Siriからの発想
2012年3月9日の連投ツイートより
日本語版がリリースされたSiri。最初は面白がってみんないろいろやってみるのが常だけど,ちゃんと定着するのか。しばらくするとまた誰も使わなくなったりしないか。その辺りをしっかり見極めないと。
音声研究の分野では,「音声は最も手軽で便利なコミュニケーションの手段で~」というのが言い尽くされた研究動機だが,だから音声入出力できる機器が誰にでも使われて,いないのが現状。まだ人間と同等レベルでない,慣れていない,周囲に人がいると使いづらい,などというのが言い訳。
確かに,意味理解なども含めて人間と同等レベルを要求すると問題が果てしなく難しくなるが,だからまだ使われない,とするのは軽率すぎる。まぁそれは音声言語やインタフェースやコミュニケーションの研究者は皆分かっている。
たとえばこうやってキーボードで文字を入力するのが非常に手軽で便利とは決して言えないし,携帯端末での文字入力などはもっと面倒である。にもかかわらず,ものすごいスピードで受け入れられた。でも誰も現状の入力手段で満足はしていないと思う。
そもそも,文字(書き言葉)のコミュニケーションというのは,原始の人間は持っていなかったのに対して,音声(話し言葉)のコミュニケーションは,文字よりも遙かに前から使われていた手段なのである。したがって,人間と同等レベル,といった場合,文字と音声は比較しにくい。いや,できない。
だから,機械への情報入力手段として,キーボードによる文字入力と音声入力を比較すること自体が,人間の原始的行為という観点からすると対等ではない。
鳥のように空を飛びたいから飛行機を発明した。というけれど,飛行機はあくまでも移動するための道具だから,鳥が空を飛ぶ行為全体のごく一部を真似したのに過ぎない。そういう意味で,鳥と同等に空を飛べる人工的な機械はまだ存在しない。
飛行機が成功した(一般に受け入れられた)技術といえるのならば,人間の音声コミュニケーションのごく一部を真似した(つまり人間と同等ではない)道具であっても,成功できる(一般に受け入れられる)チャンスはあると思う。
飛行機の研究者は,より高速に燃費を少なく安全に飛ばすための研究はしているのだろうけど,いまの飛行機をどんどん鳥に近づけようとはしていない。同様に考えるならば,音声の研究者は,人間の機能にどんどん近づける必要は必ずしもない。
鳥から「空を飛んで移動する」という機能だけを取り出して飛行機を発明したのに対応する,人間から取り出すべき(=取り出すと有用な)音声コミュニケーションの機能は何だろう。
どうも,キーボードの代わりに音声で文字を入力するとか,もうちょっと進んで対話システムのような機能を実装するとかは,その「取り出すべき機能」ではないような気がしている。
あたかも人間であるかのように振る舞うロボットってのは,まぁ夢としてはアリだろうし,オモチャあるいは遊びとしては面白いのだろうけど,必須かどうかという点ではどうなんだろうな。
電話や冷蔵庫やテレビや自動車や飛行機などは,それがもしもなかった場合を考えると,必要性が非常に高い。音声対話システムやロボットが,特定の限られた条件下以外でなかなか受け入れられないのは,結局あまり必要がないのだろう。
ここまでで言いたいことの半分くらい。まぁ一般論と言っていいかもしれない。この先,その「取り出すべき機能」に関して,極めて個人的かつ突拍子もない考えを持っているのだけれど,ツイートするとなると少々躊躇してしまう。某所で喋ったことはあるのだけどね。
いずれにしても,Siriが一般の人々にどのくらい本気で長期に渡って受け入れられるのか,今後の動向からは目が離せない。
「擬人化」ってのは,見せ方によっては楽しくなるけど,発想としては「ありがち」なのである。子供の相手にはよいかもしれないが,知性を持った大人が,擬人化システムあるいはロボットと本気で付き合うとは残念ながらあまり思わない。
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