ere nakadainafterwecameback知りえないことの外側をなぞる時おり周囲を見渡して、どこに何があるのかを確かめてみる。ここは私の部屋で、冬に弱ってしまった植物は今は元気に葉を広げていて、足で床をさわると埃やらなんやらですこしざらついていて、机の上には卒論で引用するために持ってきた本が数冊積まれたままになっている。しかしそれ以外のこと、つまり…Jul 27, 2023Jul 27, 2023
ere nakadainafterwecameback文章をまとめる日ベランダから室内の方へ振り返り、ここは10年のあいだ私の部屋だったのか、と粗大ゴミとして回収されるのを動かずにじっと待つベッドをながめる。実家を出てから1年とちょっとしか経っていないことに気がつき、おどろいた。生活の臭いはあっという間に消えてなくなってしまうみたいだ。棚の奥に隠さ…Jun 26, 2023Jun 26, 2023
ere nakadainafterwecameback遊歩するラナ・デル・レイ雨にぬれた石だたみが暗い夜の光を物憂げに反射するなか、ピアノの音が41秒間すらすらと歩みつづける。そしてそこに現れる「私はパリに行った」という歌声。映画の中で幾度となく美しいものとして描かれ続けてきたその都市のなかで、グレース・ケリーやキム・ノヴァクといった50年代のハリウッド女…May 25, 2023May 25, 2023
ere nakadainafterwecamebackなにか他の方法静まりかえった、からんとした空間の広がりに耳を澄ます。もうずいぶん長いあいだ、自分のために文章を読むことから遠ざかっていたように感じる。口に含むとじんわりあたたかい水を飲みながら、このあいだ読み終えた小説に書かれていた文章の、文字のかたちが現れてくるまでずっとくちびるでなぞってい…Apr 26, 2023Apr 26, 2023
ere nakadainただいまを言いたくて書く今は、何かを書こうとするたび、それによって不本意に誰かのことを脅かしてしまうのではないかということが頭に浮かんできて、とても怖くなる。友人がInstagramに投稿していた「私なんて死んだほうがサステナブル」という言葉を思い出した。Aug 20, 2022Aug 20, 2022
ere nakadainただいまを言いたくて語るここ1週間で何回「言語化」という言葉を口にしただろうか。言語化する。言語化しなければならない。言語化する必要がある…。中学時代はこの言葉を全く使っていなかったと思う。多分高校生のころもほとんど。誰かに何かを伝えようとする試みに対する諦念だけが、自分の内側を占めていたからであると記…Jun 19, 2022Jun 19, 2022
ere nakadainただいまを言いたくて触れるロベール・ブレッソンの『シネマトグラフ覚書』という本をりゅうと君が貸してくれた。撮影の前に必ず読み返す本だと言っていたのは本当で、しっかりと読み古されているのだとページをめくるたびに実感した。ロベール・ブレッソンといえば『田舎司祭の日記』『やさしい女』などが有名で、最近は日本で劇…May 19, 2022May 19, 2022
ere nakadainただいまを言いたくている1年間かけて作った映画が先月末にようやく完成した。映画の視聴リンクを様々な方に送り、感想やアドバイスをいただくなかで、「出ている役者に対して、えれが興味をもっていないように見えた」という言葉が強く印象に残っている。撮影、そして監督としてどのようにカメラの先に「いる」役者と接すれば…Apr 19, 2022Apr 19, 2022
ere nakadainexploring the power of placeくっつかなくても、あったかい相手との心の距離は、近いものほど素晴らしく、遠いものほど価値がないように思える。Feb 19, 2021Feb 19, 2021
ere nakadainexploring the power of place気が遠くなるほどの近さ日が暮れた後のヒースの丘をイメージしてもらいたい。夜の青い光に照らされた美しい花々に囲まれながら、まるで自然が自分自身であるかのように感じる広大な景色を見渡す。そのなかで、なぜか全く知らない他人が自分からだいたい50センチほどのところで体内から生暖かい吐息を排出していたとする。Dec 19, 2020Dec 19, 2020