我が家の環境対策 地中熱を暖房に利用する
ドイツ、ブランデンブルク州にある我が家は、10年前に中古で購入した築35年の一軒家です。
暖房はセントラルヒーティングですが、家を購入したとき、温水の熱源は地下室に設置された石油ボイラーでした。
しかし、ボイラーはかなり古くなっており、また、どこか漏れがあったようで地下室が石油臭く、その臭いが一階にまで上がって来て気分が悪くなるほどでした。それで、この石油ボイラーをやめて、新しい設備を導入することにしたのです。
当時は石油価格が現在に比べかなり高く、また、費用をかけて新しくするなら環境負荷の小さいものにしたいと考え、検討の結果、地中熱ヒートポンプの購入を決めました。地中熱は太陽光や風力のように天候の影響を受けることがなく、また、時間帯や季節による温度の変動が小さく安定しており、高い省エネと二酸化炭素削減効果の得られるエコなエネルギー源です。
地中熱の利用形態にはいくつか種類がありますが、私たちが採用することにしたのは「オープンループ」と呼ばれるもので、地下水を汲み上げて熱を取り出し、別のドリルホールから地中に戻す方法です。(地中熱利用促進協会のこちらのページにわかりやすく図解されています。)
前庭と裏庭、それぞれ一箇所づつ約30メートルのボアホールを掘って地下水を通すためのパイプを挿入し、ヒートポンプとタンクを地下室に設置しました。前庭のボアホールから汲み上げた約10.5℃の地下水を熱交換器に通した後、約7.5℃で裏庭のボアホールを通して地中に戻します。このようにして地下水をリサイクルするので資源を有効利用することができます。
このポンプを設置して以来、石油の臭いに悩まされることもなくなり、とても快適で気に入っていました。
ところが、設置から10年経った今年、ヒートポンプが故障して動かなくなってしまいました。ちょうど夏が終わり、気温が次第に下がって行く時期だったので暖房が使えないのは困ります。
故障の原因を調べたところ、地下水に含まれている鉄分やマンガンであることが判明しました。これらの濃度が高いためにポンプが錆びてしまったのです。メーカーに問い合わせると、修理は可能とのことでしたが、原因が取り除かれなければ、修理してもまた錆びることが予想されます。そのようなわけで地下水の利用はもう無理かもしれないと諦めかけ、空気熱ヒートポンプに替えることも検討したのですが、私たちの住んでいる場所の気候を考えると効率面で最適とは思えませんでした。
すっかり頭を抱えてしまったのですが、地下水をもう一度よく分析したところ、前庭と裏庭のドリルホール付近で鉄分・マンガンの濃度にかなりの違いがあることがわかりました。汲み上げ用に使っていた前庭のホール付近では濃度が高いのですが、裏庭の方はそれよりもずっと低く、ポンプを錆びさせるほどではないことが判明。そこで、「前庭から汲み上げ、裏庭に戻す」のではなく、その逆に「裏庭から汲み上げ、前庭に戻す」ようにすればポンプが錆びるのを回避できるでは?と夫が思いつき、引き続き地下水を利用することに。
しかし、ポンプの修理にはかなりの費用がかかります。それならば、この10年で技術も進歩していることだし、より性能の良い最新式のヒートポンプを購入しようということになりました。これまではELCO社製のものを使用していましたが、いろいろ比較検討し、新しく設置することになったのは、Stiebel Electron社のWPW18です。
地下に設置したヒートポンプ。(見苦しい部屋でスミマセン)
以前使っていたものと比べて進歩している点の一つは、このヒートポンプはインターネットに接続してPCやモバイル機器で操作・管理できること。
(Image: Stiebel Electron クリックで拡大します)
設置したばかりなのでスマート機能はまだ使いこなしていませんが、エネルギー利用を日々モニタリングできれば、省エネに対する意識がより高まりそうです。
このヒートポンプの購入にあたっては、ドイツ連邦経済・輸出管理庁(BAFA)の熱設備を対象とした助成金制度を利用しました。助成金の金額は技術カテゴリーにより異なりますが、設置費用の約45%が支給され、とても助かりました。
そして、さらに嬉しかったのは、そのお知らせにガブリエル連邦経済・エネルギー大臣とヴァルラフ連邦経済・輸出管理庁長官の署名入りのこんなレターが添えられていたことです。
一部引用します。
Mit Ihrer Teilnahme an Förderprogramm des Bundesministeriums für Wirtschaft und Energie profitieren Sie nicht nur selbst, sondern leisten auch einen wichtigen Beitrag zur Energiewende. Dafür danken wir Ihnen ausdrücklich. (あなたは、連邦経済・エネルギー省のこの助成プログラムに参加することで経済的なメリットを得るだけではなく、同時にドイツのエネルギー転換に重要な貢献をします。そのことに感謝致します。)
政策に協力してくれてありがとう、これからも力を合わせ、一緒にエネルギー転換を進めて行きましょうというお手紙でした。もちろん、個人的に書いてもらったわけではなく、印刷なんですよ。でも、こんなちょっとした気遣いが嬉しいです。
ヒートポンプが故障してから新しいものを設置するまでに試行錯誤があり、2ヶ月ほどかかってしまいました。後半の1ヶ月は気温がかなり下がってとても寒い思いをしたので、ようやく暖房が使えるようになり、暖かい住居のありがたみを感じています。エネルギーって大事ですね。
参考:
Stiebel Electronの地中熱ヒートポンプに関するページ
日本の地中熱関連補助金・融資(地中熱利用促進協会HPより)
Originally published at Sci-Tech-Germany.