ユーザーリサーチってなに?残念なリサーチと、意味のあるリサーチの違い。
以前は「UXデザイン」というと、なんだか理解が難しいモノかと思っていたが、本当はすごく単純なものかも、と思うようになってきた。実際にモノを使う人に会って、フィードバックをもらって、「その人が必要としているモノを作ること」の結果がいいUXデザインなのだ。(多分)
じゃあどうやったら「その人が必要としているモノ」が分かるのか?その唯一の方法は、実際に会って、「その人」と「その人が生活する環境」を出来るだけ理解することだ。
これは人見知りの私には結構ハードルが高いことなんだけど。。やってみると意外と楽しい。(まだマスターするまでには程遠いけど)
そこで、最近ユーザーリサーチをするようになって分かってきた、残念なリサーチと意味のあるリサーチについてまとめてみる→→→
▶︎新車開発のプロジェクト
ビジネスのビジョンを踏まえ、最初のターゲットとなる人を絞る(田中さん)。そして、彼にピッタリの新車を開発するために、直接田中さんに会い、インタビューをすることに!
残念なインタビュー1
何が欲しいかダイレクトに聞く
デザイナー:田中さん、どんな車が欲しいですか?
田中さん:そうだねぇ、、移動に時間がかかるから、すごく速い車が欲しいな。
デザイナー:なるほど!速い車かぁ。。スポーツカーですね?
田中さん:そうそう〜!わかってるじゃん。
デザイナー:よし!開発を始めよう。
(1年後)
残念ポイント:
ユーザーが「欲しい」というモノは、根本的な問題の解決策ではないことがほとんど。ダイレクトに質問をして、答えを鵜呑みにするのは危険。問題を見つけて解決策を考えるのは、デザイナーの仕事だ。
残念なインタビュー2
長〜い質問リストを使って質問する
デザイナー:まずは、一つ目の質問です。職業はなんですか?
田中さん:給食のお弁当を作って届ける仕事をしているよ。
デザイナー:ありがとうございます。では、2つ目の質問です。今、困っていることはなんですか?
田中さん:うーん、移動時間に時間がかかって困っているかな。
(30個の質問の後・・・)
デザイナー:なるほど。次は最後の質問です。移動時間が短縮できる車、があれば、購入しますか?
田中さん:そ、そうだね〜、多分購入すると思うよ。
デザイナー:やった!ニーズがある!開発を始めよう。
(1年後)
残念ポイント:
- 何十個もの質問を順に質問していくと、表層的な質問ばかりになってしまい、「なぜ」ユーザーが困っているのかという本質にたどり着けない。
- 何も見せない状態で「○○を作ったら購入しますか?」という質問は危険。未来の製品と自分の行動を正確に想像するのは難しい上に、インタビューアーに気を使って「購入します」と嘘をついてしまう可能性が高いから。
残念なインタビュー3
自分たちのアイディアについて語る
デザイナー:今日は田中さんの率直なご意見を伺いに来ました!お時間ありがとうございます!今ですね、私どもの会社では、田中さんのような職業の方へ向けて、全く新しい車を開発しています。そこで、企画途中の機能が、10個程ありまして、、、、(20分)
デザイナー:これらのアイディア、どう思いますか?
田中さん:うーん、すごく良さそうですね。
デザイナー:よかった!このまま開発を進めよう!
(1年後)
残念ポイント:
- インタビューの目的は、ユーザーを知り、理解すること。それなのにインタビュアーの方が多く話してしまっては意味がない。
- 製品企画の詳細について話してしまうと、ユーザーの発言にバイアスがかかってしまう。
- インタビュアーの気分を害さないように気を使って、興味のあるフリをしてしまうことがある。
- アイディアに対してフィードバックが欲しい場合は、簡単でもいいから手に取れるモノを作っていきたい。
じゃあどうしたらいいの、、?ここからは意味のあるインタビュー→→→
意味のあるインタビュー1
自然な会話の中で質問をする
デザイナー:「お仕事について教えてください。」
田中さん:「給食のお弁当を作って届ける仕事をしているよ。」
デザイナー:「そうなんですね。具体的な作業は、どんな内容ですか?」
田中さん:「朝は食材の確認、それから献立を確認するよ。それから11:00までに大体100個くらいのお弁当を作るんだ。」
デザイナー:「100個も!作ったお弁当はどうするんですか?」
(・・・会話は続く)
ポイント:
ユーザーインタビューを受ける人は、何を聞かれるのかと緊張しているもの。尋問みたいににならないよう、自然な会話の流れを意識して、出来るだけリラックスした中で本音を聞き出せるようにしたい。
意味のあるインタビュー2
なぜ?&どうやって?を掘り下げる
(続き)
デザイナー:100個も!作ったお弁当はどうするんですか?←
田中さん:お弁当が全部出来上がったら、車に積んで配達を始めるんだ。配達はすごく時間がかるから、結構大変なんだよ。
デザイナー:それはどんなところが大変なんですか?←
田中さん:それがさ、お弁当は一度に全部運べないから、学校と仕事場を何回も往復しないといけないんだよね。。
デザイナー:今はどんな方法で運んでいるんですか?←
田中さん:今は車で、20個ずつ5回に分けて配達しているよ。
デザイナー:どんな車で配達しているんですか?←
田中さん:恥ずかしいけど、すごく古い軽自動車なんだ。荷台も狭いし、スピードも出ないし、時間がかかって困ってるよ。
デザイナー:なるほど。どのくらい時間がかかるんですか?←
田中さん:一往復で30分くらいかなー。今は本当に速い車が欲しいんだよね。
(・・・会話は続く)
デザイナー:田中さんが抱える問題は、学校と職場の往復に時間がかかることだな。車のスピードを上げるよりも、往復回数を減らした方が時間短縮になりそう。ちょっと試しにつくってみよう!
(2週間後)
ポイント:
- ユーザーの抱えている問題や解決策は、ユーザーの行動の中に答えがある。
- デザイナーの仕事は、根本的な問題を見つけて、それを解決すること。
意味のあるインタビューのポイント3
1回で終わらせない
(2回目のインタビュー)
デザイナー:配達時間の短縮のために、こんなものを作ってみました。ちょっと使ってみていただけますか?
田中さん:へぇ〜、どれどれ。これだけ荷台が大きければお弁当100個も一度に運べるね。
デザイナー:根本の問題は解決できたみたい!今度は使い勝手をよくしよう。
(3回目のインタビュー)
デザイナー:この前は自転車を漕ぐのが疲れると言っていたので、ちょっと改良してみました。
田中さん:へぇ〜、どれどれ。
デザイナー:方向性は間違ってなかった!今度はもっと気持ち良く使ってもらいたい。フロントガラスをつけたら寒くなくなるかな?
(改良は続く・・・)
ポイント:
- 一度のインタビューで満足しない。
- いきなり「車」という最終ゴールにジャンプするのではなく、低コストの試作品で方向性を確認する。
- 何度もフィードバックをもらう。
補足:実際には1人の田中さんではなく、「田中さん」像に当てはまる、複数の人にインタビューします。(ペルソナ方式)
私は、グラフィックデザインの側からこの世界に入ったからか、ちょっと気を抜くとカッコイイもの(スポーツカー)を作りたくなってしまうところがある。でも、荷台を引っ張る原付だって、軽トラックだって、かっこ悪いわけではない。カッコイイだけで、使えないモノの方がかっこ悪い。
ユーザーに聞くまでは全部仮説!一つ一つ検証しながら使えるモノをデザインできるようになりたいな〜
但し、ビジュアルデザインは手抜きして良いんだ!というわけではない。それについてはまた今度。