Eir Aoi Special Live 2018 “RE BLUE” at NIPPON BUDOKAN

予定されていた開演時間の5分前。鼓動を思わせる音が響き、その音に呼応して、ステージ奥の中央で青い光が点滅します。抜け殻のようだったステージに、生命が宿ったかのようです。光が膨らむと、その中に蝶を模した「EIR」のロゴ・マークが浮かびます。やがて会場の照明が消えます。点滅する青い光を映していたスクリーンには、これまで発表されてきたシングルのミュージック・ビデオが次々と映っては消えます。

音と映像の奔流は予告なしに止まります。ピアノの音が流れ、「約束」のイントロが響くと、記憶は一気に2018年2月8日に遡ります。突如として発表された活動再開。ミュージック・ビデオが公開され、止まっていた時計の針が再び動き出したことを思い出します。この曲から、藍井エイルの1年9ヶ月ぶりのライブ「Eir Aoi Special Live 2018 “RE BLUE” at NIPPON BUDOKAN」が始まります。美しい旋律と力強いリズムに包まれたイントロが終わると同時に、奈落から藍井エイルが姿を現わしました。スポットライトを浴びて輝く白い衣装は、あの日――「最後のライブ」の続きを思わせます。1年9ヶ月の空白をゆっくりと埋めていくように、歌が響き渡ります。

Eir Aoi Special Live 2018 “RE BLUE”
2018-08-16 at NIPPON BUDOKAN
約束/IGNITE/AURORA/アヴァロン・ブルー/MEMORIA/アカツキ/KASUMI/アクセンティア/レイニーデイ/GENESIS/シューゲイザー/流星/ラピスラズリ/翼/シンシアの光/INNOCENCE/ツナガルオモイ/虹の音/シリウス/ヒトカケラの勇気

「約束」を歌う彼女の声には、力強さとともに穏やかさも感じられます。胸を打つメロディに乗って、その奥に言葉がすっと潜り込んでくる。初めて聴いたときから素晴らしい曲だと思っており、文字どおり何度も聴いています。RE BLUEではどのように響いたのか。この曲は「活動再開後の最初のライブの1曲目」という特別なシチュエーションにぴたりとはまりました。これは二度とない機会であり、二度とない体験だったと思います。演奏が終わって暗くなってもまだ夢でも見ているかのような感覚に捕らわれていました。

光が戻ると、藍井エイルの衣装は青いドレスに変わっていました。そしてお馴染みの力強いフレーズとともに始まった曲は「IGNITE」です。観客席の熱が一気に高まるのを、目と耳と肌で感じました。その後も、彼女のライブを支えてきた「AURORA」「アヴァロン・ブルー」「MEMORIA」といった曲が演奏されます。僕は「アカツキ」を聴けたのが特に嬉しかった。「最後のライブ」すなわち「Eir Aoi 5th Anniversary Special Live 2016 “Last Blue” at NIPPON BUDOKAN」で初めて披露された曲です。Last Blueでは最初で最後だろうと思わざるを得なかったのですが、その悲観的な推測は覆され、再びライブで聴く機会に恵まれました。エモーショナルに響く歌声と、イマジネーションをかき立てる歌詞が組み合わさって、その世界に聴き手を手繰り寄せます。曲の途中で彼女は、崩れ落ちるようにステージ中央で座り込み、光と闇の隙間にいるような姿を見せたのが印象に残りました。

久しぶりのライブということで、そのパフォーマンスからはアーティスト藍井エイルの新しい姿を見せたいという気持ちが伝わってきました。そのひとつが、黒いエレクトリック・ギターを弾きながら歌った「KASUMI」です。ギターは活動休止中に練習していたそうな。また、ステージに6人のパフォーマーを迎えて、ロックの音にエンターテインメントの要素を加えます。「アクセンティア」では、パフォーマーがフラッグ・パフォーマンスを披露しました。続く「レイニーデイ」では、ステップを踏みながらハンドクラップで会場を盛り上げます。さらに「GENESIS」で大きくて長い布を広げたり上下に振ったりして、ダイナミックな演奏を視覚的にも表現しました。最後は、絡み合う布に呑み込まれるようにして彼女が奈落に姿を消しました。

ステージではエイルバンドが「GENESIS」のアウトロを演奏します。ほとばしる音。プログレを思わせるテクニカルで重厚な演奏が会場を支配し、このライブのサウンドを支えるメンバーの凄さを改めて感じさせます。ダイナミックな演奏を存分に味わった後、間髪入れずに響くのは「シューゲイザー」のイントロです。肌をざらりとなで、心まで呑み込むような、暴力的とも思えるメロディが特徴的な曲です(書いたのはGLAYのHISASHI)。黒い衣装に着替えた彼女が登場します。ハイトーンで歌うサビは圧巻です。

ライブの終盤は、最新シングルの「流星」を披露すると、「ラピスラズリ」「翼」「シンシアの光」「INNOCENCE」といったお馴染みの曲を続けて演奏します。「ツナガルオモイ」を聴いていると、Last Blueのときに、この曲の途中で彼女が歌えなくなったことを思い出しました。あのときと同じようにハンドクラップで盛り上がりながらも、その表情は大きく異なります。

「ツナガルオモイ」から「虹の音」へのつながりも、Last Blueを想起させました。この曲で歌われる「ありがとう」は、同じ言葉でもシチュエーションによって異なる意味を持ちます。「虹の音」は、Last Blueの最後に歌われた曲であり、「さようなら」を込めた「ありがとう」でした。けれどもRE BLUEでは「待っていてくれてありがとう」という意味を感じました。未来へ向かうパフォーマンスは、やはり心を熱くさせます。音楽家としてのキャリアを閉じる場面に次々と遭遇する中で、彼女の活動再開のニュースはとても嬉しかったし、その時の気持ちがライブを観ながら再び湧き上がってきました。

アンコールでは、「RE BLUE」とプリントされたTシャツを着た彼女が「シリウス」を歌います。パフォーマーも再び登場し、演奏に華を添えました。そして最後に披露された曲は「ヒトカケラの勇気」です。「流星」と「約束」とともに最新シングルに収録されている曲であり、どちらの曲ともタイプが異なり、明るく突き抜けるような雰囲気が気持ちを盛り上げます。駆け抜けてゴールテープを切るような、走りきった感じを与えてくれました。

パフォーマー、バンドメンバーとともに挨拶した後、彼女はひとりステージに残ります。彼女のために青くデコレートされたマイクをスタンドに戻し、その肉声を観客に届けると、ステージから去りました。それは、次のステージに向けて歩み出す一歩でもあります。次のシングル「アイリス」を10月にリリースすることも発表されました。RE BLUEというひとつの始まりが終わり、同時に新しい道が目の前に開かれます。素晴らしいライブでした。

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