妖精は人間に化ける

SALLY
10 min readAug 27, 2016

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「トロール」と聞けば、あなたは何を思い浮かべるだろうか?

私が真っ先に思い浮かんだのは、北欧に伝わる妖精のトロールだ。

http://hyggelig-news.com/2015/02/11/13883/

ご覧の通り、『アナと雪の女王』においては、可愛らしい風貌のトロールが出てきた。

しかし、実際伝説で伝わるトロールは、こんなに可愛らしいものではない。

北欧に伝わる本来のトロールの姿は「巨大で醜く毛深い、性悪の巨人」というものらしい。

地域によって様々な伝承がある。あるところでは「人食い巨人」として伝えられてもいる。

しかし、どの地域のトロールにも共通して言えるのは、彼らには2つの性格があるということだ。

「気に入った家には富と幸福を授ける」そして「気に入らない家には悪意を持って畑などを荒らす」

興味深い性格だと思う。そしてこの性格に、なぜか親近感を覚えた。

それは、彼らの2つの性格が人間に酷似しているからだ。

そう、トロールにはもう1つの意味がある。

それを、1つの例をあげて話そうと思う。

http://screenrant.com/ghostbusters-reboot-trailer-female-characters-response/

「Ghost Busters 」はご存知だろう

2016年、かつて主役たちが男性だった同映画を、主役たちを女性に変えリメイクしたことで、今世間を賑わせているあの映画だ。

そこにある1人の女優が出演している。レスリー・ジョーンズだ。

彼女は黒人女性である。

それを快く思わない人間が、彼女の見た目、主に人種について差別的立場をとっているのだ。

そしてそれはエスカレートし、先日、彼女自身のウェブサイトがハッキングされ、迫害を受けた。

New York Timesより、その被害の全容を引用する。

「The hackers inserted a picture of the gorilla Harambe on the site,

and exposed what appeared to be explicit photos of the actress,

along with pictures of her driver’s license and a passport,

and images of her with stars like Rihanna, Kanye West and Kim Kardashian West.」

彼女の免許証、パスポートなど個人情報がハッカーにより晒された。さらに友人たちと撮った写真と、加えてサイトの写真。ハッカーは後者2つの写真の彼女の顔に、露骨にゴリラの写真を合成させた。

とある。結局サイトはこの件を受けて閉鎖された。

実はこの迫害、今に始まった事ではない。

彼女は先月から、俗に言うアンチと、自身に関する差別発言についてオンラインで戦っていたのだ。いくつも差別的な画像の類が、屈辱的かつ卑猥な言葉が彼女に送られてきた。

その結果、彼女はツイッターを去ってしまった。

オンライン上、SNSなどにおいて過激なアンチ活動を行えば炎上する。

俗に言うこのアンチの人々。

実は英語では 「TROLL」

そう、「トロール」と呼ばれているのだ。

http://www.chud.com/24094/chud-list-the-worst-cgi-in-history-day-14/

伝説で伝わるトロールの特徴を思い出して欲しい。

「気に入った家には富と幸福を授ける」そして

「気に入らない家には悪意を持って畑などを荒らす」だ。

これは彼らオンライン上での「トロール」にも当てはまると思う。

特に後者だ。

「気に入らない家には悪意を持って畑などを荒らす」というのは

「気に入らない人物は悪意を持っていじめる」と置き換えられるのではないだろうか。

しかもやり方は狡猾である。

オンライン上であることをいいことに、言いたい放題、やりたい放題しているのだ。

ネット掲示板などならなおさらである。匿名であれば尻尾を掴まれることもない。

これはいま日本においても、由々しき問題であろう。

“These acts against Leslie Jones are sickening,”

「このような行動は、レスリーをとことん不快にさせる。」

ミュージシャンのクエストラブは、レスリーの件に対しツイッターにこう投稿した。

“It’s racist & sexist. It’s disgusting. This is hate crimes. This ain’t ‘kids joshing round.’ ”

「(レスリーに差別的な発言などをした人は)人種差別及び性差別主義者だ。実に不快だ。このような行為は忌むべき犯罪であり、子供同士のような悪口とは全く重みが違う。」

全くその通りだと思う。

子供同士の悪口こそ、今日ではいじめに発展するとして大きな問題であるのに、それにさらに拍車をかけたようなやり方は、避難されて当然だ。

結局、今回のレスリーに対するネットいじめの原因は、

“Serious anti-black woman problem in the U.S.”

アメリカが抱える黒人女性への偏見

であると、専門家は分析している。

アメリカにおいて、黒人差別は今でも、社会的な枷になっていることは間違いない。

しかし、「差別は悪いことだ」という感覚は一般的である。

差別をしてはいけない、とわかっているのに、いじめの対象に黒人たちが選ばれてしまうのは何故なのだろうか。

専門家はそれについてこう述べている。

“Even the slightest perceived infraction leads people to get bullied.”

「どんなに常識的に「間違っている」と認知されている違反行為でも、それがいじめの原因になってしまうことはある。」

いわば、「これをすれば相手は傷つくからやめなければならない」「これは悪いことだ」とわかっていても、相手を陥れて優越感に浸る為に、わざといじめを行ってしまう可能性があるということだ。

そのせいでレスリーは、ツイッターを去ることになってしまったのだ。

しかし、この時期にちょうどリオオリンピックが開催した。

これを機に、彼女はツイッターに戻ってきた。

http://jisin.jp/serial/hollywood/24990

「私はオリンピックを愛している」と言った彼女は、

その言葉の通りオリンピックを存分に楽しみ、その様子をツイッターに随時アップした。

その盛り上がりぶりを、米NBCテレビの五輪担当プロデューサーが見て、レスリーにオファーを送った。

「リオに来ないか?」

という誘いだった。はるばるリオ入りしたレスリーは現地で熱狂する。

これを機にレスリーは、ソーシャルメディアの世界に戻ってきたのだ。

これはとても勇気ある行動だと思う。

さらに黒人のオリンピック選手に対しても、声援を送った。

これについて、またある1人の専門家は賛辞を贈った。

“She was an advocate for others that have been victimized and haven’t spoken up,

and that has led to more attention, and has, perhaps indirectly,

led to policy change on Twitter’s part,” he said in an interview,

referring to the company’s taking action against some of the accounts

that had hurled racist insults at Ms. Jones.

「彼女は同じように虐げられ続けてきた人々、

またそれに対して声をあげられなかった人の為の支持者だ。

そして彼女の健気さは功を奏し、

この問題について人々の注意をひくことができた。

あるいは間接的に、ツイッター自身のポリシーチェンジにもつながった。」

インタビューの中でこう言った専門家は、ツイッター社がレスリーに差別発言をしたアカウントの状態を示す。

差別発言をし、レスリーにいじめをはたらいた一部の人間のアカウントは停止されているのだ。

レスリーがいじめにあった原因の1つは、黒人への差別だと言ったがもう1つある。

レスリーの存在の大きさだ。

彼女はソーシャルメディアのなかで、とてもアクティブな活動を繰り広げている。

出る杭を打ちたくなるような人間はごまんといるが、今回はその対象がレスリーになり、黒人であることをいいことにいじめにあったのだ。

彼らがいじめを行うのには、心理的な要因も絡んでいる。

“Some of those that cyberbully attempt to identify something

that you’re particularly sensitive about,

and because they know that it will get under your skin,”

「いくつものネットいじめは、あなた自身が特に過敏に感じるもの、本心で感じているものを、良い意味でも悪い意味でも確証させようとしている。

いじめを行う人は、あなたが敏感に感じるものが、本心に一番打撃を与えると知っているからだ。」

いわゆる個人のコンプレックスなどと言われるものをからかわれたり、それについて話されると、良くも悪くもそれを自覚してしまうということだ。

コンプレックスや本人の力が及ばないこと、例えばレスリーが黒人であるというような漬け込みやすい要因を叩けば、本人に与えるダメージは計り知れない。

このようないじめの攻撃は、鬱病や不安な症状といった深刻な心理ダメージをを人に与える。

しかし、彼女はそれに打ち勝ち、ソーシャルメディアの世界に戻ってきたのだ。

散々、辛酸を嘗めさせられ続けた彼女の、健気な行いは多くの人を勇気づけた。

伝説上のトロールは、気に入った人には幸福を届ける。

もちろん人間の生活を脅かすこともあるが、プラスの存在意義も持っている。

しかし、オンラインでのトロールはどうだろうか。

プラスの存在意義はあるのだろうか。

どう足掻いても、彼らの行動は正当化できないだろう。

今一度、「トロール」 への対応を考え直すべきだと私は思う。

オンラインで「トロール vs 人間」といった争いが起こらないことが一番望ましい。

そうならない為にはきっと、人間が、

【冷静な客観性】と【悪いことは悪いと認められる芯の強さ】を持つことが大切だ。

New York Times より一部文章引用

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SALLY

Journalism/Thought of Gender/ Science of Regions/World Situation & War/ New York Times