「Inspired: 顧客の心を捉える製品の創り方」メモ

Inspired: 顧客の心を捉える製品の創り方

マーティ・ケイガンの著書「Inspired: 顧客の心を捉える製品の創り方」。この本は、ヒューレットパッカード、ネットスケープ、アメリカオンライン、イーベイなど、名だたるシリコンバレー企業を20年間渡り歩いてきて学んだことをまとめた、プロダクトマネジメントのバイブル的書籍。製品開発をする上で大切なことを、自身がヒューレット・パッカードの若手ソフトウェアエンジニアの頃のプロジェクトから学んでいる。

技術的にいい仕事をするだけではダメなのだ。それと同じくらい、あるいはそれ以上に大事なのは、価値があって(valuable)、使いやすくて(usable)、実現可能な(feasible)製品を「見つけ出す」ことである

製品開発をするときに気をつけている10の真実

みんなの心を動かし買い求めた製品の裏側には、必ずある種の真実が隠されている。

  1. プロダクトマネージャーの仕事は、価値のある、使いやすい、実現可能な製品を「見つけ出す」ことである。
  2. 製品を見つけ出すのは、プロダクトマネージャー、インタラクションデザイナー、ソフトウェアアーキテクトの共同作業である。
  3. エンジニアリングは、重要で困難な仕事である。でも、もっと重要なのがユーザーエクスペリエンスデザインであり、それは、たいていの場合エンジニアリングよりも困難である。
  4. エンジニアは、たいていユーザーエクスペリエンスデザインが不得意である。エンジニアは実装モデルを考えるが、ユーザーは概念モデルに基づいている。
  5. ユーザーエクスペリエンスデザインとは、インタラクションとビジュアルデザインの両方(そしてハードウェア端末のインダストリアルデザイン)を意味する。
  6. 機能性(製品要求)とユーザーエクスペリエンスデザインは、本質的に連関している。
  7. 価値のある使いやすい製品を生み出すためには、実際のターゲットユーザーに対して、早い時期から、事あるごとに、製品のアイデアを検証しなければならない。
  8. 現実的なユーザーエクスペリエンスを使って、実際のユーザーに対して自分たちのアイデアをすばやく、簡単に、何度でも検証するためには、製品の正式版が正確にイメージできる試作品(ハイファイプロトタイピング)が必要である。
  9. プロダクトマネージャーの仕事は、価値があって、使いやすくて、実現可能という目的を満たす上で必要最小限の(余計なものが一切そぎ落とされて洗礼された)製品を特定することである。これによって、製品化までの時間と製品の複雑さを最小限にするのである。
  10. 必要最小限までそぎ落とされた機能の製品であって、多くの人が買ってくれそうなものを見つけ出し、その検証が終わると、もはや、その製品については、製品を構成する機能をばらばらにしてしまうと元の製品と同じような目的を果たすことはできなくなる。

プロダクトマネージャーの役割

プロダクトマネージャーの主な任務として、製品の市場性を評価することと、開発すべき製品を定義することの2つがある。新しい製品のアイデアを吟味して、製品化を進める価値があるかどうかの目利きをするのがプロダクトマネージャーである。これを市場要求仕様(MRD, Market Requirements Document)や、その軽量版の市場性評価(Opportunity Assessment)にまとめる。

十分に市場性があって、自社でそのアイデアを実現できる可能性があれば、そのアイデアをどういう製品にするか(必要とされる特性と機能、ユーザーエクスペリエンス、発売の基準など)を「見つけ出す」必要がある。ここで著者はプロトタイピングを使った軽量なアプローチを勧める。この仕様で明確にする必要があるのは、どういう機能を備えて何をするものかということであり、どのように動くかではない。

担当者の人数の適切な割合は?

5~10人のエンジニアに対して、1人のプロダクトマネージャーが必要。ユーザーエクスペリエンスデザイナー1人でプロダクトマネージャー2人をサポートし、ビジュアルデザイナー1人で4人のインタラクションデザイナーをサポートできる。エンジニアが5人以上のプロジェクトなら、専任のプロジェクトマネージャーが必要。もし「トレインモデル※」を使っているならトレインごとにプロジェクトマネージャーが絶対に必要。

※1~4週間ごとに機能を追加しながら継続的に製品をリリースする手法。

プロダクトマネジメントとプロダクトマーケティングは同じものではない

ダメな製品が無駄に世に送り出されるいちばんの原因は、ほとんどの場合、会社の中でプロダクトマネージャーの役割が明確にされていないことと、プロダクトマネージャーとなる人に対する教育が不十分なこと。

下記はよくある3つの状況

  1. マーケティング主導の製品である:ユーザーエクスペリエンスデザインが無視される
  2. 1つの役割に2人の担当者がいる:製品開発の最終責任を負う人がいない。製品要求とユーザーエクスペリエンスは切り離して行うことが出来るという誤った認識がある。
  3. 1人で2つの役割を兼務している:プロダクトマネージャーとプロダクトマーケティングを両方ともうまくいこなせる人はなかなかいない。

解決策:プロダクトマネージャーの役割とプロダクトマーケティングの役割をきちんと区別して定義すること。プロダクトマネージャーは、作りたい製品のプロフィールを細かいところまで決めることと、実際の顧客やユーザーとともに製品を検証すること。プロダクトマーケティングは、市場での製品の位置づけを明確にすること、製品に関する情報発信、価格設定、新製品の発売の管理、販売チャネルから製品を売り込むためのツールの提供、オンラインマーケティングや市場関係者に対するマーケティングといった活動が含まれる。

主な接点:第一にプロダクトマーケティング担当者は、プロダクトマネージャーが製品要求を決めるのに役立つ情報を提供できる。第二に、プロダクトマネージャーは、プロダクトマーケティング担当者がマーケティングメッセージを考えるのに役立つ情報を提供できる

プロダクトマネジメントとプロジェクトマネジメント

現在のインターネットサービス企業は、改良版のリリースにトレインモデルを採用するようになった。トレインは特定のプロジェクトだけを対象とするのではなく、あるリリースでカバーされるすべてのプロジェクトを一体的に管理するものである。多くのプロジェクトの諸々の事情を考慮した上で、リリース管理、エンジニアリング、サイト運用、顧客サービス、プロダクトマネジメントといった調整をしなければならない。

優れたプロダクトマネージャーの7つの条件

  1. 緊迫感:◯◯判断力:いつ他のメンバーのお尻を叩くのか、いつ経営陣に報告するか、いつ追加情報を集めるか、いつ場所を変えてちょっとプライベートなおしゃべりをすればよいか、などを心得る。が入ってくるだけで、緊迫感が流れる
  2. 立案者たること:問題を明確かつ簡潔に特定して整理し、建設的な会議を運営する
  3. 明晰な思考力:根底にある問題を明らかにし、みんなが問題の解決に集中できるようにする
  4. データ指向:現在どこにいて、これからどこに向かうべきかを正確に知る上で、データが重要な役割を果たすこと。データを求め、データの背後にある事実に裏付けられた意思決定をすること。
  5. 決断力:緊張感を伝え、問題を明確にし、合理的で透明性のある理由付けをして、データに基づいた意思決定をする。また、チーム内からデータや意見をいつ集めればよいのか、いつ問題を経営陣に報告すればよいかと知っておく。
  6. 判断力:いつ他のメンバーのお尻を叩くのか、いつ経営陣に報告するか、いつ追加情報を集めるか、いつ場所を変えてちょっとプライベートなおしゃべりをすればよいか、などを心得る。
  7. 姿勢:優秀なプロジェクトマネージャーとは、問題を解決するのが上手な人である。言い訳をしない。やり遂げる。粘り強くて、立ち止まらない。

プロダクトマネジメントとデザイン(設計)

ユーザーエクスペリエンスデザインを理解する

  1. インタラクションデザイン:ユーザーにとって作業効率のいいタスクやナビゲーションやフローを考案すること。製品要求をワイヤーフレームにマッピングし、ビジュアルデザイナーに渡す。
  2. ビジュアルデザイン:ワイヤーフレームに肉付けをして、実際のページやユーザーインターフェイスの見た目と雰囲気を創作すること。ユーザーの感情に語りかけたり感情を呼び起こしたりする。
  3. ラピッドプロトタイピング:アイデアを反映したプロトタイプ(試作品)を作って実際のユーザーでテストする、という作業を繰り返すこと。
  4. ユーザビリティテスト:製品やプロトタイプによって、ユーザーのやりたいことが用意に達成できるのかどうかを判定する。検証に参加してくれるユーザーとして適切な人々を集めること、検証作業を行うこと、検証結果を評価すること、代替案を提示すること。

プロダクトマネジメントとエンジニアリング(実装)

正しい製品を作るのか、それとも、製品を正しく作るのか

エンジニアの助けを借りる方法3つ

  1. エンジニアをユーザーや客先の前に連れ出すこと。ユーザーが苦労する様子を直接見ることで多くのことを学べるだけでなく、問題点とその深刻さをもっと理解できるようになる。
  2. 技術が発展することで何ができるようになったかを探るために、エンジニアに助けを求めること。
  3. 製品開発の初めの段階から関与させて、早い段階でそれぞれのアイデアについて必要な費用を見積もっておき、より望ましいソリューションを決めるのに役立てること。

エンジニアにいい仕事をしてもらうための方法3つ

  1. 製品を必要最小限までそぎ落とすことに集中すること。
  2. いったんエンジニアチームが開発を始めてしまったら、極力、それをかき回さないようにすること。
  3. 想定してになかった使い方や十分に検討をしていなかった使い方など、実装時に出て来る問題に立ち向かい、できるだけすばやく答えを出すこと。

離れた場所にいる開発チームとうまくやり遂げる3つのカギ

  1. 言葉や文化や時差のためにコミュニケーションの手段としてプロトタイプを使う。製品仕様を決める段階でしっかり完璧に作業しておく必要性がある。
  2. 遠隔地のエンジニアリングチームの調整・相談する人を明確にする。
  3. 3ヶ月に一度は、エンジニアリングチームの所に出向いて、彼らとしっかり顔合わせをして、中心となっているアーキテクトやマネージャーと打合わせをするべき。

外注という手もある

専門性の高い職種については、コスト削減のための外注はやるべきではない。インド、東欧(チェコ、ハンガリー、ポーランド、スロバキア)、北欧(オランダ、スウェーデン、ドイツ)、イスラエル、中国、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドといったところは、ソフトウェアの製品開発でずば抜けた能力を持つ人たちをたくさん輩出している。

プロダクトマネジメントとデザインの機能の他に、アーキテクトと品質保証マネージャーを本社に置いて、製品開発チームのその他の機能については、どこかに丸ごと外注するか、世界中に分散して外注するのが当たり前になってきている。

大切なのは、チームそのものとその構成メンバーの力量がすべてということ。

エンジニアリングチームがコードを書き直したいだって!?

プロダクトマネージャーが、作れそうな機能なら何でもめいっぱいくっつける、というようなことを何年にもわたってエンジニアリングチームにやらせたために、彼らをボロボロにしてしまうこと。インフラを考えないで酷使すれば、いずれ、ソフトウェアが機能しなくなる、というときが必ずやって来る。エンジニアリングで何かのキャパシティを設定するときは、そのうち一定の割合を予備として空けておく(ヘッドルーム/頭上の空間)。急速に成長しているときに出くわすさまざまな問題は、規模やサイズが関係していることが多いので、ヘッドルームとは、天井に頭がぶつかるのを防ごうというい考え方である。エンジニアリングチームのキャパシティ全体の20%を空けておいて、これをエンジニアリングチームの判断で使える予備の枠として与える。

  1. ステップ1:エンジニアリングチームが必要だと判断した変更をやるための、現実的な作業スケジュールを組むこと。
  2. ステップ2:コードの書き直しの作業を細かく分けて、少しずつでも製品開発が続けられていることをユーザーにわかってもらえるような形で進める。
  3. ステップ3:ユーザーに見える機能を提供するための能力が限られている状態なので、適切な機能を残すように注意しよう。機能の定義もきちんとやる必要がある。

プロダクトマネージャーの条件

優秀なプロダクトマネージャーはどこにいる?:たいていの場合、すでに会社の中にいます。彼らは、ソフトウェアエンジニア、ユーザーエクスペリエンスデザイナー、システムエンジニア(SE)などという別の肩書の人たちの中に隠れていて、声がかかるのを待っている。

  1. 資質1:製品に対する熱意
    優秀なプロダクトマネージャーは、どこの製品であっても、いい製品に対して愛情と尊敬の念を持っている。どんな製品が好きで、どうして好きなのかを質問するだけで簡単にわかる。
  2. 資質2:顧客との共感力
    ターゲットとする市場の顧客と共鳴する能力が絶対に必要。ターゲット市場のユーザーというのは、何が大切なのか、何を優先するのか、どう感じるか、どこまでなら我慢できるか、どういった経験をしてきたか、技術についてどの程度理解しているか、といった点で、自分自身やその周囲の人たちとまったく違っているものだ、と思った方がいい。
  3. 資質3:知性
    プロダクトマネジメントとは、洞察力と判断力に尽きる。頭脳明晰で洞察力のある人を見つけたいのであれば、候補者の問題解決能力を徹底的にチェックする。答えを知らないものに対してどう取り組むか。
  4. 資質4:仕事に対する倫理観
    結果を出せるプロダクトマネージャーにとって変わることがないのは、製品に対する思い入れと、製品開発を成功させるためにはどんな労をも厭わないという覚悟。
  5. 資質5:誠実さ
    プロダクトマネージャーは製品開発チームのメンバーを直接管理しているいわけではないので、メンバーに対して自分の命令どおりに動くように指示することはできない。お互いの信頼と尊敬があればこそ可能なことで、どちらもプロダクトマネージャーの誠実さにかかっている。
  6. 資質6:自信
    製品開発チーム全員、経営陣、そして営業部門は、自分たちが時間と金とキャリア(経験と知識)をつぎ込んでいるものがはたして成功するのか、目指す方向が正しいかについて、プロダクトマネージャーが確信させてくれるのを期待している。
  7. 資質7:姿勢
    結果を出せるプロダクトマネージャーは、自分自身のことを担当する製品の最高責任者だと考えている。製品について全責任を負い、言い訳をしない。自分にはよく売れる製品を作ることに対する最終的な責任がある、と理解している。

スキル

プロダクトマネジメントの仕事で成功するには、重要なスキルがいくつかある。

  1. スキル1:技術を活用すること
    よく売れる製品を定義するためには、新しい技術を理解したり、解決したい問題にその技術がどう応用できるかと確かめてみたりする必要がある。
  2. スキル2:本当に大事なものだけに集中すること
    どんな時でも解決しなければならない重要な問題に集中して、機能をやたらと増やしたくなる誘惑や、影響力のある社内の人間や客先の声高な要求に屈しない力が必要だ。大事なものだけに集中することで、ごちゃごちゃとした機能の数を減らし、製品を完成させるまでの時間を短くして、そのうえ市場に製品を届けるまでの時間とコストを減らすこともできる。
  3. スキル3:時間管理
    緊急と言われる事柄から重要なものをすばやく見分けられるように習熟することや、自分の時間にうまくメリハリをつけて計画を立てれるようになることは、絶対に必要。
  4. スキル4:コミュニケーション能力
    権威ではなく説得によって人を動かす。つまり、書いたり、話したりすることによって、言いたいことを伝える。多くの時間を書類作成に費やしている。電子メール、仕様書、報告書、戦略に関する文書、データシート、競合品評価といったものだ。読まれる書類であるからこそ、説明、教育、説得といったそれぞれの書類の目的をきちんと果たせるものではければならない。有能なプロダクトマネージャーのプレゼンテーションであれば、スライドの枚数は必要最小限、自分の製品についてのしっかりした知識と情熱があり、人を惹きつけ、わかりやすく的を得た話しぶりで、伝えたいことを裏付けるデータをスライドで示し、プレゼンの要点やプレゼン後に出席者にやってほしいことは何かをはっきりと伝える。
  5. スキル5:ビジネススキル
    プロダクトマネージャーは、開発チームと社内のその他の人たちとの間の橋渡し役として、財務部門、マーケティング部門、営業部門、経営陣とともに、それぞれの分野の専門用語や考え方を使いながら仕事をしなければならない。経営陣やマーケティング部門とは、コスト構造、利益、市場シェア、ポジショニング、ブランドなどについて意見を交わさなければならない。

会社の製品戦略を決める

最新の会社の事業戦略を深く理解した上で、事業戦略に沿った製品戦略を立てることができる。リーダーは、製品開発ビジョンを打ち立て、このビジョンに沿ってプロジェクトを進めるようにプロダクトマネージャーと協力する上で、指導的な役割を果たす。経営陣ともうまく連携する必要がある。社内のえらい人全員、特にCEO(最高経営責任者)とは、良好な信頼関係が不可欠である。さまざまな決定や理由付けについては、オープンで透明であることを求められるし、あらゆる人にとって身近で近づきやすい存在でなければならない。また、アイデアを受け入れる柔軟さを持つ一方で、優先順位がぶつかったりぼやけたりしたときには拒否しても納得してもらえるぐらいに、一目置かれている人でなければならない。

Show your support

Clapping shows how much you appreciated Kazuki Watanabe’s story.