クリエイティブ・コンフィデンス

創造力に対する自信

Erika Ito
9 min readOct 10, 2016

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by Julie Zhuo

先日、面接をした際に「完璧な作り手に求めるものは何ですか?」という質問を受けました。

すぐにたくさんの要素が頭に浮かんできて、10分間もノンストップで話ができそうな勢いでした。そのうちのいくつかは、以前も記事にしました。また、絵に描いたこともありました。「ゼロから、新しくていいものを作り出すには何が必要なのだろう?」きっとこの、一見シンプルな疑問を噛み砕いて、問いかけて、実験して、そこに隠された色んな意味を拾い集めることが、私がこの仕事に魅せられている理由なのかもしれません。(※リンクは全て英語記事)

でも、悲しいかな。長い長いリストになった項目は、答えとは言えません。もし私が長話をしたとしても、面接でその質問を投げかけた志願者は、礼儀正しく座ったままポカンとした顔で私を見つめたことだろうと思います。私たち人間は、例え話や諺など、シンプルなものに合わせてデザインされています。もし答えが覚えられないほど複雑だったなら、それは本当の答えとは言えないでしょう。

だからその代わりに、私は「創造力に対する自信」と答えました。最近、私が面接をするときに重要視するのはこのことです。

この言い回しは、デイビット・ケリーとトム・ケリーの本で初めて目にしました。(※邦題:クリエイティブ・マインドセット)この響きは私の舌を滑り落ち、耳の中で心地よい音色を奏でながら踊り出したかのようでした。すぐにどういう意味かを理解しました。これこそ私が追い求めていた言葉でした。世界中のクリエイティブな人のための聖杯、確固とした信念であり、私たちが触り作り出したものは、混乱の終わりには全て素晴らしいものへ変わるだろう!そんな感覚そのものです。

ただ、これは諸刃の剣でもあるのです。何もないところから、唯一無二のものを作り出すというのは、あやふやなことです。それまで無かったものを作ろうとすることの美学は、出来上がるまで想像がつかないということにあるのですから。どのくらいの時間をかければ、なにかいいものが出来るのか。それを知ることはできません。

同時に、私たち人間は、確実なものを好みます。私たちは、次の食事がどこから出てくるのか、知りたいものです。また、約束を守る人を好みますよね。さらに、複数人で何かに取り組むときには、計画が必須です。

成功の秘密は、確実性と創造の間でうまくバランスを取ることです。不確実な創造が勝ってしまうと、スケール出来なくなってしまいます。次の映画が仕上がる時期が来年、再来年、もしくは7年先かも分からない映画監督がいたらどうでしょうか?彼女の映画がどんなに素晴らしくても、支援できますか?また、締切や取決めを全く守れない天才と仕事をしようと思いますか?

逆に、確実性を何よりも大切にすると、結末が予測できてしまう映画のように、そこそこな、独創性のないモノにしかなりません。確実性を必要以上に大切にすると、過去に見たことのあるものしか選択できなくなるでしょう。それでは、予算、スケジュール、方法と成果を正確に予測できる代わりに、イノベイティブな結果に賞をもらうような機会も滅多にこないでしょう。

創造力に対する自信を持っている人は、2つのバランスを取る方法を理解しています。その人は、不確実性、フライングスタート、そして失敗は、創造には必要なものだと理解し、受け入れています。しかし同時に、一緒に仕事をする周囲の人へ、スケジュール感を共有し、安定感も感じさせます。そう、彼女は、一見バラバラの断片にも素敵なストーリーが隠されていて、全ての失敗は私たちをより高みへ導き、この映画の試写会の日には、映画館に電流が走るようになるだろう、と感じさせてくれます。

では、創造的な自信を持っている人はどんな人でしょうか?

  1. 激しい風が吹いている時でも、腰を据えて安定していることができる人。プロダクトについて、20人の人が別々の20個の意見を持っているとき、動揺して全てのステークホルダーの要望を取り入れようとしたり、全員の「平均」となる結論を下すのは簡単なことです。しかし、創造力に対する自信を持っている人は、行き先を見失うことはありません。彼女の足は、向かうべき方を向いてしっかりと地に着き、論理的な原則(※英語記事)に従い、しっかりと自分の方法で考え、リサーチをし、プロダクトを使うようになるユーザーから直接学ぶことでしょう。
  2. 仕事に厳格に向き合っている人。どういうことかというと、事前に様々な代替案について検討していて、その人の提案内容に穴を見つけるのが難しい人ということです。あなたが「Xについては考えてありますか?」と質問をすると、「はい、Xについても検討しましたが、次のようなマイナス要素があり…」といった答えが必ず返ってくるでしょう。あなたは、彼女が事前に仕事にしっかり取り組んでいることを知り、彼女の思慮深さ、勤勉さ、クオリティの高いアウトプットから学びを得た、という感覚になるはずです。
  3. なにを成し遂げようとしているかが明確な人。創造的な自信を持っている人は、全ての仕事を、問題の解決や、手に入れようとしているチャンスを土台にして進めていきます。もしも道に迷ったときには、再度立ち戻って、何が大切だったのか、優先順位について確認をするでしょう。
  4. まだ答えが見つかっていないときは正直に認た上で、どうすれば答えが見つかるのか、明確に考えを提示できる人。それは、どんな形でもあり得ます。例えばマイルストーンの設定、順序立てられた手順の提示、メンバーの入れ替えや戦略の見直しなど – ここで大切なのは、計画があるということが自信へと繋がり、先の見えない闇の中をどう進めばいいのかが見えてくるということです。

さて、ここまではいいですね。でも、もし創造力に関する自信がなかったら、どうすればいいのでしょうか?ここからが面白いところです。

  1. 自信は手に入れるものだと、信じること。私がお気に入りのトム・ストッキーの記事(※英語記事)では、私が説明できる以上に、上手く次のようにまとめられています。「自信を育てるということの本当のところは、自己認識成長思考の2つのスキルを育てるということです。」まず最初のステップは、自分のことを可能なだけ客観的に見つめること — 何が得意で、何が不得意なのか? — で、次のステップは、今の自分を受け入れ、時間をかけて続けていけば辿り着ける、ゴールへの出発地点だと理解することです。
  2. クリエイティブな作業を何度も何度も、何度も繰り返すこと。これに近道なんてものはありません。世の中にある全ての本を読んで知識を蓄えることはできます。でも、実際に何かを作りきる、もしくは失敗をするために、数え切れないほど手を動かして実験をしなければ、ゼロから始めて、死なずに仕上がったときに初めて手に入れられる自信を得ることはできません。11時間、何もアイディアや手立てが浮かばず、壁に頭を打ち付けたい時、どうやったら正気を保つことができるのでしょうか?それは、全く同じ様なストレスを何度も何度も経験して、それでも生き残った経験があればこそです。これは、短気な人にとってはいいアドバイスだとは言えないかもしれません。でも、私は高い実力を持った人と一緒に仕事をすると、この事実にとても助けられ、安心させられます。どんな結果になっても、シンプルに手を動かすこと、これが経験と学びを蓄積し、後々の創造力に対する自信に変わっていくのです。
  3. スキルを身に付け、改善すること。私が今まで出会った創造力に対する自信を持つ人は皆、その人の業種のどこかの分野でトップ5%に入っていて、かつその能力を自覚していました。どんなに人に好かれている人でも、創造力と自信は、やりたいと思っているだけ、または、少しやってみただけでは手に入れることはできません。実務で使えるスキルがあり、さらに実績がなければ、信頼されることはありません。それがなければ、ただの傲慢な人です(自分だけは創造力に対する自信を持っていると勘違いしているが、自己評価がしっかりできていない状態)。仕事に真剣に取り組みましょう。「この仕事を終わらせるのに最低限必要なものはなんだろう?」なんて考えるのはやめて、「今までの仕事の中でも最高のものを作り出すにはどうしたらいいんだろう?」と考えるようにしましょう。ピカピカになるまで仕事を磨きましょう。厳格な目で評価をしましょう。もしも、自分の目が信じられないのなら、誰か厳格な目を持った人へフィードバックを求めましょう。
  4. プロセスを補強していくこと。石のように硬く堅実なプロセス — 繰り返すことができる工程 — は、創造力に対する自信にとっての黄金のがちょうです。繰り返すことができる工程とは、次のようなものです。⑴あなた自身、または信頼できる人たちが思いついた全てのアイディアを検討すること。これは、時間がかかる上に面白くないように感じるかもしれませんが、簡単な算数の問題です。もしも、文字通り、全てのアイディアを検証し終わった頃には、その中からベストな案を見つけていることでしょう。また、手を動かしてモノを作る力を身につけるにつれて、良くない案がどれか、より早い段階で気づけるようにもなります。でも、もしも行き詰まっても、地道に進めることの可能性を疑ってはいけません。⑵早い段階で、頭のいい人たちからできるだけ多くのフィードバックをもらうこと。それによって、全く違う意見や食い違ったコメントを貰うかもしれませんが、幅広い視点からのフィードバックは、メリットとデメリットを慎重に検討する際に役に立ちます。もしも、みんながあなたの考えに同意したら?(※英語記事)それも、いいことです。あなたの仕事はそこで完了です。⑶作るモノを使う人たちと繋がること。ユーザーリサーチの力を過大評価するのは本当に難しいことです。上手くユーザーリサーチができれば、他のどんな方法とも比較にならないほど、人の考えや行動の裏にある「なぜ?」の部分を知ることができます。あなたが解決しようとしている問題、また、それに対する解決案が、「ユーザーにとって価値がる」と証明することほど、自信につながるものはないでしょう。

創造力に対する自信は、他のどんなスキルとも同じように、一歩一歩、一日ずつ、プロジェクトごとに、身に付けていくことができます。好奇心を持って取り組み、手を動かしましょう。

そして、あなたが作る映画の試写会の日、その映画の結末がどんなものであれ、それが素晴らしく、雷のような拍手で迎え入れられるといいな、と思っています。

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Erika Ito

Product Designer at VMware Tanzu Labs (former Pivotal Labs) in Tokyo. Ex Medium Japan translator. | デザインに関すること、祖父の戦争体験記、個人的なことなど幅広く書いています😊