紫式部と心を通わせる

私は1000年後の未来人

「源氏物語絵巻」の一部/世尊寺伊房[他]著/出版年不明/国立国会図書館デジタルコレクション

学校の古典の授業は、嫌いでした。何を習ったのかもよく覚えていません。この古典アレルギーを克服したいとずっと思っていて、源氏物語の単行本をついに買いました。原文と現代語訳が両方入っているやつです。(角川ソフィア文庫)

まず、桐壺の現代語訳を読み、こんな話だったのか~と驚きました。女たちの嫉妬、いじめ、ひいき、けなげに身を引く女。これって・・・話が全然古くない!現代でも身近に存在するテーマです。あらゆる面で共感できたし、すごくおもしろいと思いながら読みました。紫式部の自信作だったはずのこの物語を私が「傑作だ」と思った時点で、価値観の共有ができている。そんなとき私は勝手ながら、「紫式部と心が通じた!」と感じます。1000年の時空を超えて、誰かと思いを同じくできるなんて、凄いことです。

「古典なんて大昔の話で到底理解できない」という印象は、作品の内容が「古すぎる」と思いこんでいた頃のこと。「全然古くない」と感じる今、私にとって、紫式部はもはや大昔の人ではなく、むしろ自分のほうが1000年後の未来人なんだと感じています。いまから1000年後に私の思いを受け取ってくれる人がいるのか・・・もう絶対無理(笑)

古語の美しい響き

フランク・マコートは彼の回想録「アンジェラの灰」(Angela’s Ashes)の中で、子供の頃にハマったシェイクスピア作品の言葉の響きについて、こう書いています。

it’s like having jewels in my mouth when I say the words

映画版では、「シェイクスピアの言葉は、口の中で転がす宝石」というふうに訳されていたと思います。当時まだ10歳ほどで言葉の意味は全然分からないけど、気に入ったフレーズを何度も暗唱して楽しむ姿が描かれていました。

源氏物語も、今の私にとってはまさにそんな感じで、言葉の美しい響きに包まれるだけでも心地いいです。こんな前向きな姿勢で古典の授業を受けたかったな・・・。(反省を込めて。)勉強って、内容よりも前に、最初の動機付けとか興味の持ち方がとても大事なんですね。