笑顔。人間だけがコントロールできる表情

人間の顔は実に多彩に表情を作り出せる。喜怒哀楽の表現によって相手に感情を伝える事が可能だ。そのなかでも笑顔を使って仲間とコミュニケーションが取れるというのは、人間だけが使える技だといえる。

「いや、うちで飼っている猫は笑う」とか「イヌがニッと笑っているのを見たことがある」という意見もあるが、これは人の作り出す表情としての笑顔ではない。

動物の一見笑顔とも見える表情は、異性のフェロモンなどの刺激臭をかいだときに見られる「フレーメン現象」と呼ばれるもので、感情を伴わない反射に近い。

人に近いサルも笑みに近い表情を浮かべることがあるが、これは弱いサルが強いサルに対して見せる「グリン」と呼ばれる服従の表情である。

動物のなかで唯一、笑顔と思われる表情を見せるのはチンパンジーだ。

チンパンジーの赤ちゃんは相手の顔を認識して微笑むことがある。大人のチンパンジーも機嫌の良い時など、人の笑い顔に近いプレイフェイスと呼ばれる表情を見せることがある。笑顔を作れる、というのは人間を含め、一部の霊長類のみに与えられた特権といえる。

そんな限られた霊長類のなかで、自分の意思によって笑顔を使いこなすというのは人間だけが持ち得た特性だ。

人間には、表情筋と総称される筋肉が顔面におよそ30もある。そのうち、笑顔をつくるのに大きな役割を担っているのが、頬にある大頬骨筋と目の周辺の眼輪筋である。

大頬骨筋が収縮すると口の両端が上に引き上げられ、眼輪筋が目を細くして目尻にシワをつくりだす。こうした筋肉の動きによって笑顔が生まれる。

笑顔は、好意を表す表情であり、相手の警戒心を解く。さらには見る人に伝播する力をもっている。

この笑顔をコントロールするという人体のシステムが、人間社会の中において、円滑なコミュニケーションを実現可能としているのだ。


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