はじめてのゲーム・プログラミング

Ryohei Fushimi
7 min readFeb 26, 2015

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ぼくがUEIにいたころ,enchant.jsというライブラリを開発しながら,普及活動のためにプログラミングを教える仕事をしていた時期がありました.主婦/主夫,電通マン,アメリカの小学生などなどを相手にプログラミングの楽しさを語ってるうちに,教えることそのものが楽しくなってしまい,結局開発チームから離れたあとも様々な場所でプログラミングについて語ったり教えたりしてきました.

どの講座のあとにも必ず聞かれるのは「どこでプログラミングに出会ったの?」という質問です.今はプログラミングに出会う機会なんてそこらじゅうに転がっていますが,ぼくが小学生の頃はまだ少なかったので,特に同年代以上の方にとっては珍しいのだと思います.この質問への直接の答えは,10歳のころに出会った「ファイルメーカーPro」というMac向けのソフト.自分で作ったカードゲームを印刷したり,ランダム関数を使ってゲームソフトを作ったりといったことから,「コンピュータって楽しい!」「自分でものを作るのは楽しい!」って思った記憶があります.何度か,12歳ごろに出会ったJavaScriptだと答えたこともありますけどね.

でも,この直接の答えを話すことはあまりありません.なぜならばこの答えは,「プログラミング」という営みをコンピュータの中に閉じ込めてしまう答えだから.

特に小さい子どもにプログラミングを教える一番最初に,コンピュータの上で動くプログラムだけを考えるように教えられてしまうと,せっかく彼らの中で花開こうとしている「プログラマとしての能力」を,小さなコンピュータの中に閉じ込めてしまうような気がしているんです.プログラミングで重要な,大きなシステムを見た時にそれを分解したり組み替えたりできるモデリング能力や,複雑な仕組みを再現するルールを明瞭で誤解なく伝える表現力は,コンピュータの外でも育てられる力であり,コンピュータの外の世界にもたくさん役立てられる力であるはずです.

そう考えながら振り返ってみると,ルールを通じてコミュニケーションすることの楽しさは,保育園や小学校のころの”遊び”体験の中にたくさん埋め込まれていたんだな,ってことを思い出します.学区に代々伝わるキックベースや石蹴りを遊んだり,自由帳に鉛筆サイコロや消しゴムで遊ぶ野球ゲームを作ったり,友達が考えたオリジナルアレンジ大富豪を遊んでみたり.コンピュータに出会うずいぶん前から,ぼくはプログラミングの楽しさに触れ続けていたんです.

(参考: 子供の頃ノートにオリジナルゲームを描いてた)

ぼくがプログラミングの真髄だと考えているのはまさにこの「ルールを考え・伝えること」「仕組みに従って動くこと」で,すべての講座で一貫して題材にゲームプログラミングを選んでいるのも,道具の使い方を学ぶ題材に,道具の真髄である「ルールを考え,伝える楽しさ」が直接埋め込まれているからです.しかもゲームに終わりはあっても,面白いゲームを作ることに終わりはない.こんなに素敵な題材はないですよね.

さて,こんなことを考え,ほそぼそと実践し続けてきたおかげか,この4月からより多くの子どもたちにゲームを作る楽しさを知ってもらうチャンスをいただきました.

2015年4月より新宿伊勢丹百貨店で「cocoiku」というあたらしい「子どもの学び場」が新設されます.cocoiku全体の監修をしている会田大也さんからお声かけ頂いて,ここで「はじめてのゲーム・プログラミング」という全10コマの講座を持たせてもらうことになりました.3つの教室は「メディア」「アート」「フィジカル」と分かれていて,ぼくの教える「メディア」の教室はこんな部屋です.

一見普通の教室ですが,床は転がっても痛くないマットになっていて,床いっぱいにカードを広げたり,身体を使ったゲームも遊んだりもできるようになっています.

もちろんプログラミングを体験するためのiPadやMacBookも完備されています.といっても,今回の講座では半分くらいしか出番はありませんけど.

4月の開講に先立って,来週3月4日から『cocoiku トライアル』という体験入学プログラムがスタートします.同じ「はじめてのゲーム・プログラミング」という題目で,集まった子どもたちのレベルに合わせてMoonBlockかenchant.js (JavaScript) を使ってゲーム作りを体験してもらうつもりです.

いまは本講座で使う,1つのゲームのルールを1枚のカードにまとめたゲームコレクションカードを作っています.「ババ抜き」「けん玉」「将棋」から「野球」「ボクシング」「フィギュアスケート」「闘牛」まで,いろんな「ゲーム」を「何人で遊ぶか」「何をしたら勝ちか」「どんな決まりごとがあるか」という視点からまとめたもので,2枚のカードを融合させて新しいカードを作ったり,珍しいゲーム同士を友達と交換したりできるようになっています.

さらに,ひとつひとつの「決まりごと」がどんな命令のブロックで表現できるのか,ということからプログラミングを学び,最終的にはオリジナル・ゲーム(ex. 卓球ボクシング?高速ばば抜き?)を自分の手で作れることを目指します.

どんな子どもたちが来てくれるだろう.どんなおもしろいゲームが生まれるだろう.3月のプレスクール,4月からの講座が楽しみです.

プレスクール受講のご予約は,2月25日(水)から電話 (直通: 03–3225–2728) もしくは伊勢丹新宿店本館6階=玩具カウンターにて.

本講座の受講は,3月4日以降に”cocoiku class” の会員になる必要があります.いまのところは,cocoiku FacebookページをLikeしていただいたり,MY ISETANアプリ (iOS, Android) をダウンロードしていただくと,最新の情報をお届けします.詳しくはcocoiku PARKカウンターにお問い合わせ(直通: 03–3225–2728)もしくはご来店ください.

ぼくもしばらくリーフレットを持ち歩いているので,もしご興味のある方はお声掛けください.それでは!

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