている人と時間を共に過ごすのはとても疲れます。日本は日本で色々な問題を抱えていますが、少なくとも人は殺しません。それは非常に大切なことです。

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