空き家活用作戦会議@富山県砺波市

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砺波市で眠る空き家を活用し、元気で賑やかな街になるように情報交換の場を作ろうと、「空き家活用作戦会議」が2019年2月28日富山県砺波市で行われました。

主催するのは株式会社ミズカミの水上幸俊さん・伊都子さんご夫妻。ミズカミは「地域とともに歩むこと」をテーマに90年続く歴史ある建設会社です。
ご夫婦のルーツは砺波市出町地域。かつて、このまちが夏祭りや子供歌舞伎曳山祭り、夜高行燈祭りなどで賑わっていた頃をお二人ともよく覚えておられます。空き家を活用することで「あの賑わいをもう一度蘇らせたい」と今回の作戦会議を企画されました。

会場となった焼きたてパンとコーヒーの店「霜月」

今回の「空き家活用作戦会議」の会場となった場所も、実は昨年まで空き家だったそう。築88年の古民家を改装し、昨年12月に焼きたてパンとコーヒーの店「霜月」がオープンしました。

本イベントには、空き家をお持ちの方や砺波市出町の方、砺波市に移住した方、市役所や商工会議所の方など午前午後合わせて13名が参加。

古民家ゲストハウス「すどまりとなみ」を運営する川向実さん

第一部では、古民家ゲストハウス「すどまりとなみ」を運営する川向実さんから、古民家をゲストハウスにした経緯や、どのように運営しているかのお話がありました。

川向さんは生家だった明治4年(築147年)の古民家をDIYでリフォームし、「すどまりとなみ」をオープン。
しかし最初はゲストハウスを運営しようとは思っていなかったという川向さん。思い出の詰まった生家をどう残すかを考えていた結果、ゲストハウスという答えに辿りついただそうです。

現在、7割強が海外からの旅行客。例えばヨーロッパでは2ヶ月間程度の夏休みがあるため、日本の滞在も2週間程度と長くなります。関東関西を楽しんだ上で富山へ宿泊を検討する人も多いそうです。
初めての英語圏宿泊客となったイギリスのゲストが来られたときは、Facebookで「英語できる人、今晩来てくれ!」と募ったところご友人が助けに来てくれたというエピソードも。

「すどまりとなみ」は法被を着たり田植え体験をしたりと単なる宿泊だけではなく「体験」も提供しています。
野菜の収穫体験に参加した子供たちとの思い出も。自分が収穫したトマトを食べたところ嫌いだったトマトが食べられるようになった子や、さつまいもを抜くのが楽しくてどんどんのめり込む子など、都会では味わうことのできない体験から、「好き」や「楽しい」に気づく人が多いようです。
他にも竹風鈴づくり、食事会やゲストハウス相談会、伝統受託耐震判断研修会、七夕祭りや干し柿づくりなど様々なイベントを開催し集客しておられます。

これから空き家活用を検討している方には、空き家を「活用」すべきのか「処分」すべきなのか「譲渡」すべきなのか、を見極めることが大切だというアドバイスがありました。

「活用する」と決めたあと、重要になってくるのは資金調達。川向さんは自己資金とクラウドファンディング(インターネット経由で、プロジェクトに賛同してもらった不特定多数から資金支援を受ける調達手段)による支援で全て調達しました。

クラウドファンディングでは支援してくださった方へ「リターン」と呼ばれる返礼品を送ることになっていますが、川向さんは地元の野菜をレシピとともに送りました。美味しい野菜と調理まで考慮した心遣いがとても喜ばれたそう。
クラウドファンディングを通じて、事前に取り組みを多くの方に知っていただけるので資金調達以外にも「プロモーション」としての機能があります。

名古屋から20日間滞在した宿泊客が、昨年砺波市三谷で空き家を購入されるなど、「すどまりとなみ」での出会いが、砺波の空き家活用に繋がった例も多くあります。
これからも地域の「ハブ」であり続けたい、と川向さんは想いを語られました。

▷古民家ゲストハウス「すどまりとなみ」
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焼きたてパンとコーヒーの店「霜月」オーナーの福井久佐志さん

第二部として、今回の会場となった焼きたてパンとコーヒーの店「霜月」オーナーの福井久佐志さんからも古民家活用までの経緯をお話しいただきました。

バリスタの同級生と一緒にパンとコーヒーのお店を開きたいと思っていたところ、古民家を紹介してもらったと言います。
築88年・木造2階建ての古民家が自分の店舗イメージぴったりに改装され、初めて見たときはとても驚かれたそう。

漆塗り部分が映えるようにデザインされた店内は、木とパンとコーヒーの残り香でホッとできる空間。昨年12月9日オープンでスタートしたばかりではありますが、イベントを開催したり、子供たちにパン教室を実施したり、コーヒー教室を開いたりと地域に還元していきたいという想いをお話されました。

▷焼きたてパンとコーヒーの店「霜月」
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第三部は参加者の悩みやアイディアを共有する「作戦会議」。

参加者全員でざっくばらんに語り合います。こんな声が聞かれました。

1年前に砺波に移住してきたという方は「空き家の活用が進まない一つの原因として、思い入れのある家(空き家)に他人が住むことに否定的な人が多いことがあげられると思います。でも「家族の財産」をどう運用していくか、子供や孫にどんな形で引き継いでいくか、という考え方に変えたら、もっと柔軟に考えられるのではないでしょうか?」と考え方をシフトしていく必要性を提案されました。

表具屋を営んでおられる近所の男性は、「『霜月』さんのオープンのように、古民家が生まれ変わることで、かつての商店街の賑わいが復活したら嬉しい」と期待を寄せます。

喫茶店を営む近所の男性は「このあたりにはスーパーや飲食店が多く、出町小学校もある。交通アクセスの良さを考えると魅力的な面は多くあるので、その点をもっと活用できないでしょうか?」とすでにある価値をもっと広めていく必要性を指摘しました。

「人口減少が進む以上、空き家が出てくるのは仕方がない、という前提で活用法を検討した方がいいと思います。例えば、『店をちょっとやってみたい』という7人で曜日ごとに店長を変えて1軒の店を運営してみたり、『田舎に別荘持ちたい』という人たち向けの別荘シェアリングを検討したりと、空き家を定住の場所としてではなく、店や場になる空間としての活用を考えた方が面白いと思います。」という意見も出ました。

出たアイディアをメモ

砺波で空き家を活用する際には補助金制度を活用できるかもしれません。参加した砺波市商工観光課の方からは補助金について説明していただきました。

空き家店舗再生みんなでチャレンジ事業補助金

※以前は対象となる空き家は特定のエリア内である必要がありましたが、平成28年4月より「空き家バンク」に登録されている空き家が全て対象となりました。

砺波空き家再生等推進事業補助金

※出資者が多い場合(5人以上)はこちらの補助金を検討してみてください。

空き家に対する補助制度等一覧

用途等によって市役所の窓口が異なるためわかりづらいですが、上記サイトからは補助金の内容と担当課を確認できるので是非参考にしてください。

株式会社ミズカミの水上さんご夫婦

主催した株式会社ミズカミの水上さんご夫婦は、
「砺波は人口減少こそしていませんが、空き家は深刻な問題。その解決のためには人と人、人と情報を繋ぐ場を作っていくことが必要だと考えました。そこで行ったのが今回の「作戦会議」。まだ手探り状態で、今回は小さな小さな一歩ですが、歩き始めて歩き続けなければ目的地にはたどり着けないですからね」と振り返りました。

一人で考えていても、いいアイディアは浮かびません。
実際に空き家を活用している川向さんからのお話で「そんなに外国人が来てくれるんだ」とリアルな場をイメージできるようになる。
福井さんからのお話で「タイミングよく出会えた物件が夢の実現を後押ししてくれた」ことに感動する。
空き家を高齢者の場づくりに活用したいと考えている人がいることを知る。
空き家活用のための補助金について学ぶ・・・
違う立場からの体験や意見を「場」に出してもらうことで人と人が繋がり、人と情報が繋がっていく。
そしてそれが動き出していくんだ、ということを実感する会になりました。

水上さんご夫婦はこれからもそんな「場づくり」を続けていきます。

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