Sanctifly
空港周辺にある施設、使ったことがあまりない。どうやら、充実したひと時を過ごせるものがあるようだ。
ホテルをはじめ、フィットネスジム、プール、スパなど施設は様々にある。ただ、距離的な問題ではないが、アクセスが難しかったりする。
Sanctify社はその点に着目し、アプリで予約をすれば、容易に施設を利用できるサービスを展開している。ユーザーがフライトの日程をアプリで入力すると、そのフライト前後(あるいはフライトの間)に利用可能な施設の情報が表示される。その圏内は5kmにわたる。ホテルも高級ホテル( Hilton、Marriot、Crown Plaza、Sofitel、Radisson、Langham)が利用可能。
かなりシンプルなサービスだ。また、提供範囲も「空港から5km圏内にある施設」と小さくしている点も良い。
Keyword: 予約システム
Shep
TMC(Travel Management Company: 旅行管理会社)向けのサービス、と知った時はニッチなものだと感じたが、TMCはそんなに少ないものでもない。
日本だと「旅行業務取扱管理者」の資格を有する者がいれば、旅行代理店を開くのはそんなに難しくない。日本旅行業協会の調べでは、2017年は9,551の業者が存在した。
旅行会社は顧客のフライトやホテルなどを手配し、その手数料を収益とするモデルだ。それゆえに、手配の時間が短ければ短いほど、一人の顧客にかける時間は減り、回転率は高まる。
前置きが長くなったが、Shep社のサービスはフライトとホテルの予約情報をトラッキングするもので、トラッキング先はコンシューマーサイトを対象としている。
Shep社のサービスの画期的な点は、コンシューマーサイトの不透明な部分、あるいはユーザーのコントロールできない部分に切り込み、予約情報をトラッキングすることでデータを収集し、自社サービスのユーザーへ便利な形に成形し直して提供している点にある。
Keyword: 予約システム
Shippo
副業が活発になる時代が来れば、インターネットを使用して小売りを営む人は、配達プロセスの課題に直面するはずだ。
商流と物流はビジネスの基本だが、ビジネスを考える時、利益を獲得する商流に夢中になる人は多いが、物流はおざなりにされることがある。物流を攻略すれば、そのビジネスはかなりスマートなものに変わるのに。
その点に着目したスタートアップは少なくはなく、Shippo社もその一つ。Shippo社は、USPS(UPSではない)やDHLなどの物流会社(キャリア)を利用した発送手続きをシンプルにし、かつユーザーのコストダウンを実現した。
サービスはWebサービスやAPIから利用でき、ユーザーは発送したい荷物を登録し、キャリアを選定、発送票を作成後、キャリアに預ける。ユーザーは発送した荷物をWebサービス(もしくはAPIを使用して開発したオウンドシステム)上で一元管理でき、トラッキングや発送メールが送られるよう発送票もカスタマイズできる。
このサービスは、メルカリのアメリカ進出にも利用されている。上述したように、インターネット小売りをしている個人もそうだが、そういった人たち向けに物流システムを構築するニーズもありそうだ。
Keyword: 物流管理
URL: https://goshippo.com
Situm
Googleが使えない国に行くと、Google Mapのありがたさが分かる。GPSを使用した地図サービスは、今や現代人の必需品ではないだろうか。
イベント会場や大きな建物の中は迷いやすい。そんな課題を解決するのが、Situm社によるインドアの位置取得サービス。
ユーザーは登録後、サービスのダッシュボードから取得したい建物を選択、フロア図を設定し、アプリを使用して建物内部を測定する。ここまでが建物を提供する側に必要な作業だ。建物を利用する側は、同アプリから現在地の取得や、目的地までの案内サービスを利用できる。
APIが公開されており、建物の提供側は同社のサービスをアプリに組み込める。
こういったサービスは、イベント会場にあると便利だと思う。
Keyword: GPS
URL: https://situm.es/en
SkyHi
航空券の月額制は初めて知った。SkyHi社のサービスはユニークだ。
月額199ドルでSkyHiのクラブに入会すると、1000マイル35ドルで航空券が手に入る。2000マイルで75ドル、3000マイルでいつでも120ドルだ。1ヶ月に利用できる航路は5つと限りがあり、ロケーションも北アメリカとヨーロッパと広範囲ではない。予約は10日間以内のフライトが対象となる。
日本も日本人による国内旅行が活況だ。SkyHi社のサービスを日本に取り込めば、なかなか面白い。
Keyword: サブスクリプション
URL: https://flyskyhi.com
Sleepbox
Sleepbox社の提供するサービスは、日本で定着化したカプセルホテルと一見して変わらない。日本のカプセルホテルは外国人にとっては斬新なものだったが、それが少しスタイリッシュになった感じか。
Sleepbox Hotelは空港に配置されており、利用の予約はアプリから可能だ。宿泊時には、スマホなど電化製品の充電、Wifi接続、作業スペースのデスクが設けられている。映画や音楽も視聴でき、Bluetoothスピーカーや照明などにもこだわり、ラグジュアリーに仕上げている。
日本に逆輸入されているものがある中で、カプセルホテルもその対象になるのではないか。逆輸入の仕組みは、海外からの輸入というだけで付加価値がある。
Keyword: ホテル
URL: https://sleepbox.com
Slickspaces
民泊の社会文化は、様々なビジネスを生み出した。
Slickspace社のサービスは、Airbnbのように民泊を提供したいユーザー向けのものだ。ユーザーが物件を登録すると、管理スケジュールを設定でき、Slickspaceシステムに追加される。さらにユーザーは自らの物件にSlickspace社製のドアロックやインターコムを備え付けることで、システムによる物件管理が実現できる。物件の利用者がチェックイン/アウト時に通知を受け取ることも可能。
日本では民泊より、自宅のセキュリティのために統合化されたシステムを導入することが現実的だろう。セキュリティ会社の製品を導入している家屋がすでにあるように、例えば貧富の差が激しくなれば、社会の安全性が脅かされるため、セキュリティの需要は高まる(地域にもよるが)。ITで統合化されたセキュリティであれば、ユーザーはアプリを通して確認できるため、安心感も提供できるはずだ。
Keyword: 物件管理
Stay22
ライブやカンファレンスなどのイベントは体力を使うものだ。遠出の場合、日帰りはうんざりする。近くに宿泊施設があれば、その外出は小旅行に変わり、総じて良いものになる。
Stay22社は、イベント開催者向けのサービスを提供している。ユーザーは、イベント開催地の周囲にあるホテルや民泊物件の情報を地図化できる。具体的には、開催するイベントを登録すると、開催場所の地図が表示され、その周囲に宿泊施設が金額と共に表示される。その地図はHTMLコードとしてコピーでき、自らのWebサイトに貼付したり、SNSから宣伝できる(参考までにデモページ)。
サービスの初期費用はなく、Stay22社は宿泊費からコミッションを得ている。
Stay22社のサービスはシンプルな地図作成サービスなのだが、ターゲット層の選定が冴えていた。絞ったターゲッティングによる成功例の一つだと思う。
Keyword: 地図作成
TravelPerk
ビジネスのフライト予約サービスは多い。TP社もその一つだが、ExpediaやSkyscanner、Booking.comといったコンシューマーサイトの情報を同社のサービス内で一元化し、オンデマンドでチケット手配する。
TP社はフライトに加え、ホテル予約も対応している。ビジネス向けのため、ある予約情報に出張の名目を設定し、管理できる点も使用性が高い。
基本的なサービスは無料で利用できる。アドバイザーが付いたり、月毎の支払い対応が可能なのが月額10ユーロのプレミアム。
コンシューマーサイトのコンテンツを一元化するモデルは、便利なサイトをより便利にするサービスで、コンシューマーサイト頼りの部分が大きいが、短期的な成長力がうかがえる。
Keyword: チケットIT
VoyHoy
世界中にビジネスを展開するのも一つの手であり、局所に展開するのも一つの手。どちらが優れているかは判断できず、成功している方に軍配が上がる。
VoyHoy社は、旅行者向けにバスやフライト、電車、フェリー、ライドシェアの予約サービスを展開している。その展開先は、ラテンアメリカに限っている。
局所的な普及を狙うモデルは、小さなビジネスであるほど成功確率が高いはずだ。
Keyword: 交通機関予約サービス
これで終わりです。
長かったです。とても長かった。
2019年のスタートアップ紹介シリーズを仕上げるのに、30社以上はリサーチしましたので、時間がかなりかかりました。
その全てを参考にするのは得策ではないですが、自分の考えているビジネスアイデアに何かしらのエッセンスを加えることができるのではないかと思っています。
他業種のサービスやモデルを違う形で自分の業種に取り入れることは、普通にあることです。
予約サービスに見られる、少ない空席率を達成することで上げられる利益率は、場所(スペース)を限定することで付加価値を高めるサービスの参考になるのではないでしょうか。
バイオテックや施設提供型サービスは、スモールビジネスには手が出しづらいものです。スモールビジネスはインターネットをベースにしている方が多いと思います。ですので、それらのスタートアップが何を提供しているのか、(真似するのが難しい)具体的なサービスの中身ではなく、ユーザーが感覚として得られる感情部分に着目すると、そのアイデアも良いものになりそうです。
ほとんどのスタートアップに見られたサブスクリプションモデルが、やはり流行りですよね。
上述した空席率に似たような話ですが、サブスクリプションモデルはユーザーの奪い合いですので、どのポイントを強調してユーザーを引き留めるかが重要ですよね。
以上。