富山初のゲストハウスを立ち上げた姫野泰尚さんに聞く!空き家活用作戦会議第6回@富山県砺波市

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ゲストスピーカーの姫野泰尚さん

毎月第4木曜日に富山県砺波市で開催されている「空き家活用作戦会議」(主催:株式会社ミズカミ)。
今回は10年前に富山初のゲストハウスを立ち上げた、合同会社シェアライフ富山・姫野泰尚さんをゲストスピーカーとしてお呼びしました。

砺波市にはシェアハウスがまだありませんが、空き家活用の一つの方策となるはず。今回は姫野さんのお話からそのヒントを探り、参加者全員でアイデアを出し合いました。

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シェアライフ富山は、都会にあるような100人規模のシェアハウスではなく、一人ひとりの顔が見える「家族のようなシェアハウス」をコンセプトに、県内に11軒のシェアハウスと1軒のゲストハウス(簡易宿泊所)を運営しています。
2017年には富山市ヤングカンパニー大賞(主催:富山市・富山商工会議所)を受賞されました。

トレーニングルームやBBQのできる屋上、シアタールームなど、それぞれの物件に特色を持たせており、シェアハウスでメンバーの結婚式=”シェアハウスウェディング”を挙げたこともあったそう。
姫野さんはシェアハウスを「新しい家族の形」だと表現します。

「時間・空間を共にした仲間だからこそ、一生の付き合いができる。シェアハウスを卒業したメンバーとも、子育ての相談をしあったり、家族ぐるみで遊んだりと今でも付き合いがあります」
姫野さんはそう語ってくださいました。

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これまで、姫野さんの元にはシングルマザーや独居高齢者からシェアハウスへ入居したいという問い合わせが多くあったそうです。しかし、様々な制約があり断らざるを得ないことが多いのが現状でした。

そこで、1つの家に子育て世代も高齢者も学生も一緒に住んでしまおうというのが姫野さんが考える「多世代共生『富山型』シェアハウス」です。

例えば、

3階:学生フロア
2階:家族フロア(子育ても可能)
1階:高齢者・みんなのリビング

としながら、それぞれが足りないものを補い合ったり、助け合ったり・・・。
保育士も介護士も足りないなら、それを自然と助け合える場所を作ればよいのではないかという発想です。

「不動産屋という立場で「これからの暮らし方」を真剣に考えていたら、結局たどり着いたのは町内会や公民館のように世代を超えて助け合う形、つまり、昔は自然とできていた地域の姿でした」と姫野さん。

意見交換する参加者たち

参加者からは「父親が単身赴任中の家族の居場所として、多世代共生型住宅はぴったりではないか」という意見や、「子育てで本当に疲弊しています。こんな家に住めたら、身体も心も楽になると思う」「子供が障がいを持つ親にとって、息抜きができる居場所として活用できそう」という子育て中の女性からのリアルな声も聞かれました。

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空き家活用にも積極的に取り組む姫野さん

今回は「空き家活用作戦会議」ということで、姫野さんが取り組む「空き家活用」についてもお話を聞くことができました。

姫野さんの元には、日々たくさんの「空き家相談」が寄せられています。富山県の空き家率は13.2%(2018年)で全国36位と、全国と比べるとそれほど多くないのですが、用途のない空き家(賃貸や二次利用を行っていない空き家)が多いのが課題となっています。

不動産屋さんに空き家の相談をすると、「売却しますか?」「賃貸にしますか?」の二択であることが一般的です。
いずれにしても「まずは家の中を空にしましょう、それができないのであれば処分費が数十万円かかります」などと言われて空き家活用を断念する人も多いそうです。

しかし姫野さんは、相談を受けるたびに所有者の家に対する思い入れの強さを感じていました。
そこで、所有者の思い出やその家の歴史を生かし、不動産の持つ無形財産を発掘する活用法を提案するようになったといいます。

空き家に付加価値をつけるプロジェクト第1弾として、富山市東岩瀬町にある空き家を改修し、ゲストハウスにする準備を進めています。
もともと売薬さんの拠点だったことや立地の良さから、民泊のニーズがあるのではないかと判断したそう。現存する薬箱などを展示しながら、売薬文化を伝える拠点とすることを決めました。

「空き家の持ち主である母娘から、売薬一家にまつわる様々なエピソードを聞くことができました。古い家を綺麗にリフォームすることは誰にでもできますが、大切な思い出を残し、『泊まれる資料館』とすることにしました」

家の見えない価値を見出し、さらに価値を育てていくのが、これからの姫野さんのお仕事です。

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姫野さんの講演を踏まえ、「富山県の空き家は活用が進んでいない」という課題の解決に向けて参加者全員で活用についてディスカッションしました。

参加者からは、「家を活かす決断は、その家に思い入れがある人にしかできない」といった意見や、「家に潜在する新しい価値を見出し、活用法を吟味していく必要がある」といった声が聞かれました。

空き家を活用し、付加価値をつけることができれば、それを別の人の手に売却することもできます。

まずは、空き家のままにしていてはもったいないと持ち主が思えるように、活用成功事例の共有が必要だという意見も。

そして、地域には誰かのサポートを必要としている人がたくさんおり、悩みを抱えた人が集い、支え合うことができる場所ができればその人たちの救いになることもわかりました。

次回の「空き家活用作戦会議」は10月の開催。
情報は株式会社ミズカミFacebookページなどから随時発信していきます。

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▼参加者からの質問と姫野さんの回答はこちら▼

Q ゲストハウスの宿泊費はどのように設定していますか?

A 子供のいるご家族をイメージしながら、「旦那さんが奥さんを説得できる価格帯」を設定するようにしています。

そして、ゲストハウス作りには、子供が飽きない工夫を散りばめることも大切です。

Q シェアハウス内のルールは入居者が決めるとのことですが、最低限のルールは定めているんですか?

A シェアハウスは人が入れ替わるものなので、ルールも変わるのが当然だと思っています。最低限のルールも含めて、メンバー同士で決めてもらっています。

会社としての管理は、定期的に「考え方のヒント」を伝えていくだけです。

Q 物件を見た時に、シェアハウスなのかゲストハウスなのか…活用方法はどう見極めているんですか?

A 立地が一番大きい要素です。観光・宿業にできる立地か?住むに当たって便利か?というところをまず一番に考えます。

そして、シェアハウスにするとすれば、入ってすぐに共用スペースがあり、各部屋にリビングを通らないといけない間取りかどうかを確認します。
シェアハウスで顔を合わせないように生活できてしまうと、「物音はするけど、顔が見えない」状態に。それって他の入居者にとってはすごく怖いことなんです。
最低限、「おかえり」と「いってきます」のやりとりが自然と発生する間取りかどうかを見ています。

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