ムール貝の粘着物質を模倣し、天然の医療用接着剤をベルリン工科大が開発

(Miesmuscheln Flickr:philflieger)

寒い季節に美味しいムール貝。ムール貝は潮の流れの速い場所でもしっかりと岩壁にくっついていますが、これはDOPAと呼ばれるアミノ酸を含む物質のおかげ。ムール貝はこの物質を接着剤として使って岩などの表面に自らを固定しています。いろいろなものにくっつき、陸上でも水中でも作用するこの強力な天然の接着剤を、裂けた皮膚や組織、折れた骨などを接合させるための生体接着剤として利用できないかと世界で研究が重ねられて来ましたが、ベルリン工科大生体触媒科の研究チームが腸内細菌である大腸菌(E. coli)の遺伝子を操作してムール貝の接着剤を作り出すことに成功しました。大腸菌に別の細菌(メタノカルドコックス・ヤンナスキイから得、改変した特定の酵素を導入すると、大腸菌はDOPAを基盤とする接着物質を産生しまう。しかし、この物質は作られるとすぐさまくっついてしまうため、保存し、必要に応じて使用するのが難しいという問題がありました。そこで、研究チームが酵素を導入した大腸菌にONB-Dopaという別のアミノ酸を与え他ところ、接着物質を覆う保護フィルムができることがわかりました。このフィルムは、例えればシールを剥がすことでくっつく糊付き封筒のシールのように作用します。周波数365ナノメーターの紫外線を照射するとフィルムが接着物質の表面から剥がれるので、必要なときに必要な分だけ接着剤が使用できます。天然のムール貝から取れる接着物質はごく少量で、わずか1〜2グラムの接着物質を得るためには1万個ものムール貝が必要です。大腸菌は繁殖が速く、また腸内細菌でもあることから、人体に安全な生体接着剤を効果的に生産できるようになるのではと期待が集まっています。

ChemBioChem誌に論文が掲載されたこの新技術は、ベルリン工科大学際的研究ネットワーク、UniCat の起業ラボ、InkuLabにて実用化が試みられています。

参考:

Superklebstoff aus Darmbakterien (ベルリン工科大ウェブサイト)


Originally published at Sci-Tech-Germany.