成長する建物 〜 シュトゥットガルト大学の若き研究者、 Ferdinand Ludwigの目指す未来の建築、Baubotanikとは?

Baubotanikという言葉を聞いたことがありますか。

Bau(bauen 建設する)+ Botanik(植物学)の造語。「建設植物学」または「建築植物学」と訳すべきでしょうか。

今年、ドイツ、バーデン=ヴュルテンベルク州は36歳のシュトゥットガルト大学研究者、Ferdinand Ludwig氏に「Preis der mutige Forschung(勇気ある研究賞) 2016」を授与しました。Ludwig氏は、Baubotanikという学問分野を生み出し、建築学に新しい風を吹き込んだ若きパイオニアです。

同氏の所属するシュトゥットガルト大学現代建築・設計基礎研究所(IGMA)内にあるBaubotanik研究室(2007年設立)は、Baubotanikをこのように定義しています。

The term “Baubotanik” stands for a basic approach to engineer with living plants. It is a construction method that provides a technique to let buildings arise out of the interoperation of technical joining and vegetable growth. For this purpose, living and nonliving structural details are joined in a way they can grow together into a botanical and technical compound structure: Single plants merge into a new and bigger overall organism and technical elements are included into the vegetable structure during the period of growth. (IGMA Universität Stuttgart: Forschungsgebiet Baubotanik )

Baubotanikとは、コンクリート、鉄筋、木材などの従来の建材に加えて、生きた植物を使って建築物を設計・建築する手法及びその研究分野です。これまでにもあるように、出来上がった建物の壁に蔓植物を這わせたり、屋根を緑化するのとは違い、生きた木を設計の一部に組み込み、建築物の基本構造に利用するという新しい建築コンセプト。

植物は時間の経過とともに成長し、互いに、そして他の建材と絡み合い、強固な柱や壁となって建物を安定させて行く。植物の成長により、建物はしだいにかたちを変えて行く。生きた素材が建物となり、生態系を支えて行く。

以下の動画で創始者であるLudwig氏がBaubotanikのコンセプトを説明しています。(英語字幕付き)

しかし、このワクワクするような同氏の構想は、すぐに周囲の理解を得られたわけではありませんでした。大学の研究者仲間達からは「ヒッピーのアイディアみたいだね」と言われ、まともに取り合ってくれる人はほとんどいなかった。研究に必要な場所の提供を大学から得られなかったLudwig氏がアーチストである友人の協力を得て初の建築植物学プロジェクトとして設計・制作したのは、柳の木を使った桟橋でした。(是非クリックしてね)

Ludwig氏の研究活動に注目が集まり、その可能性が本格的に議論されるようになったのは2005年になってから。 2007年シュトゥットガルト大学に研究室が設けられ、Baubotanikは新しい学問分野としてその第一歩を踏み出しました。現在、建築家、エンジニア、人文・社会学者及び自然科学者らが集まり、様々な観点から生きた植物を使った建築の可能性を追求する学際的な研究プロジェクトを進めています。これまでにタワーやプラタナスのキューブなど、すでに多くが設計されています。

Ludwig氏のオフィスHPでもプロジェクトの画像が多く見られます。どれも斬新でとても魅力的です。(こちら)

 (Bureau LudwigのHPスクリーンショット)

(Bureau BaubotanikのHPスクリーンショット)

生きた植物を使うため、全く同じ設計でも一つとして同じものはできません。設計時には10年後、20年後にそれがどのようなかたちに成長しているのか正確にはわからない。そして、いつか完成するわけでもありません。建物が自然の一部として常に姿を変えて行く。まさに建物と自然の融合と言えます。同氏がこうしたアイディアに取りつかれるきっかけとなったのは、インドの熱帯雨林にある「生きた木の根でできた橋」の写真だったそうです。橋として人々の役に立つだけでなく、生態系を維持し、安定させている。これは持続可能な未来の建築手法となり得るのではないか。そう考え、Ludwig氏は木の成長メカニズムを入念に観察し、生きた植物を使った建築の様々な技術を編み出しました。生きている木は環境の変化にしなやかに反応するという特徴がある一方で、枯れてしまうこともあります。Baubotanikの手法で建設した建物は常に手入れをし、成長を観察し続ける必要があります。設計者にとって、まさにライフワークですね。

現時点ではまだ経済的に見合うものではありませんが、 環境保護・地球温暖化防止策としてのポテンシャルを秘めていると期待されることから大きな注目を集めており、同氏はこれまでに多くの賞を受賞しています。

参考:

Baubotanik.de
 Bureau Baubotanik
 Spektrum — Bauen mit der Natur


Originally published at Sci-Tech-Germany.