コンテンツの決定からイラストが描きあがるまでの7つのステップ

Erika Ito
9 min readNov 26, 2015

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アニメーションってどうやって作られてるの?

テレビ、アプリ、電車や駅のディスプレイ広告、、最近では、テレビや映画館以外にも、毎日様々なところでアニメーションを目にしますよね。ほとんどの場合、アニメーションはまずイラストを起こしてから、それを動かすという過程を経て作られています。

今回は、nudoがTokyo Design Weekに出展した、Diver in the Darkでイラストを担当したスタッフ2人(上ちゃん& Yuuki Oda)に描きあげまでのステップを聞いてみました!

複数人での連携作業のコツや、イラストからアニメーションへ移行しやすいデータの作り方もご紹介します。

▼Diver in the Darkの会期中の様子のムービーができあがりました!

ステップ1:イラストのトーンを決める

ステップ2:コンテンツの演出、全体像を作成する

ステップ3:描き起こすイラストと優先度を決定する

ステップ4:イラストの軸となる「裏テーマ」を決める

ステップ5:実際の環境で検証する

ステップ6:アニメーションの動きを検証する

ステップ7:アニメーション用にファイルを整理する

ステップ1

イラストのトーンを決める

トーンを決めるには、まず参考のアニメーションやイラストをたくさん収集することから始めます。水彩、アウトライン強め、細密、、など。これはブレストのときと同じように、まずはたくさんの参考を集めてから整理して絞る、という手順で進めます。

トーンを決める際、できるだけ実際の見え方を想像して話をすることが大切です。話し合いをしても、それぞれが違うものをイメージしていたら、時間がもったいないですよね。

今回は、懐中電灯で照らされる様子を、穴をあけた紙で再現しました。原始的な方法ですが、とても有効なプロトタイプだったと思います。

紙とプロジェクターだけを使った、一番最初のプロトタイプ
TDW公式媒体用に提出したイラスト

〜裏話〜

ちなみに、、TDWの公式サイトとパンフレットで使われているイラストは、トーンが決まる前に提出の締め切りがありました。そのため、実際の出来上がりとパンフレットのイラストはよく見ると微妙に仕上がりとトーンが違います。(ほかの展示でも、パンフレットと実物のイメージが違うものがありましたが、同じ事情だと思います。)

ステップ2

コンテンツの演出、全体像を作成する

イラストのトーンが決まっても、具体的に何を描くかが決まっていなければ作業は進められません。そこで、次のステップは演出案の決定と全体像の作成です。

演出案では、どんなキャラクターがどんな動きをするかを考えます。これは実際に魚の生態をリサーチして、「怒ると膨らんで波に流されるハリセンボン」や、「岩に擬態するタコ」など、面白いアニメーションになりそうなものを選びました。そうして登場キャラクターを決めたら、次は登場の順番など、全体の流れを作っていきます。

この段階では、手書きのイラストをスキャンし、横にスクロールさせてムービーを作りました。そして、実際に投影しながら、全体のスピードや長さも、大まかに決めていきました。

手書きの絵コンテ
プロトタイプ用のラフイラスト

この間、イラストとアニメーションの作業が全く止まっていたかというとそうではなく、他のスタッフは、テスト用の簡単なイラスト、背景絵、アニメーションの作成など、より実物に近いプロトタイプ版の制作を進めていました。

ステップ3

描き起こすイラストと優先度を決定する

演出案のイラストを元に、描き起こすイラストのリストを作成します。その上で、演出的な観点で優先度をつけ、作業の順序を決めます。ここで便利だったのはGoogleのスプレッドシート。担当スタッフは、随時アップデートしながら進捗の管理に利用しました。

スケジュール的に間に合わないキャラクターは、優先度の低いものから泣く泣く切り捨てたりもしました。

Googleスプレッドシートを活用した「描くものリスト」

ステップ4

イラストの軸となる「裏テーマ」を決める

イラストのディレクションと制作を担当したスタッフ(上ちゃん)に聞いた所、ブレないイラストを描くコツは「裏テーマ」を決めること!らしいです。

今回の裏テーマは「動く屏風、長い絵巻物を描く」。これは、大人も子供も楽しめるコンテンツになるように、それから博物館っぽくならないように気をつけるために考えたテーマだそうです。そのテーマに沿って、カラーパレットも「日本の伝統色」、テクスチャも伝統的な波模様、着物、和紙を参考に描き込んでいきました。

これは、 Yuuki Odaと作業分担をする際に共有したそうです。この裏テーマは、イラストを描く際の軸や拠り所として、作業スタッフの認識を合わせるためにも役立ちます。

和柄をモチーフにしたテクスチャ(左からくじら、シビレエイ、タコ、岩)

ステップ5

実際の環境で検証する

イラストは、最終的なアウトプットがどんな形でお客さんやユーザーに届くかで、色味やスケール感の作り方も変わります。例えば、渋谷のスクランブル交差点にあるような、大きなディスプレイでは、細かいテクスチャは見えにくいですが、大きな動きをつければ、迫力を感じさせることができます。逆に、iPhone6のようなRetinaディスプレイでは、細部まで細かく見える反面、画面サイズが限られているので、どんなに動きをつけても迫力は劣りますよね。

Diver in the Darkでは、プロジェクターを使用しました。プロジェクターは、作業で使うディスプレイよりも色味が浅く、画質も粗く見えることが多いです。はじめて実機で写してみたとき、細かく書き込んでいたテクスチャがモアレのように見えてしまったそうです。何度かプロジェクターで投影して、絵を見ながらテクスチャの最小サイズを決めたり、色味をグッと明るくしたり、細かい調整を繰り返していました。

プロジェクターでイラストの確認をしている様子

ステップ6

アニメーションの動きを検証する

アニメーション担当にイラストファイルを渡す前に、簡単なGIFアニメーションで動きの検証をしていました。少し動かしてみて、不自然な動きではないか、確認して調整をします。

さらに、これはアニメーション担当のスタッフへ具体的な動きのイメージを伝えるのにも役立ちます。動く状態でイメージを共有することで、作業出し戻しのリスクを抑え、結果的に作業時間を削減することにつなげました。

「泡」の検証画像

ステップ7

アニメーション用にファイルを整理する

今回、制作に使用したアプリケーションは、Adobe IllustratorとAdobe After Effectでした。イラストレーターとアフターエフェクトの連携は、ファイルの作り方で気をつけることがいくつかあります。特に、見落としがちな注意点を3つ紹介します。

①動かす部位単位でレイヤー分けをすること

AIファイルをAFで開くと、1レイヤーが1オブジェクトとして書きだされます。そのため、動かすパーツごとにレイヤーを分けるようにします。

②初期の段階でオブジェクトの最小サイズを決める

今回、アニメーションはAFのパペットピンツールを使用したそうです。そのツールは、元となるイラストのパーツが小さすぎたり、細すぎたりするとうまく動かせません。そこで、アニメーターとテストをした上で、最小サイズと細さを決定していました。

③後から形の変更ができない

一度AFで取り込んでアニメーション作業を進めたイラストレーションは、パペットピンツールのピンがズレてしまうため、あとから形の差し替えをすることが難しいそうです。そのため、アニメーションの為にファイルを渡す段階でオブジェクトの形状をFIXさせておく必要があります。テクスチャは色味などは、ファイルを上書きすることで、あとからの差し替えも可能です。

細かくレイヤー分けされたAIファイル

以上、コンセプトが決まってからイラストが描きあがるまでのステップでした!2人とも、アニメーションのためにイラストを描き起こしたのは初めてで、「全体的に戸惑っていた」らしいです。演出案の決定からイラストの描きあげまでにかかった期間はだいたい1ヶ月。集中してイラスト描き上だけに使えた時間は2週間と少し。限られた時間の中で、寝不足との戦いに打ち勝った2人でした。

絵コンテを描く Yuuki Odaと、フグを描き込む上ちゃん

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Erika Ito

Product Designer at VMware Tanzu Labs (former Pivotal Labs) in Tokyo. Ex Medium Japan translator. | デザインに関すること、祖父の戦争体験記、個人的なことなど幅広く書いています😊