PinnedDominick CheninModern Japanese Literature as a Commonsコモンズとしての日本近代文学:このアーカイブについてここでは、21編のパブリックドメインの日本近代文学作品を青空文庫より選び、著者がそれぞれに応答して文章を書き下ろした、ドミニク・チェン「コモンズとしての日本近代文学」(イースト・プレス、2021年8月20日刊行)に収められた21編の書き下ろし文のみを集め、オープンソースの思想に基…Aug 15, 2021Aug 15, 2021
PinnedDominick CheninModern Japanese Literature as a Commonsはじめに・文芸オープンソース宣言今日、日本語で書かれた近代文学作品の多くにネット上でアクセスできる。インターネットの電子図書館「青空文庫」には、2021年7月の時点で1万6千以上の作品が収録されており、その大半が著作権の保護期間が過ぎたパブリック・ドメインのものだ。パソコンから、もしくはスマホやタブレットから、…Aug 13, 2021Aug 13, 2021
Dominick CheninModern Japanese Literature as a Commons泉 鏡花『海神別荘』:異界の論理なんという混沌とした、それでいてエレガントなイメージの喚起力なのだろう。海の底の奇譚『海神別荘』、奥深い山中の怪談『高野聖』†、もしくは春の昼下がりに起こる夢の交差録『春昼』†を読む時、まるでジャン・ピエール・ジュネのファンタジー映画かミシェル・ゴンドリーのミュージック…Aug 20, 2021Aug 20, 2021
Dominick CheninModern Japanese Literature as a Commons折口信夫『死者の書』:死者と生者の異時同図これは登場人物たちが時間と空間を超越し、彼らの人格もまた融解しあう、不可思議な物語だ。「不可思議」とは本来「思議すべからず」という意で、人間に備わった生来の感覚や思考では体験し得ないことを指す。『死者の書』における不可思議とは、まずもって「死」そのものであり、次に死者との交感…Aug 20, 2021Aug 20, 2021
Dominick CheninModern Japanese Literature as a Commons谷崎潤一郎『陰翳礼讃』:陰影という名の自由2019年の真夏に、とある研究合宿のために、京都は妙心寺境内の禅寺、春光院を訪れた。カナダ、イギリス、サウジアラビア、韓国から心理学の研究者を招聘し、西洋圏以外の地域における幸福の捉え方を学術的に議論する会合だった。わずか3日間の日程だったが、ただ理知的な議論を交わすだけでは…Aug 20, 2021Aug 20, 2021
Dominick CheninModern Japanese Literature as a Commons林 芙美子『清貧の書』:世界への信頼を回復する1929年10月のウォールストリートにおける株価の大暴落が発端となり、翌1930年には世界中に経済恐慌が伝播していった。日本では1930年に昭和恐慌が発現し、250万人以上の失業者が生まれ、さらには農産物の価格の崩落と冷害による大凶作に見舞われた昭和農業恐慌が起こった。Aug 20, 2021Aug 20, 2021
Dominick CheninModern Japanese Literature as a Commons柳 宗悦『雑器の美』:アノニマス・デザインの愛で方日常の他愛のない雑器の価値を積極的に見出そうとするこの短いテキストは、1926年、柳宗悦が37歳の時に書かれた。この前年には「民藝」という概念を提唱し、同26年に「日本民藝美術館設立趣意書」を発表、翌々年の1928年にはその理論モデルとなる『工藝の道』†を著している。Aug 20, 2021Aug 20, 2021
Dominick CheninModern Japanese Literature as a Commons内藤湖南『大阪の町人学者富永仲基』:アップデートされる宗教大正14年(1925)、日本と中国の歴史に精通する東洋学者として知られる内藤湖南が59歳の時に、大阪毎日新聞の講演会で話した時の筆記である。表題の示す通り、18世紀前半を生きた大阪出身の町人学者、富永仲基がいかに先進的な宗教研究を行ったか、ということを集中的に語っている。Aug 20, 2021Aug 20, 2021
Dominick CheninModern Japanese Literature as a Commons南方熊楠『神社合祀に関する意見』:神々と生命のエコロジーこの文章は、明治政府が推進していた神社合祀に反対する運動への協力を求めるべく、南方熊楠が植物学者の白井光太郎に宛てた書簡である。全体で3万2千字ほどもある長文であり、内容も私信のレベルを超えて大論文の威容を放っている。現代でいえば「超長文メール」が公のものとして保存されて…Aug 20, 2021Aug 20, 2021
Dominick CheninModern Japanese Literature as a Commons宮沢賢治『インドラの網』:縁起を生きるための文学ヒンズー教において天上と地上の世界を統べるインドラは、仏教に改宗して帝釈天と呼ばれるようになった。空海が中国より持ち帰り、発展させた華厳経では、このインドラが住む宮殿のアーキテクチャをイメージすることが、生きながらにして悟る(即身成仏)ための方法として説かれている。Aug 20, 2021Aug 20, 2021