脳がストーリーを欲しがる理由

「説明よりもストーリーが必要なんだ。」という助言を何度も聞いた事はありませんか。私自身も何度もそのような助言をしました。では、なぜ「ストーリー」は「説明する」より受け入られるのでしょうか?下記の例を見ましょう。

論理的シンプルな説明

ある病院のHPを改善するために、ウェブデザイナーが現状の問題点として以下のスライドを作成しました。

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当サイトに対するクレームTOP3

  • 検索機能が何処にあるかわからない 20%
  • 病内案内図はない 17%
  • アクセス画面で地図が表示されない 13%

神奈川県立こども総合病院の調査による(150名)

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そのあと、彼は問題となっている画面を見せながら、具体的に説明していきます。その後で改善提案したHPのデザインを見せて説明します。

上記の説明は、シンプルで理論的、ポイントも押さえていますね。しかし、少し物足りない気がします。では、次の例はどうでしょうか。

有馬家の物語

有馬さんの娘が突然倒れました。熱があり、呼吸も苦しそうにしています。両親が近くの病院に連れて行きました。町医者は彼女を診て、ここでは対応できないと判断し、神奈川県立こども総合病院へ直ぐに行って欲しいと言われます。総合病院は、ここから50キロ離れています。

救急車が直ぐに調達できず、車で総合病院へ行くことにしました。親は込み上げる様々な感情を振り払い、とにかく総合病院を目指しました。運転途中に母は気付きました。大凡の場所わかりますが、車でどこから入ればよいかわかりません。車を一旦停止してスマートフォンでアクセス場所を確認しました。表示された画面は、文字が小さく灰色で見づらく母親はイライラしました。スマートフォンでは、デスクトップ用のページしか表されませんでした。

リンクを必死に読みましたが、焦っていることもあり、アクセス場所に関する情報へなかなかたどり着けません。住所も表示されないので、google mapでも検索でききません。一番右下に病院の電話番号が記載されていましたが、気づくことが出来ませんでした。母親がいち早くその電話番号に気づいて電話をかければ、場所と駐車場への入り方は直ぐにわかったでしょう。母親はイライラして車を発進させました。

このようにHPのデザインミスで有馬さんを含め100人以上の家族がもどかしい思いをしました。必要な情報が直ぐに見つけられないのです。私は150人の来院者の話を聞き、不満を持っている事がわかりました。有馬さんたちの声を厳正に受け止め、このサイトを早急に変更しなければなりません。

ザ・チョイス

シンプルで論理的なスライドによる説明とストーリーにより現状を伝える方法では、どちらがHP改善の必要性を感じましたでしょうか。

おそらく、ストーリーによる伝え方を選ばれる方が多いと思います。でも、なぜ皆さんはその選択をされるのでしょうか。答えは脳にあります。

単なる数字、統計、文字のスライドの場合、ブローカ野で処理されるだけです。ブローカ野は言語を処理する場所です。

一方、ストーリーがあると、それ以外の脳も反応します。つまり、視覚系・聴覚系・感覚系脳が加わると、それを担当している脳の部分が対応します。人物の感情の詳細なら、感情に対応する脳の部分も参加します。情報を客観的にみるだけではなく、体験を想像して、そのキャラクターの感情も味わうのです。

脳とストーリー

とは言ってもなぜ脳がそんなに反応するのでしょうか。ブローカ野でちゃちゃと処理してくれば合理的でしょう。

私達が生き残るために脳はあります。例えば、あなたが剣歯虎(けんしこ:ネコ科に属する食肉獣)に遭遇したら脳がすぐ危険を察知し体を動かせます。しかし、人間は他の動物と比べて本能が鈍いので、世の中を観察して人間の因果関係を学びます。AはBを引き起こす。Xをやるなら、Yが起こります。それを自分の体験から学びます。しかし、それだけで十分でしょうか?幼少時に先生や本から多くを学びました。これは自分で体験せずに知識を注入されているのですが、十分に勉強になりました。

我々の脳は非常に怠けものです。他人のストーリーを聞くと物事を学び、時間、エネルギーを削減できるし、リスクも押さえられます。記憶を作るにはエネルギーも必要なので、不必要なものは脳があまり覚えたくないのです。ブローカ野だけで処理して記憶すると、たくさんの「ゴミデータ」を覚えてしまいます。

ご自身でも振り返ってみてください。聞いた言葉、見た単語、考えた言葉の中でどれだけが記憶に残るでしょうか?多分、ごくごく一部でしょう。

記憶に残すためには、脳に重要であるシグナルを出す必要があるため五感や感情を使うと効果的なのです。ストーリーがそれを綺麗にパッケージしてくれます。

聴衆をあなたの世界に誘導し、主張したいポイントを覚え、聴衆が納得するにはストーリーが必要なのです。適当なストーリーではなく、聴衆の状況と関連性のあるストーリーで、行動を起こさせるストーリーや聴衆と共感できるストーリーが必要なのです。ですから、プレゼンのときにストーリーを語りましょう!

HP: Power Presentation