ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(以ドRBC)は、データ・ドリブン・マーケティングを導入するにあたり、まずは社内に目を向けた。導入を主導したキャシー・バロウズは以下のように話す。「今までのやり方を振り返って、『もっと効果的に、低コストで、早く、スマートにできる方法はないか?』と考えなければなりませんJo RBCは、年に一度のタイミングで行われる、個人積立年金の非課税積立の営業・マーケテイング・プロセスについて検討を始めた。毎年の積立時期が近づくと、RBCの営業部隊は、マーケティング部門からターゲットリストを渡される。営業マンは、アルファベットlllに並んだリストのLから電話をかけていく。各営業マンが10人の見込み客に電話をかけて、受注できるのは1人か2人だけだった。RBCのマーケテイング・チームは、新たな分析モデルを構築することで、5000ドル以上の積立拠出を行ってもらえる可能性の高い順に見込み客を並べることができるようになった(詳しいやり方は第9章で説明する)。このモデルでは、100万人以上の顧客について過去12カ月間のデータを分析することで、積立拠出を行う可能性の高い25万人を抽出した。顧客データの件数の膨大さにおじけづいてしまうかもしれないが、10人の顧客を対象に最適解を導き出せるなら、1000人を対象にしても同様にできるだろう。1000人を対象にできるならば100万人、あるいはそれ以上を対象にしてもできるはずだ(とはいえ、考え方は共通していても、巨大な顧客ベースを扱う場合には、パソコンで処理を行うのが困難になる点には注意が必要だ。第10章では、大きな顧客ベースを扱う際のITインフラに関して、「何を用意すればよいのか」という疑間に回答を示す)。RBCのケースでは、ランク付けに必要なデータの収集に6カ月も要し、約10万ドルもの費用がかかった。この取り組みの結果、各営業マンには、25人の見込み客が掲載された新たなターゲットリストが渡されることになった。その効果は驚くべきもので、新たなリストを使って電話をかけた営業マンは、平均して8?10件もの個人積立年金の受注を実現することができた。しかしながら、営業部隊が新たなターゲットリストの価値を理解するのには時間がかかった。最初の年にこのリストを利用した営業マンは、全体の25%にとどまった。それが、3年目には75%が利用するようになった。当初は懐疑的だった営業マンの間でも、リストの有用さがロコミで広がっていったのだ。バロウズは以下のように振り返る。「営業部隊の人たちに、『いや―、あのリストは素晴らしい!』と言ってもらい、ボトムアップで広がってほしかったんです。個人積立年金は、入り口に過ぎませんでした。この成功をきっかけに、400万ドル規模のマーケテイング・プロジェクトに対する、経営層の支持を取り付けることができたのです」。重要なポイントは、最初からデータを100%そろえたり、100万ドル単位のインフラ投資を行ったりする必要などないということだ。まずは、重要性の高いデータを入手することに集中しよう。80%の成果をもたらしそうな20%のデータとは何であるかを見極め、そこから始めるのだ。そして、早期段階で成果をあげることで、経営層の支持を勝ち取り、次のステージの投資へとつなげていくのだ。(データ・ドリブン・マーケティング)
