プランクトン当てゲームで遊びながら環境を守ろう Plankton IDのリザリア識別ゲーム

Chika Kietzmann
6 min readJan 31, 2017

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リザリアというプランクトンをご存知ですか?

こんなプランクトンです。

Ammonia tepida, eine Foraminifere mit fangbereiten Pseudopodien

Von Scott Fay — UC Berkeley, CC BY 2.5, Link

私は今日まで存在を知らなかったのですが、なにやら重要なプランクトンのようです。2016年4月28日付のNatureハイライトにこんな記事が発表されています。

生物海洋学: リザリアが海洋生態学の主役に浮上

Nature532, 7600

2016年4月28日

海洋生態系には、さまざまなサイズのプランクトンが存在しており、大型の動物プランクトンはもっと小さいプランクトンを餌として食べることで、海洋の食物網や炭素循環に一役買っている。しかし、壊れやすい体を持つ大型動物プランクトンが海洋生態系に果たす役割やその寄与の程度については、解明が進んでいない。今回T Biardたちは、全球規模のタラ海洋探査でin situ画像化法によって得られたデータを用いて、600 μmよりも大きいリザリア(海洋原生生物の大系統群の1つ)と他の動物プランクトンの寄与をそれぞれ定量し、リザリアのバイオマス量がこれまで考えられていたよりはるかに大きく、最大で全海洋生物相の炭素貯蔵量の5.2%にも相当することを見いだした。これらの知見により、海洋のプランクトンのバイオマスや一次生産力をはじめとする生物地球科学的過程に、リザリアが重要な寄与をしていることが明らかになった。

(太字は、私が関心を持った部分です)

リザリアは海洋の湧昇域というところに多く見られる単細胞の動物プランクトン。湧昇域では栄養を豊富に含む深海の海水が表面に沸き上がることで、生物生産性が非常に高くなります。深海の栄養分が太陽光の届く表層にもたらされて植物プランクトンが大量発生し、それを餌とする動物プランクトンから大型の海洋生物への食物連鎖のピラミッドが完成します。いわゆる好漁場と呼ばれる場所ですね。

動物プランクトンの中でもリザリアは特に大きく成長します。カリフォルニアの湧昇域では動物プランクトンの81%をリザリアが占めているそうです。リザリアは海洋の食物連鎖において非常に重要なだけではなく、その死骸や糞が沈降することで炭素を深海に運ぶ、「生物ポンプ」としても大きな役割を果たしています。

つまり、海と海の資源を守るための海洋研究において、プランクトン、とりわけリザリアの調査はとても大事だということですね。

気候変動や漁業が海洋にどのような影響を与え、そしてそれが回り回って人間の生活にどのように影響するのか。それを知るためには多くのデータを収集・分析しなければなりません。しかし、リザリアはそのかたちや構造のバリエーションが大きく、また壊れやすいので、これまで十分に調査が進んでいませんでした。上記のNatureの記事にあるように、リザリアの重要性が認識されるようになり、今後の研究が期待されています。

この研究には、私たち「普通の人」も貢献できるんですよ。

GEOMARヘルムホルツ研究所海洋研究センターキール大学海洋学研究所(ドイツ)とObservatoire Océanologique de Villefranche sur Mer海洋観測所(フランス)は共同で、市民が「ゲーム」をすることでプランクトン研究に参加できるシチズンサイエンスプロジェクト、PlanktonIDを開始しました。

プロジェクトサイトのフロントページはこんな感じ。

海洋の様々な場所から採集したサンプルの画像データの分析を「プランクトン識別ゲーム」をすることで手伝ってくださいと書いてあります。

Screenshot 2017-01-31 18.13.42

フロントページからはプランクトンについての説明や研究プロジェクトについての説明ページに飛ぶことができます。水中カメラで撮影した画像は既に5万点以上が画像認識アルゴリズムで自動識別・分類されていますが、チェックして間違いを修正しなくてはならないそうです。一般の人もPlanktonIDのプランクトン識別ゲームで遊ぶことで、そのお手伝いができます。

遊び方は極めて簡単で、画面に表示される16枚のプランクトン画像と右側の例(Examples)を見比べて、例と同じ種類だと思う画像をクリックするだけです。

早速、私もやってみました。下の画像がその結果です。

100%正解!そんなに難しくなかったです。でも、これは「お試し」なので易しかったのかな?緑色のフレームの画像はすでにこのカテゴリーのプランクトンであることがわかっている画像で、赤は別のプランクトン。(これらはコントロールのための画像で、これらをどれだけ正しく識別したかで、そのゲーマーの正解率を計算します)グレーのフレームの画像がまだ分類されていないもので、ゲーマーの識別結果が保存されます。

遊んだ後はフィードバックが得られるので、遊んでいるうちにプランクトン識別スキルが上がって行きます。もちろん、ただ遊ぶだけではなく、プロジェクトの進捗状況や研究結果についても知ることができます。

効果的な環境保護にはデータの積み上げと分析が不可欠です。空いた時間にちょっとゲームで遊ぶだけ、それも試しに1度か2度だけ。そんなちょっとしたことでも環境保護に貢献することができるんですね。

語学力もほぼ必要ないゲームなので、よかったら遊んでみてくださいね!

Originally published at Sci-Tech-Germany.

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