Junpei Nousaku renovated a social housing in Fujimidai, Tokyo

能作建築設計事務所による「富士見台団地のリノベーション」

dezain.net blog
4 min readAug 20, 2014

建築家能作淳平が50年前に建てられた団地の一室を改修したプロジェクトを紹介します。ここでは既存の空間の要素を「間取り」と「部位」にわけて考えて設計が試みられています。暮らしの枠組みとなる間取りは大きく変えつつ、身体的な感覚に作用する建具や床材については転用することで、団地特有の和風のしつらいやスケール感を継承しつつ、現在の生活にあわせた空間が実現されています。

以下建築家によるテキストです。

この改修は団地に家族3人の住まいと小さな仕事場をつくる計画だ。50年前に建てられたこの団地は戦災復興のために不燃である鉄筋コンクリート造でつくられた近代的な建物でありながらも、内部は畳や襖などの日本家屋の要素が今でも残されており、現代の集合住宅に見られない心地良さがある。しかしそのままでは少し使いにくい。例えば、キッチン以外の部屋は畳敷きの和室のため、椅子は置けない。間取りも基本的に4畳半と6畳で構成されているため、大人数で集まるには少し狭い。なるべく団地の持つ心地良さを残しつつ、この不自由さを解消できないだろうか。そこで団地を間取りと部位に分けて考えてみることにした。間取りは用途や使用する人数など、使い方の大枠を決める。使い方が多様化している現代には当時の間取りは適応しにくい。それに対して畳や襖などの部位は触り心地、使い心地など、手で触れる身体的な要素である。こちらは時代に影響を受けにくく、現代にも通じる要素であろう。そこで、この改修では仕切りを取払い、なるべく広くしつつ、各所に既存部位を残すことにした。全てを一度に壊して新しく作り直すのではなく、施工しながらその都度どこまで壊すのか、どのように壊すのか検討する必要があったため、基本的に全て自主施工で行った。例えば、畳は表替えをしてベンチにして、テーブルと畳を一緒に使えるようにしたり、押入れは仕事用のデスクにしたり、襖を麻に貼りかえることで風通しの良い襖にした。

全て当時のまま保存するのではなく、現代の生活のなかでどのように使えるのかを考えることで、団地の持っている心地良さを現代に受け継ぐことができるのではないだろうか。

【Profile】能作淳平
1983年富山県生まれ
2006年武蔵工業大学(現・東京都市大学)卒業
2006~2010年長谷川豪建築設計事務所勤務
2010年能作淳平建築設計事務所設立
2013年SD Review 2013 鹿島賞受賞

Posted by Shinichi Kawakatsu

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