アイ先生はわからない / 児玉潤

“アイ先生はわからない 1巻”より

本当の「愛」とは何なのだろう?

”アイ先生はわからない 2巻”より

人はそれぞれの言葉を用いて「愛」について語った
 幾千、幾万、幾億の言葉で「愛」について考察してきた
 なら、その「愛」がみな共通しているものなら
 言葉を読み解いていけば「愛」を知らない者でも、
 「愛」を知ることができるはずだ・・・

そう考えたのが、この本のタイトルにもなっている「アイ先生」こと「入間アイ」

このアイ先生、感情が欠如しており
 大人なのに一度も人を好きになったことが無い

アイ先生は文学を通して「愛」を知ろうとするのだが、赤色を見たことがない人に

”アイ先生はわからない 2巻”より

赤色を理解させることができないように
 どんなに本を読もうとも”アイ先生はわからない”のだ

だから、アイ先生は「愛」について
 文学から考察し、
 仮説を立て、
 その事が正しいか実験することにした

この本のアプローチとしておもしろいと思ったのが、まさにコレで
 「愛」を知るためにすることが
 色々な事を経験し成長していく少女漫画のような恋愛劇ではなく
 「愛の実験」

実験とは言うものの、題材が「愛」だけあって、どこか哲学的だし
 様々な文学作品の言葉を引用する事により
 アイ先生の実験結果にも説得力がある

過激な実験

”アイ先生はわからない 1巻”より

アイ先生の感情が欠如しているせいか
 まあ、人の気持ちなど考えてくれない

見方によっては良心の無いサイコパスだし
 やや恐ろしさがある

美人でなければ
 誰も近なずかなそうな危険人物
 それが「アイ先生」

もしも、そんな危険人物の前で
 うっかり「死んでも離れたくない❤」なんて
 恋人といちゃつくような事をしたもんなら
 アイ先生の愛の無い実験が始まってしまう

“アイ先生はわからない 1巻”より

別に恋人達に嫉妬したり憤慨してる訳ではなく
 純粋に「愛」を探求しているだけなのだが

愛を知らない為か
 とても・・・
 とてもとても恐ろしい・・・

実験の結果がどうなろうとも構わない
 相手を傷つけようが
 自分の生徒を実験モルモットにしようが関係無い

それが傷害だろうが脅迫だろうが
 偉大な愛の前では全て無罪

まあ、当たり前といえば当たり前で
 愛を知らないアイ先生は
 人を人として見ていない節がある

あ・・・やっぱサイコパスやん、この人

愛を知らぬ者の人生は・・・・ニセモノである

“アイ先生はわからない 3巻”より

“アイ先生はわからない 3巻”より

一つ愛の実験を行う度に

「愛」について片鱗を触ることができるのだが
 何分、愛には実体が無いわけだし
 人それぞれ愛の定義は違う

答えを求めても
 新しい問題が浮き出てくる

それでも
 愛を読み解いていくうちに
 アイ先生に、僅かながらも変化が出てくる

時に「愛」に失望しながらも
 「愛」を渇望する姿には心揺さぶられるものがある

アイ先生の実験場・疑似恋愛倶楽部

ここではアイ先生が捕まえたモルモット達に
 ミッションを与え疑似恋愛をしてもらう
 実験中にモルモットの人間関係が壊れようが知った事ではない
 もちろんこのクラブは
 実験の経過を観察するアイ先生の為だけのクラブなのだ

しかし
 モルモット達もアイ先生と一緒に
 愛について真摯に向き合う度に
 少しずつ成長していく

いや、アイ先生のモルモット達だけではないだろう

自分ら読者側も「愛」を多面的に見ることができ
 より深く考えることができるのである

“アイ先生はわからない 1巻”より

それは、このマンガの主人公はアイ先生ではなく
 モルモットにされてしまった内向的な少年の月成君が主人公だから

普通の感性で
 共感できるところも多い
 少し斜めに物事を見るところもあるが
 それも共感できてしまう

また、先人達の言葉が
 絶妙のタイミングで挿入される事で深みが増し、
 読者は作品を読み終えた後でも
 その深みから余韻を楽しめる事ができ
 愛について各々に考えを
 じっくり巡らせる事ができるのである

ジャンル・・・・冷酷無慈悲ラブストーリー
おすすめ層・・・愛について学びたい方
出版社・・・・・講談社
連載雑誌・・・・少年マガジンエッジ
連載開始・・・・2015年10月

補足説明

キャラは良く描けてる印象でした
 注文つけるなら、登場するのは個性的なキャラ達だったので
 もっと細やかに性格を描いて欲しかった

ストーリーは人間関係が徐々に変化していったが
 ラブコメみたいに期待するような感じの展開でも無いし
 ストーリーメインという風には感じなかった

基礎画力は違和感なく描けているが、時より人体バランスが悪い時がある

漫画絵の完成度は女性の描き方は可愛いし目の描き方も少女漫画のように力が入っていた
 もっと突き詰めれば、本当に目を惹く絵が描けそうな期待がある

演出力は引用のチョイスが素晴らしかった
 色々な演出法を試してる感じはあったが少し拙さが目立った
 立ち絵も見せるなら見せるで”魅せる”演出をして欲しかった

構成力は適度に大コマとかを使い作品自体は読みやすかった
 テーマが愛だけにセリフが多かったのだが
 コマの中が、ぎゅうぎゅう詰めになっている印象はなかった

セリフは説得力があった
 盛り上がるところでのセリフ回しは、感情移入して読むことができた

オリジナリティーは冴えない少年と美人の先生という、ある意味ベタな感じはした
 悪くは全く無いのだが他にもベタなものは多かった

面白さはテーマが重い面もあるの非常にバランスが良く
 全くストレスなく読めた
 もちろん、考えさせられるところは良く考えさせられた
 全体的に良くまとまった作品だったし面白かった


Originally published at The Reason.