師弟轟々

愛弟子達のプレゼン練習に付き合った後でがっかりした話


(2006年1月31日執筆)

かくいう私もかつては学生であった。当時、卒論や修論は、自分でせっせと書いて締め切りまでに完成させ、提出日になってから初めて恐る恐る指導教員に見せに行くと、これでよし、あるいは、これじゃダメだ、と言われるものだった。いまとは少し違う。合否の判定をどこのレベルで行うかの違いだろう、ということにしておく。

そういう意味では、かつての学会論文といまどきの卒論とが似ているのかもしれない。当時、締め切り日の間際になって何とか原稿を完成させ、常に忙しそうだった指導教員の先生のところに持って行く。余裕を持って行かないと締め切りに間に合わなくなったりもする。とにかく、先生は私の論文のために時間を割いて添削などしてくれる。いや、添削してくれたのは初めのうちだけだったかもしれないが、それなりに時間をかけて目を通してくれたとは思う。

そうしてめでたく論文が完成し、郵便局に行って学会宛に発送する。当時はまだPDFファイルをWeb上で送信、などという高級テクノロジーは使えなかったのである。しばし自由の身となり、研究室に戻ってくると、先刻まで私の相手をしてくれていた先生が、他の仕事にとり掛かっている。私は今日はもう帰りたくてたまらないのだが、先ほど時間を奪ってしまった先生がまだ仕事をしているので帰れない。そうして仕方なく、何か用事があるふりをして夜まで研究室に残っている。やおら先生が帰り支度を始めると同時に、たまたま自分もそこで作業が終わったような素振りをして、一緒に部屋を出る。


私はそういう風に育ってきたし、それが特段古風なセンスだとも思わないけれど、こうして書いてみると「部長より先に帰ってはいけない部下の話」になってしまう。要は気持ちの問題だけなのかもしれませんが。


3時間以上のプレゼン練習で、私も学生達もぐったりしてしまったのだが、今日はこれで終わり、と宣言するや否や、瞬時にほぼ全員が帰ってしまい、ガランとした研究室で残りの仕事をしながらなんだか寂しくなったので、思わず書いてしまいました。ごめんなさい。

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