Pax Americana? No, “America First”

かつて世界には、ローマ帝国という大帝国があった。

SALLY
8 min readJan 22, 2017

初代皇帝の名は、”アウグストゥス”

アウグストゥス立像

彼が政権を握った帝政時代を「ローマの平和」、

Pax Romana、すなわちパクスロマーナと言う。

彼が政治の舵を握ってから実にその後200年間、

ローマ帝国は空前の繁栄と平和を謳歌することとなる。

しかし超大国となったローマ帝国が世界を支配する、と言うシナリオは、「権力は腐敗する」という言葉の元に、衰退していく。

約50年間の間に、26人もの皇帝が誕生した軍人皇帝時代などを経て、国内での混乱は高まっていった。

この平和と繁栄の時代が、アメリカにも三度、あった。

第一次世界大戦終結後、第二次世界大戦終結後、そして湾岸戦争の勝利後、すなわちソビエト崩壊時だ。

この時、一方的な考えであるとも言えるが –—–—–—–—

それでもアメリカは、この時点で世界をリードしていたと言える。

戦勝国、と言う括りは良くないが、それでも世界を導いたのは事実だ。

あの時代は、勝者がルール、世界は少しづつ安定し、アメリカはその地位を築きつつあった。

これが、

“Pax Americana”、そう、パクス・アメリカーナだ。

http://www.therussophile.org/the-west-versus-russia-towards-the-end-of-a-pax-americana.html/

この、パクス・〇〇と言うのには、一つ共通点がある。

〇〇に入る国が安定した政治を行っていることを前提に、

世界を牽制しつつもリードするのが、パクス・〇〇だと言えよう。

では、先日、大統領に就任したトランプ氏。

彼は、アメリカをかつての栄華誇る”Pax Americana”の時代に近付けようとしているのか。

否、彼の主張は ”America First” だ。

“America First “ とはどういう意味か。

最近になって、日本の報道機関もこの言葉を報道し始めた。

しかしこういった具合の報道だ。

「トランプ氏、アメリカファーストを推進」

「アメリカファースト、トランプ氏の思惑」

“America First” を「アメリカファースト」と訳している。

これでは、訳した意味がない。

なのでここでは、「アメリカ第一主義」と訳す。

“From this day forward, it’s going to be only America first,”

私が大統領になったこの日から、アメリカは唯一無二の国となるだろう。

これだけ聞けば、彼の主張は “Pax Americana” とも取れる。

しかし次の言葉で、彼の主張は大きく”America First”に傾く。

In Mr. Trump’s vision, America’s new strategy is to win every transaction and confrontation.

Gone are the days, he said, when America extended its defensive umbrella without compensation,

or spent billions to try to lift the fortune of foreign nations, with no easy-to-measure strategic benefits for the United States.

トランプ氏のビジョンにおいて、アメリカの新戦略は全ての金銭に関わる取引、対立に打ち勝つことだ。

あの日、アメリカが「守るための傘」を、補償金なしに広げた時、(=アメリカが世界平和のために軍を世界各国へ派遣した時)

もしくは、諸外国の資産活動を補助するために、大金を、自国の繁栄をもろともせず支払った時、彼はそう主張した。

文章に起こすと難しいが、要は彼の主張はこうだ。

「アメリカは、今まで自国のことなど気にせず世界へ奉仕した。次は、自国のことだけを考えていくべきだ。」

http://edition.cnn.com/2016/05/09/politics/donald-trump-national-debt-strategy/

最初に説明した通り、パクス・ 〇〇というには、前提がある。

その国が安定していると言う大前提だ。

では、今、アメリカは安定していると言えるか。

もちろん言えないだろう。

そしてその国は、世界をリードしていかなければならない。

トランプ氏が大統領となるアメリカに、従う国はあるのか。

各国はイエスマンになるしかなさそうな雰囲気さえ感じる。

アメリカの商工業について彼は、

“We must protect our borders from the ravages of other countries making our products, stealing our companies and destroying our jobs.”

我々は、我々の商売を守らなければならない。我々の邪魔をし、荒廃させ、我々の商品を横取りする、盗みや破壊を試みる諸外国からだ。

こう言及した。

諸外国は悪だと決めつけた、凝り固まった考え方だ。

そして自分の政策に関し、

Mr. Trump has rejected comparisons with the earlier movement, with its taint of Nazism and anti-Semitism.

かつてのナチズムの思想や、それに反した勢力との比較を拒んだ。

自分の政策は、かつての第二次世界大戦の頃のドイツとは違うと言い張っている。

果たしてそれは正しいか。

これに関しては様々な意見が飛び交うことだろう。

戦後のアメリカやNATO所属に国々に関しては、

And NATO was created to instill a commitment to common defense, though Mr. Trump has accurately observed that nearly seven decades later, many of its member nations do not pull their weight.

NATOは諸国が平和への意識を高めるために作られた組織だが、

しかしトランプ氏は、戦後70年の間、所属国はその活動に手を抜いてきたと的確に観察している。

これに関しては賛同者は多いのかもしれない。

この組織発足当時から、冷戦を経た今でも、アメリカとロシアは仲が悪い。

解決策を提示せず、のらりくらりとここまできた諸国には怒りをぶつけられる運命が相応しいのかもしれない。

All those decades of generosity, he said, punching the air for emphasis, had turned America into a loser.

これまでの、(アメリカ自身の)間違った寛大さが我々を追いやり、アメリカを敗者に仕立て上げた。

戦後、自分たちは敗者として仕立て上げられたと言う。

果たしてこれは正しいか?

戦争に敗者も勝者もないのは承知の事実だ。

彼は、次期大統領に決まった時、こう言った。

http://www.realitybasedleadership.com/lifes-messy-live-happy/

“We do not seek to impose our way of life on anyone,”

誰にも、自分の生き方を強要するつもりはない。

“but rather to let it shine as an example for everyone to follow.”

しかし、私についてきてくれる人々の光になれるように尽くそう。

彼が光になるアメリカは、果たして安定するのか。

PAX AMERICANA は再びその兆しを見せ始めるか?

否、それはないだろう。

彼は少なくとも任期終了までの4年間、

AMERICA FIRST を貫き通す。

アメリカ人は、それを受け入れていいのか。

答えは既に、わかっているだろう。

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SALLY

Journalism/Thought of Gender/ Science of Regions/World Situation & War/ New York Times