趣味としてのモジュラー・シンセ
Part 1: 始める前の調査
6/19/2020: 再開して追記を始めました。Part 2へのリンクはこちら
はじめに
「非ビンテージ」としてのモジュラー・シンセ
私は長い間、環境の変化などもあり、楽器に触ることも音楽を聴くことからも遠ざかっていました。しかし、しばらく前にSpotifyで音楽を聴くようになってから、彼らの膨大なデータベースとレコメンデーション・エンジンに導かれて、私が聴いてこなかったここ15年ほどの音楽にも触れる機会ができました。そして今は、そう言ったミュージシャンの名前をYouTubeで調べれば、すぐにライブ映像なども見られます。すると(私の好みの音楽のジャンルでは)結構な確率で、ラップトップの横に小型のモジュラー・シンセ を置いているのに気づきます。そして未だに第一線で活躍している、90年代前半からずっとミニマルな音を追求している彼⁰のミキサーの横にもそのシンセが… そういったこともありずっと気にはなっていたのですが、改めて調べてみると、それはあのA-100シリーズが元になって標準規格化し、現在は大きなエコシステムとして発展しているEurorackと呼ばれるオープンなシステムだと知りました。かつての様な「ビンテージ・シンセサイザー」としてのモジュラーではなく¹、現役の規格として広がりを見せているということを知り、私も興味を惹かれ、遊んでみたいと思うようになりました。
ここでは、かつてシンセに親しんでいたけれど、長いブランクのある人間が、趣味としてモジュラー・シンセで遊んでみようかなというとき、Eurorackモジュールをレゴのように組み合わせ、休日に自宅でフォークギターをかき鳴らすおっさんのように気軽にシンセから音を出して楽しむにはどうすればいいのか?を主眼にまとめてみました。私は「書くことで初めて理解する」傾向のある人間ですから、基本的に本稿は自分のための調査で書いたメモのようなものです。ですから、この文章はシンセサイザー入門には全くなっていません。そういったものは、プロの音楽家の方がたくさん書いておられますので、書籍を探してみてください。そもそもシンセで遊んでみようかな、と思った理由が、自分がコンピュータで作ったビジュアル方面のものに、何か音をつけられたら面白いかな?というのがきっかけですので「気合を入れてモジュラー・シンセで曲を作ろう」とか思っている方には役に立たないと思います。そして、現役でモジュラーシンセ を使っている方には当たり前すぎてつまらないと思いますのでご了承ください。あくまでホビイストとして気楽に楽しんでみよう、というスタンスで書いてあります。
不便さを楽しむ
始める前にまず覚えておかなければいけないのは、今はほぼ全ての面において、ラップトップ一台の方が大規模なモジュラーシンセ よりはるかに複雑なことができるという点です。カモンミュージックのレコンポーザでテンキー打ちをしていたような世代から見れば隔世の感がありますが、シーケンサーから発展して、Digital Performerあたりで実現されたハードディスクへのダイレクト・レコーディングを経て、現在ではインメモリであらゆる音を処理できるレベルになっているモダンなDAWで、我々のような中年世代が子供の頃夢想したようなことは、今はほぼ実現されています。超ハイエンドなプロの世界を除いて、アウトボードの山を導入しなくても、ソフトウェアでシンセからサンプラー、エフェクターまで実現できます。さらに知識があれば、SuperColliderなどの豊富なオープンソースソフトウェアをもとに、自分でシンセをゼロから構築することもできます。現在の高性能なプロセッサがあれば、良いオーディオインターフェイスを買って、DAWに加えてMaxやPure Data²でも組み合わせれば、音に関してはほぼあらゆる操作ができると言っても過言ではないでしょう³。更に言えば、音を作りこむことに興味がない人は、ほぼ無限にある、しかも昔に比べると極端に安くなったプリセット音をどこからか買えば、それで楽器としては十分です。したがって、モジュラーで何かをやると言うのは、すぐにでも作曲してSoundCloudにどんどん曲を上げたい、と思っている方には向かない手法でもあります。ではなぜあえて、やたらとお金がかかるし場所を取るモジュラーで音を加工したがる人がいるのかといえば、やはり物理的実体に触れられることの代え難さと⁴、見た目の面白さ、気温や電圧といった物理的現象に左右される、比較的幅の大きい真のランダムネスあたりでしょうか。コンピュータが高性能化して、ラップトップでほぼ完結できるような時代になると、またフィジカルなものを求め始めるというのが人間の面白いところです。ご存知の通り、計算機は各種アルゴリズムを使って擬似乱数を生成することができます。しかし擬似です。おそらく私を含めた多くの人が、擬似乱数生成装置で作ったモジュレーションとアナログ回路を組み合わせて生成したものをダブルブラインドで聴き比べても違いがわからないと思うのですが⁵、それでもあえてホンモノにロマンを感じてしまうのが人間なんでしょう。そういったフェティッシュな無駄を楽しむことができるのも、プロのように締め切りのない、我々素人の特権かもしれないですね。
あくまで気楽に…
あえて調性を避けてモジュラーシンセならではの曲を作る現代音楽の素養のある作曲家の方々も、衝動的につまみを回してランダムなノイズをひたすら作ってるアマチュアも、たくさんの動画をYouTubeに上げています。そういった中の、趣味で動画を上げている人のビデオを見ていると「聞いてるオーディエンスより自分が一番楽しんでるでしょ?」という印象を持つ方も多いと思います。実際そうなんだと思いますが、それで良いのだと思います。フォークギターでシンプルなコードをかき鳴らすのも、モジュラーシンセ でめちゃくちゃ複雑なパッチを組んで、ほとんどの人には不愉快なノイズを出すのも、本質は同じ自分のための楽しみだと思います。私の住んでいる南カリフォルニアをはじめとする全米各地で行われているこんなイベントも、ベースとなるマインドとしては、キャンプで楽しむ音楽の余興の一形態、といったものだと理解しています。
御託はこれくらいにして、実際にアマチュアが遊びを始めるにはどうしたら良いのか見ていきます。
脚注
0: 彼の父上がelectrical方面のエンジニアだということは知っていたのですが、機材開発の一部まで親子でやっていると知ってびっくりしました。
1: 当時ですら、すでに冨田勲やYMO、キース・エマーソンといったMoogモジュラー演奏の先駆者は「伝説の時代」の人々でした。
2: 余談ですが、最近になって、これらのソフトウェアの作者が私の職場の偉い人になっている事を知りました。
3: 「アナログ機材の太さと味わいをコンピュータごときが真似できるわけないだろう!」などとお怒りになるプロの方々は多いでしょうが、アマチュアには関係ありませんから気楽に楽しみましょう。
4: 我々の年代だと、かつてRolandが、シンプルにできるデジタルシンセのパネルにあえてわざわざ大量のつまみを付けたJD-800を出したのと似たような理由、といえばわかりやすいでしょうか。
5: 残念ながら音の世界では伝統的に二重盲検を嫌う傾向がありますので、我々のようなアマチュアが「何が真の現象か、何が気のせいか?」というのを知るのは難しいです。
どうやって始めたら良いのかを調べる
90年代初頭とは異なり、今はネットがあります。私もまずそこから調べ物をスタートさせました。ちょっと調べればありとあらゆる情報が手に入る一方、情報が多すぎて調べづらい、という一面もあります。そんな中、この遊びを始めるにあたって気づいた点をいくつかあげたいと思います。
用意するもの
この趣味を始めるには、いくつか用意した方が良いものがあります。それを列挙すると以下のようになります。
英語力
これだけあらゆる情報が日本語で氾濫しているように見える現在ですが、ことモジュラー・シンセ に関しては、英語と日本語の情報量は100:1くらいの感覚です。したがって、英語に対するアレルギーを無くすことがまず一番大切なステップだと感じました。書けなくても話せなくても良いので、読みと聞き取りはできると全く学習効率が違ってきます。マニュアルも非常に親切な解説動画も、基本的に全て英語ですので。英語は他のことにも使えるので、時間の投資先としては損にはならないはずです。
ある程度まとまったお金
残念ながらこの趣味は、自動車ほどではないにしろ結構な額のお金がかかります。ソフトウェアで音作りをするのに比べて、似たようなことをするのに一桁違うお金がかかる感覚です。まずは20–30万円ほど用意してから組み始めると、無理なく小さなシステム(3U一列80~104HPの、いわゆるSkiffを想定しています)が構築できると思います。Make Noise社などが一通りのモジュールを組み合わせた6U程度のセットを販売していますが、それも40から50万円というプライスレンジです(例えば、上の完成品のシステムで4500ドルほど)。その先はカメラやギターなど、中年に人気のある他の趣味と同じく、必要になる予算は青天井です。くれぐれも生活に支障の出ない範囲で楽しみましょう…
根気
もしあなたが一度もシンセサイザーに触ったことがないならば、まず音を出すまでにかなり苦労すると思います。Moogを源流とする、いわゆるEast Coast系のシンセを知っている人ならば、リードやベースなどの「普通の楽音」を出すのは割と簡単です。シンプルなオシレータ、LPF、ADSRのエンベロープジェネレータ、LFOなどのおなじみのモジュールは山のように出ています。しかし、それらを超えた「モジュラーならではの音」まで到達するにはかなりの時間がかかりそうです。ですから根気のある方向きです。
ヘッドフォン
多くの人にとってノイズにしか聞こえない音を出すのも得意な機械なので、家族や近所の方に迷惑をかけないように、これも必須です。
文化・背景を知る
実際にモジュールを注文する前に、その周辺文化や歴史、また実際にモジュラーシンセ がどういった音楽で使われているのかを知るのも楽しいものです。ここでは、私が最近までよく知らなかった「Moogのタンス以外のモジュラーシンセの文化」を知るのに役立った情報をまとめます。
ドキュメンタリー映画
モジュラーシンセ に関して、非常によくまとまったドキュメンタリーです。Moog博士の発明からSwitched-On Bachのヒット経て広がっていった「東海岸のシンセの文脈」以外に、ブックラ氏の発明からサンフランシスコ・テープ・ミュージックセンターを中心として、シンセを使って「音楽のボキャブラリ」を広げようとしたMorton Subotnickの一派もカバーし、モジュラーシンセがどうやって生まれ、死に、そしてどうやって復活したのかまでを追っています。特に、90年代前半くらいまでに起こった、ポップな文脈でのエレクトロニック・ミュージックのジャンル爆発(細分化)で、TRやJunoシリーズなどの復活を目撃した人でも、西海岸発祥のシンセスタイルに触れる機会はあまりなかったと思うので、その辺りに興味のある方にはお勧めです。
上記のリンクは、登録が必要ですが無料で鑑賞できます。
まだシリーズ完結前かつ有料ですが、Eurorack以降のモジュラー文化を中心に扱っています。現在進行形のカルチャーとしてのモジュラーシンセ 周辺を取材しています。ミュージシャンに加えて、メーカーへのインタビューなども含みます。
本
日本語はおろか英語でも、まだ体系的にモダンなモジュラーシンセを解説した本は少ないです。電子音楽関連の専門書は、音大生や音響工学の専門家向けに書かれていることが多く、なかなか取っつきにくいです。これはその中でもホビイストを含めた読者に向けて書かれた一冊です。Kickstarterで資金集めをして出版にこぎつけたと言う、なんとも現代的なやり方で書かれた本です。ニッチな分野でもこういった方法で出版が成立するようになったのはとても良いことだと思います。
肝心な内容ですが、「音とはなんぞや?」と言う基礎から始まる一方、実際のモジュラーに関する部分は、手取り足取り教えると言うよりは、現在Eurorack周辺にどんな機能モジュールが存在するのかと言うのを、機能ごとに分類して解説すると言うのが主な内容になっています。したがって、実践的なパッチを大量に解説してあると言った本を探している人には向かないかもしれません。YouTubeでよく見かけるアマチュアやプロのミュージシャン、そしてメジャーなモジュールメーカーへのインタビューも載っていますので、読み物としても面白いです。写真も多く、眺めているだけでも楽しめると思います。
機材のマニュアル
モジュールのメーカーは、大量生産とは対極にある非常に小規模な企業が多いため、製品を購入しても非常に簡素なマニュアルしかない、あるいはマニュアルそのものが無いなんてこともあります。そんな中、Make Noise社は日本語を含む非常に詳細なマニュアルを公開しています。特に以下の二つは、モジュラーシンセ 入門のような記述も含むので、大変参考になります。そして経験者の話を読むと、0-COAST(「ノー・コースト」と読みます)は、モジュラー入門としても推薦する方が多いようです。いわゆるセミ・モジュラーなので、パッチングなしでもとりあえず音が出るので、全くシンセに触れたことのない方には良さそうです。
こちらは大規模で高価なものですが、マニュアルには様々なパッチングの基本が書かれていて、読んでいるだけでも面白いです。
YouTube上のモジュールメーカー動画
現在YouTubeは、小規模な会社が多いEurorackモジュールメーカーがマニュアルの補完手段として動画をアップする、事実上の標準プラットフォームになっています。特に電子楽器の場合は、ここをこう動かすとこういう音が出る、ということを直接伝えることができるので、非常にわかりやすいです。充実度にばらつきはありますが、多くのメーカーが簡単なデモを超えた、チュートリアル動画を公開しています。中でも先に触れたMake Noise社の動画の充実は素晴らしいです。クセのあるモジュールが多いメーカーで、文章で説明されてもわかりづらい部分が多いのですが、動画で説明されると、なるほど、と分かる場合が多いです。モジュールごとにシリーズ動画を公開しています。
また、ここの創業者は様々なところで講演をしていますが、それも参考になります。
また、メーカーにより、そのユーザーの指向する音楽のスタイルも異なるため、動画の傾向も必然的に変わってきます。以下のメーカーはテクノに親和性の高いドラム系のモジュールを数多く出しているので、そっち系の動画が多いです。(使っているミュージシャンのライブの動画などもあり)
そして、以下のドイツの楽器店によるチャンネルは、Doepferの社長さんを含む、メーカーの方々によるワークショップやプロのミュージシャンによる解説など、非常に充実した内容です。
例えば、非常に人気のあるデジタル系のモジュールメーカーであるMutable Instrumentsの創業者の話などは、開発の経緯や楽器デザインの哲学なんかも語っていて、非常に興味深い内容が多いです。(現在この方は性別を変更して女性名になっていますが、名前は違っても同じ方なので、会社を売却したわけではありません。今でもMutable Instruments社の社長です)
また、ミュージシャンによるレクチャーもあり、彼らがレコーディングやステージ上でどのようなものを使っているのか、システム構築のポイントなどにも触れていて、参考になります。
YouTube上の演奏動画
モジュラーシンセ を演奏することが、特殊な能力と豊富な資金がなければどうにもならなかった時代に比べ、Eurorackの普及以降は凄まじい勢いで裾野が広がったようです。これはつまり、プロもアマチュアも同じような機材で演奏を楽しむことができるようになったとも言えます。そして、それらの様子を撮影した動画が大量にYouTube常にアップロードされています。口が悪い人に言わせれば、「素人カラオケと同じくだらないもの」なのかもしれません。しかし、なにせ絶対数が多いので、まさに玉石混交、見るに耐えないブレブレのつまらない動画もあれば、本格的なセッティングによる、プロによる演奏動画もたくさんあります。
IDM周辺で曲も多数発表し、企業と組んでありとあらゆるサウンドデザインを行い、シンセのプリセットなども作っている彼もアクティブに動画を上げている一人です。モジュラーシンセ を使ったアイデアスケッチのような短い動画を多数あげているので、見ているだけでも面白いです。そして流石にプロだけあって、音単体も凝ったものが多く、いつかあのレベルにパッチング出来るようになれれば…といったような刺激も受けられます。もっとも、とんでもない量のモジュールを使いこなす&重度のモジュラー中毒(次々に新しいモジュールを導入する)な人なので、いきなりマネしようと思わないのが重要です。
この他にも、たくさんのプロによる動画があります。また、どうやらモジュールや機材の紹介を生業として行っている方々もいるようで、以下はその代表例です。単なる音出しのデモをはるかに超えたチュートリアルもたくさんありますので、非常に有用なリソースになります。
ショップによる動画
新製品のデモを積極的に行っているモジュラーシンセ専門店もいくつかあります。ロサンゼルス近郊のこの店は、メーカーのエンジニアを招待してのワークショップなども定期的に行っています。
今では信じがたいですが、まだInstagramができて間もない頃、そこはどちらかというとフィルタでカメラのクオリティを補うことに魅力を感じたgeek系の人が使う写真アプリといった感じでした。今でも注意深くハッシュタグを選べば、食べ物や加工しすぎで原型をとどめていない自撮り以外の有益な情報も入手できます。例えば、一部の人に人気のあるモジュール名で検索したりすると、その演奏動画が出てきたりします。
日本語で読める専門家の記事
数は少ないですが、いくつか日本語の記事もあります。
現役のミュージシャンによるモジュールの紹介やモジュラーの基礎などを書いた。最近は更新がないようですが。
(内容は素晴らしいのですが、ナビゲーションが使いにくいので、ウェブの担当者の方はなんとかしてあげてください)
実際に始める
ここまでに様々な映像や音を楽しまれた方は、恐らく「沼」に飛び込む準備ができたと思います。ただし、ここから先は実際に財布にダメージがくる選択になるので、少し慎重にいきましょう。
最低限の技術用語を知っておく
昔シンセを使っていた人は、同期とコントロールと言えばMIDIで、複雑なシステムを組むのにMIDIパッチベイなんかを導入していた人も多いのではないでしょうか。現在もMIDIは現役の規格ですが、MIDIがUSBやワイアレスで飛ばせるようになって、モジュラーの世界でケーブル接続と言えば、当時既に死んだことになっていたCV/Gateで一音ずつコントロールですから、何が生き残るかはわからないものですね。
そういった昔の知識がある人ならば、割とすぐに最低限の接続に関する用語などは理解できると思います。OSCなどの新しい技術よりも、昔ながらのCV/Gateが支配する世界ですから、昔を知っている人ならばそれほど難しくないです。さらに、私より上の世代のアナログシンセ全盛期を生きた方々には、全く昔と同じですから。以下、MIDIとCV、オーディオ信号の違いくらいはわかることを前提に書きます。
機材選び
ModularGrid
実際に組むには予算や規模の計画も大事ですが、今のマーケットにどんなものがあって、いくらくらいで買えるのかを知ることも必要です。そんな時、このサイトは非常に便利です。ここは現在市場に出回っているあらゆるフォーマットのモジュールを網羅したデータベースです。何はともあれ、ここから探し始めるのがベストだと思います。
定番を知る
現在販売されているモジュールは、ほぼModularGridで網羅されています。しかし人気のあるものだけでも数百もあるような中から、どうやって自分に合ったものを選ぶ手がかりを得たら良いのでしょう?私見ですが、やはり人気のある定番の商品は、それなりの理由があると思っています。機能や音が優れていたり、見た目がカッコよかったり。したがって、現在のエコシステムの中で、どんなものが売れ筋なのか知るのは、初心者にとって結構重要なことではないかと思っています。
全てのモジュールから人気順でソート
まずジャンルを定めずにどんなものが人気があるのかを知るには、全てのモジュールを人気順でソートするという方法があります。機能がそれぞれ全く異なるので、人気一位から集めていけば良いというものではありませんのでそこはご注意を。ただ、こうやって眺めることで、人気のあるメーカーや定番が把握できると思います。ここでの「人気」とは、このサイトで組まれた「仮装ラック」の中に含まれた数、すなわち多くの人が欲しいと思っているモジュールを人気としてカウントしてあります。したがって、実際に売れている数とは必ずしも一致しないです。中には受注生産で、ユーズド市場では常にプレミアがついているものもありますので。
注意: 「人気がある=誰にとっても必要」ではない
人気機種の検索は簡単に行えることがわかりました。しかし、人気順に適当に買えば良いというわけではないです。まずアナログオシレータの不安定さが生み出す音の揺らぎや太さをシステムに求める場合に、デジタルオシレータモジュールを買う優先順位はそれほど高くないですし、DAWに積極的に組み込んで、実際のパターン製作にはAbleton LiveやMaxのパッチを使う時は、ハードウェアシーケンサのモジュールは必須ではありません。一つ一つが数万円以上しますので、人気があるので買ってみたが全く使い道がない、という罠にはまらないように…
ただし例外的に、常にこのランキングで一位になっているMake NoiseのMathsは、とりあえず持っていても何かには使えるという感じです。単純なミキサーやEGなどという標準的な使い方から、他のモジュールのモジュレーションソースとしても色々使えるようで、限られたスペースで様々なことを行うことができる、かつ完全アナログの回路でそれを実現している、というのが人気の秘密のようです。
まず実際に何かを買う前に、ModularGridで様々なモジュールや、他の人が組んだシステムを見て回って、実際に自分がどんなものを買えばいいのかを考えるのも、また趣味としては楽しいものです。
まとめ
メモをまとめているうちに、今回はモジュラー周辺の現状把握だけで終わってしまいました。趣味でやる場合は、こうやって色々見て回って、ModularGridで予算無視して好き勝手にラックに詰め込んでいる時が一番楽しいのかもしれませんね。
実際にシステムを組む部分は、Part 2に続きます…