『この世界の片隅に』を観ました。

熊本の新市街サンロードにある電氣館は老舗なんですが、シネコンではかからない映画が多く上映される結構な映画館です(例えば昨年は三上智恵監督の『戦場ぬ止み』を観た)。今日は話題のアニメーション映画、『この世界の片隅に』を観てきました。

『シン・ゴジラ』『君の名は』と、話題の作品を続けざまに観るなんて、けっこうミーハーだなと自分でも思いますが、「のん」こと能年玲奈が主役の声を演じているとあらば、駆けつけないわけにはまいりません。

些細なことかもしれませんが、能年さんをシカトする芸能界の問題の根は深いなあと思ったばかりなので、早い話が応援したくなったんですよ。マスコミが無視したくてもできないくらいに映画が大ヒットすればいいなとの思いがあったのです。

【追記】のんさん、大輪の花が開いた。


さて、肝心の映画の内容ですが、これはもう、ぜひご覧くださいと言う以外は思いあたらない。前に挙げた2作品もそれぞれに見どころがあり、面白かったし考えさせられたけど、『この世界の片隅に』を観終わったあとの満足感は比べものになりません。冷静になって批評する気にならないし、欠点を挙げる気にもならない。私がどれほど物語の中にのめり込んでいたかと言うと、始まってからしばらくすると、主人公「すず」を「のん」が演じていることすら、すっかり忘れてしまった。つまり、客観視できないくらい集中していたのです。

いや一度だけ我に返った瞬間があって。それはある重要な場面にさしかかったときに地震が起きた。後で聞くと震度2、震源地は熊本駅あたり(つまり電氣館にほど近い)だったそうですが、一瞬「音響効果か?」と勘違いしました。シネコンみたいなドルビーシステムを持たない小さなハコだと言うのに。しかし震動は見事に映像とシンクロしていたのです。

私は原作者である、こうの史代氏の淡い画風があまり得意ではありませんでしたし、コトリンゴさんの音楽も好みではありませんでした。けれどもその先入観は刷新されてしまった。こと音楽には喧しい私ですが、とくに万華鏡みたいに音の散らばるエンディングの歌には脱帽でした。

客席を見渡すとご高齢の観客が半分くらい。若者はちらほら。できれば武器や船舶に詳しいマニアックな方々にこそ観てもらいたいと思いました。そして熊本でも満席になることを切望します。なぜなら焼跡の果てしなく広がる光景は、私たちが4月に目のあたりにした崩壊の現場と同一のものだから。登場人物の感情を、痛みを慈しみを、今の熊本人は誰よりも理解できるはずだから。(11月17日)

One clap, two clap, three clap, forty?

By clapping more or less, you can signal to us which stories really stand out.