シリコンバレーのベンチャーと開発プロジェクトを進める上で大切なこと

Daisuke Tanaka
4 min readJan 15, 2019

過去10年以上、日本企業とシリコンバレーのベンチャー企業の技術的な窓口をやってきて、いろいろと文化の違いというか、進め方の違いというものを感じてきました。

特に私の場合、Eye-FiというSDカード端末とカメラのファームウェアが特殊なプロトコルで通信するような仕組みをサポートしてもらったり、Misfitが持つ独自技術を使った開発の受託案件など、何度も日米のエンジニア同士が話し合う場面に立ち会ってきました。

その中で、受託を本業としていないシリコンバレーのベンチャー企業に対して、日本の企業が開発を依頼する時の留意事項をまとめてみました。

1)「簡単な機能」かどうかは依頼する側が判断しない

開発が簡単かどうかは開発側が判断することです。誰でもできる開発を依頼してるなら話は別ですが、「簡単だと思うなら自分たちで開発してよ」というのが開発する側の気持ちです。なにか機能を追加したい場合は「こういう目的でこういう機能をつけたいんだが、どうだろう?もっと良い方法はないかな?」とディスカッションしながら進めることをオススメします。

また、「この程度の開発でこんなに費用がかかるはずなない」と、人月勘定で費用をミリミリ査定する日本企業のお偉いさんがいます。世界中を探してもそこにしかない技術とエンジニアを使うわけですから、そういう考えは一切捨てて、まずはやりたいことを正確に伝えてオーバースペックな開発を抑えることに注力しましょう。

2)たとえ些細なことでも仕様の後出しをしない

日本企業はどうしても「発注者側が偉い」と考えがちで、開発プロジェクトが進んだあとに「やっぱりこの機能追加して、おねがい!」みたいな感じで軽々しく仕様を追加しようとしますが、これはNGです。どうしても必要であれば、追加費用とスケジュールの引き直しを前提にちゃんと理由を伝えて合意してから依頼するべきです。

「発注者が偉い」は日本のゼネコン的な人月勘定を引きずったIT業界の悪しき習慣です。もっとひどいのは、投資した側の企業が「投資してやったんだから言うこと聞け」的な態度を取ることです。このような態度を取ったある大手通信会社の担当者に対して、私は自分のキャリアの中で一度だけ本気で怒ったことがあります。「開発していただいている」というところまでへりくだる必要はありませんが、「一緒に努力して良いものを作る」という精神は大事にしたいところです。

3)会議の場では徹底的に理解を深める

海外とのプロジェクトはなかなか対面の会議の時間が取れないものです。私の経験から、プロジェクトの成功度合いは、どれだけ会議で双方のエンジニアが議論に参加したかに比例すると信じています。よく若手のエンジニアで会議中に一言も話さなかったのに「僕の考えでは、あそこはこうしたらもっと効率良くできますよね?」とか会議が終わったあとに言う人がいますが、そういう人にはさっさとプロジェクトから外れてもらいましょう。私が「なんで会議の場で聞かなかったんですか?」というと大抵「いや、英語でちゃんと表現できないんで」とか答えます。

私は過去に全く英語を話せない日本のベテランエンジニアがホワイトボード上の数式と図と身振り手振りで海外エンジニアと何時間もやりとりし、最後には完全な共通認識と信頼関係を築きあげる場面を何度も見てきました。知識と情熱と誠実さがあれば、言葉の壁は越えられます。これはエンジニアでない私がいつも見ていて羨ましいと思うことの一つです。

いろいろと文化の壁、言葉の壁などありますが、お互いをリスペクトしながら一つのプロダクトができていく過程はとてもエキサイティングです。そして、それを世に送り出せたときの喜びは格別で、何物にも代えがたい経験になります。

私の経験が、太平洋をまたいだどこかのプロジェクトのお役に立てば幸いです。

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Daisuke Tanaka

シリアルアントレプレナーもどき、投資家もどき、良き父親もどき、正統派酔っ払い。身近な人から幸せにして、最終的には世界中が平和で幸せになればいいなと、本気で思って活動しています。