ゼロ→イチ:アイディア出しからコンテンツ内容の決定まで

クリエイティブのための、いいアウトプットに繋がるブレスト方法と話し合いの進め方

Erika Ito
9 min readNov 11, 2015

「じゃあ、この件について3日後にメンバーを集めてブレストをしよう!」

職場や学校で、こんな言葉を聞く機会は多いのではないでしょうか?でも、せっかくブレストをしても議論が盛り上がらずに時間だけを浪費してしまったり、内容がまとまらなければ、ブレストをする意味がありませんよね。

ひとえにブレストといっても様々な方法があり、少しアプローチが違うだけで結果も大きく変わります。今回は、Tokyo Design Weekに出展したDiver in the Darkを例にとって、nudoがどんなブレストをして、どうやってコンテンツ決定まで話し合いを進めたかをご紹介します。

わたしたちも試行錯誤をしているところですが、同じように話し合いの方法で悩んでいる方へ、少しでも参考になると嬉しいです。また、これ以外にも、いいブレスト方法があれば、ぜひ教えてください!

このプロジェクトを振り返ってみると、最終的にコンテンツの内容が決まるまでに、大きく分けて3回のブレストと話し合いをしました。それを、初期、中期、後期に分けると、プロジェクトの始動から実制作に入るまでのステップは、下記のようでした。

【初期】大人数でのブレスト:可能性と選択肢を広げ、大まかな方向性を決める。

【中期】少人数でのブレスト:少人数のチームに分かれ、一度広げたアイディアを絞る&深掘りする。

【後期】詳細を詰めるブレスト:1つに絞ったアイディアの詳細を具体化していく。

コンセプト決め初期

可能性と選択肢を広げる、大人数でのブレスト

このフェーズに行うブレストの目的は、可能性と選択肢をできるだけ広げることです。制作の難易度や期間については、この段階ではあまり考えません。

また、メンバーを集めて開くブレストで時間を無駄にしないように、全員が事前にアイディアを用意して臨むことが大切です。

今回は、付箋を模造紙に貼り付けていく方法をとりました。一番オーソドックスな手法だと思います。まずは時間をとって、各々、付箋一枚につきアイディアを一つ書き込みます。だいたい全員が書き終えたところで、1人ずつ順番に、アイディアの補足説明をしながら模造紙に付箋を貼っていきます。このときの大切なルールは否定をしないこと。疑問点があれば質問をして、みんなでできるだけ話を広げます。話の中で生まれた新しいアイディアも、忘れずに付箋に書いて追加します。別の人の順番でも、自分のアイディアに似ているものがあれば、その場でその付箋を模造紙に貼り付けます。また、具体的な案にはできていない、抽象的なアイディアを追加してもOKです。(例えば、「大人の子供心をくすぐるもの」など。)

ブレストのまとめ方:アイディアをグループごとにまとめて、一歩引いた視点で全体を眺める

アイディアが広がるだけ広がったら、それらをグループ化します。そうすることで、自分たちが目指す方向性が掴めるようになります。

今回は、「ネタ系」、「映像系」、「音楽系」、「人の顔系」、、、などに分けました。その場のメンバーが納得できれば、どんな軸のグループ分けでも問題ありません。ある程度まとまると、だんだんと「このへんのグループは子どもが喜びそうだね」とか、「このあたりのネタはあの会社っぽいよね」など、アイディアそれぞれの色が見えてきます。

そこからは、「どのあたりがnudoっぽいのか」という話し合いをします。この段階で厳密に方向性を絞る必要はありません。

全員でだいたいの方角が共有できれば目標達成です。

コンセプト決め中期

少人数チームに分かれ、一度広げたアイディアを絞る&深掘りする。

一度アイディアを広げて、みんなが方向性を掴めたら、今度は範囲を絞って深掘りのブレストをします。

大人数でのブレストはアイディアを広げることには向いていますが、絞ってじっくり深掘りするのは1人〜3人が限界です。

そこで、この段階では、3人ずつのチームを作って、それぞれでブレストをすることにしました。期限は1週間。(nudoはメンバー9人なので、3チームになりました。)

最初のブレストでたくさんの案が出ていたので、その中から「ビビッ」ときたアイディアを発展させたり、複数のアイディアを組み合わせて新しいアイディアにします。それぞれのチーム、スタバやココイチなど、場所を変えたり、色々と工夫をしてアイディアを練っていました。

ブレストのまとめ方:チームごとに出たアイディアを発表し、みんなで意見交換しながら最終3案に絞る。

チームごとに、イチオシの3〜4案をスライドにまとめて発表します。ここでは最初のブレストよりも一歩、二歩踏み込んで、もう少し具体的で実現可能性まで考慮した案に絞ります。

nudoではみんなの気持ちを盛り上げるために、この発表を「プレゼンバトル」と呼び、さらにお酒とおつまみも用意しました(笑)真剣な場でありつつも、話しが発展しやすいようなゆるい雰囲気も残す。これは結構難しいバランスで、この日はピリピリした空気が流れたり、そうかと思えばみんなでゲラゲラ笑う瞬間があったり、アップダウンの激しい話し合いでした。

一通りアイディアを聞いたら、さらにアイディアを付け加えたり、エンジニアリング知識のあるスタッフから技術的な難易度などのコメントをもらいます。

今回の発表で面白かったのは、全てのチームから「覗ける」がコンセプトのアイディアが出たことでした。体の中が覗ける、地中が覗ける、別次元の部屋が覗ける。

このように、全く別々に話し合ったのにアイディアが被ったときは、きっとそれが「いいアイディア」です。

それぞれのチームから出た、覗く系アイディア

そこで、これらの案を合体させ、「懐中電灯で照らすと、なにかを覗けるもの」をメインの案としました。また、その他に支持者が多かったアイディアも2つ、合計で3案を最終案として残すことにしました。このサブ案を残した理由は、具体的なコンテンツ内容を詰めたり、技術的な検証を進めてから、メイン案の実現が難しいことが判明したときのためのバックアップでもあります。

コンセプト決め後期

実際のコンテンツや演出を具体化していく。

ここではまた、大人数で集まって具体的なコンテンツのブレストをします。このブレストでは、より現実的な話しになるように心がけます。可能であれば、エンジニアやマーケティングなど、専門知識がある人にはある程度リサーチをしておいて貰えるとよりスムーズです。

今回nudoでは、エンジニアに技術的なリサーチと実現可能性をざっくりまとめておいてもらいました。その結果、「懐中電灯でなにかを照らすことは、赤外線センサーを使えば実現ができそうだ」というところまで分かったので、サブ案はこれ以上深掘りせず、懐中電灯案に注力することにしました。

ここからは、「懐中電灯で照らすと、なにかを覗けるもの」の、「なにか」を探る話し合いです。具体的に出たアイディアは、地中の生き物を探す探検、夜のジャングルを体験するナイトサファリ、深海生物の生活を覗きこむダイビング、などです。この中から、「深海の生物の形が1番おもしろそうじゃない?」ということで、テーマは「深海」になりました。

ブレストのまとめ方:内容の深堀りは少人数で。具体的なコンテンツ内容と全体の流れを決める。

ここからは実制作へ向けての準備段階です。お客さんの目につく場所、動線など、具体的な利用シーンなども踏まえた上で、なにを盛り込んでなにを捨てるか、話し合いをします。このステップは、内容の深堀りと取捨選択なので、再び少人数に限って話しを進めます。

nudoでは、ここから「演出班」を作り、その3人でコンテンツを決めていきました。深海生物のリサーチやアニメーションとイラストのトーン決めはもちろん、お客さんがブースに入ったときの見え方なども考えていきます。

さらにリサーチをする中で、深海生物だと種類が限られたり、使えるアクションが少ない、など、演出的に見せ方が難しそうだということが分かりました。そういうわけで、深海からテーマを広げ、最終的なテーマは「夜の海」に決定しました。

このように、最終段階でも、ある程度の調整ができる柔軟性を保つことも大切です。

演出案コンテ

ここまでが、Diver in the Darkプロジェクトの立ち上げ、ブレストから内容決定までの流れです。リーダー的なスタッフが全てを決めて実作業者へ指示をする、というやり方もあったかもしれませんが、nudoでは、みんなが納得した上で作業を進める、ということを大切にしています。

結果的に、最初からみんなの足並みを揃えられたことで、いいアウトプットに繋がったと思います。それによって、イベント当日のブースでの案内なども、全員が自分事として取り組むことができました。

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Erika Ito

Product Designer at VMware Tanzu Labs (former Pivotal Labs) in Tokyo. Ex Medium Japan translator. | デザインに関すること、祖父の戦争体験記、個人的なことなど幅広く書いています😊