藁と木とレンガ

「三匹のこぶた」の話を思い出して欲しい。

http://www.cutestpaw.com/images/three-little-pigs/

一匹目のこぶたは藁の家を作るが、狼がその藁を吹き飛ばし、結局一匹目のこぶたは食べられてしまう。

二匹目のこぶたは木の家を建てる。

同じく狼は、こぶたを食べようとするが、吹き飛ばすことはできない。代わりに家に突進し、破壊して、二匹目のこぶたも食べる。

懸命な判断で家を建てたのは、三匹目のこぶただった。

三匹目のこぶたはレンガで家を作り、狼に家を壊されることもなく、食べられもしなかった。

さらに、煙突から入ってこようとする狼を、熱いお湯を沸かした鍋に落とし、先に食われた二匹のこぶたを救い出すことにも成功。物語は大団円に終わる。


ざっとこのような話だ。

レンガ造りの家はちょっとやそっとの衝撃では壊れない。

こぶた達が生きていた時、レンガ造りの家は強靭であったのだ。


2016年8月24日、イタリア中部でマグニチュード6.2を記録する地震が発生した。

これは日本で起こった熊本地震の余震の大きさに匹敵する。

発生したその日で確認されるだけでも、最低でも241人が死亡し、何人もの負傷者を出した。

アマトリーチェの街をご存知だろうか。

パスタが好きな人なら、アマトリチャーナの発祥地としてご存知かと思う。

この街の町長は、この惨状を見て悲嘆に暮れた。

「街が半分なくなった」と。

Half the town no longer exists.

このアマトリーチェの街には、石造りの歴史的な教会や多くのレンガ造りの家があった。

しかし、貴重な歴史建造物はことごとく破壊され、その姿を瓦礫へと変えた。

そう、今回の地震で被害がこんなに大きいのは、

古く浅い断層と無補強のレンガ造りの建造物に原因があるのだ。

もし、これらの建造物を作った彼らが地震について知っていれば…

しかし、それはほぼ不可能に近い。

だからこそ専門家はこう言う。

“Even 100 years ago, they didn’t know how to build structures to withstand earthquakes,」
「100年も前、人々は地震に耐えられる建物の建て方を知らなかった」

実は今回の地震。

実は世界各地で最近起こった地震の中では、規模が小さい。

昨年4月、ネパールで起こった地震は、マグニチュード7.8を記録した。

これは今回の地震の250倍の規模である。

ならば何故ここまで被害が大きいのか?

建物の作りが地震に弱かったことは言わずもがな、もう1つはこの地震の特性にある。


今回のイタリアでの地震はとても浅いところで起きた。

アメリカの地質調査によると、

地表からわずか6マイル(約9600m)下で起こったと報道されている。

“Shallow earthquakes cause more destruction than deep earthquakes
because the shallowness of the source makes the ground-shaking at the surface worse,”
「地表付近で起こる地震は、地表深くで起こる地震より被害が大きくなる。
それは、地表付近の震源は地面を大きく揺らすからだ。
地表深くの地震は、地下内部の揺れが地面に伝わるのに対し、
地表近くの地震は、地表にダイレクトに揺れを起こさせる。」

専門家はこう分析する。

さらに過去に起こった地震も、今回に関連している。

地震が起こると地殻が移動し、大きく分けられる。

構造プレートというものに分けるのだ。

イタリアのアペニン山脈は、これまでの地震で移動した構造プレートにより形成されたものだ。

ちょうど、ユーラシアプレートとアフリカプレートが衝突し、プレートの沈み込みなどが激しい。

イタリアで起こった過去の地震の資料を見てみると、

アルプス南西端からアペニン山脈へ弓なりに連なっている。

だから今回の地震も、アペニン山脈付近が震源となっているのである。

↓過去の地震の震源

複雑な相互作用が、プレート間で引き起こされている。

ティレニア海西海岸では、その作用が広がりつつある。

そう、イタリア本土と、ティレニア海西海岸が徐々に離れていっているのだ。

この動きが、アペニン山脈の地震活動を活発にしていると考えられている。


かつて2009年に起こったラクイラ地震も、イタリアで大きな被害を出した地震の1つだ。

この地震はマグニチュード6.3を記録し、300人以上の死亡者、

1000人以上の負傷者、55000人の人々の家を失わせた。

この2つの地震において、やはりレンガ造り、石造りの建物は多くが倒壊している。

では何故、ヨーロッパでは地震多発国として知られるイタリアが、ここまでいとも簡単に大被害を受けてしまうのか?

それには法律が関係していた。

Mr. Cocco said that Italy had anti-seismic construction laws for new buildings,
but that little has been done to reinforce existing buildings.
イタリアは、これから建つであろう新しい建物達に対して、耐震の法律を持っていた。
しかしその法の多くは、既存の建物の補強のために使われていたのだ。

とある。

が、実際問題そうもいかない。

実は、歴史的建造物は耐震基準の順守が免除されているのだ。

しかも、上記の通り新築の建造物の場合でも、耐震基準の順守が行われていないことが多い。

結論を言えば、イタリアでは多くの建物は地震に耐性を持っていない、ということだ。


そんな中で注目が集まっているのは、ノルチャという街だ。

この大地震の中で、死者を1人も出さなかった街である。

この街は、1979年に起こった地震を教訓に、建造物の耐震工事を行った。

しかもこの街、震源にとても近いのである。その距離なんと12km。

建物の倒壊も少なく、死者は出ていない。

しかし、他の街は教訓を生かせず、多大な被害を出してしまった。


冒頭で話した、「三匹のこぶた」の話では、レンガ造りが一番頑丈であった。

しかし、今のイタリアでは、レンガ造りの家は藁の家と同じ。

耐震基準の順守が免除されたレンガ造りの建造物に、もうこぶた達は住めない。

願わくは、この地震を教訓にして、

四匹目のこぶたが、地震に対応できる新たな基準を設けてほしいものだ。

引用

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