シリコンバレーでUber-Xの運転手になってみた

Uber-Xというライドシェアリング

ユーザとしてUber-Xを利用しその仕組みに興味を持ったのと、ドライバーが総じてHappyなので、その秘密を知りたいと思い、軽い気持ちでUberにドライバー登録してみた。

アメリカには、Uber-Xというライドシェアリングがあり、個人が個人所有の車でタクシーに近い業務をすることができる。建前は、同じ方面に向かう人と乗り合いして、車を出した人が乗った人から謝礼を受け取るというマッチングシステム。政府が渋滞緩和のために乗り合いを推奨し、乗り合いの車両は高速道路の専用レーンを走れるという仕組みまで作っているんだから、ドライバーと利用者のマッチングをサービスにしても問題ないだろうというスタンスだ。

日本のUberは実際にはUber-Xではなく、タクシーやリムジン専用の免許を持つ職業ドライバーがUberの呼び出し、会計システムを使って営業しているUberBLACKまたはUberTAXIなので、ライドシェアリングではない。

とは言っても実際にやっていることは個人タクシーと同じで、確実にタクシー業界の売上に多大な影響を与えている。その結果 Uberへの反撥も強く各自治体で問題になっている。こういう時にアメリカは新しい物を締め出すのではなく、古い法律を改定して新しい物を取り入れる仕組みを作るという対応するところが素晴らしい。

登録はオンラインで簡単

登録の条件は21歳以上で有効な免許と保険を持ち、発売10年以内の4ドアセダンを所有していること。このおかげで、Uber-Xの車は比較的綺麗で新しい。一方競合のLyftはここが少し緩いため、オンボロの車でも登録可能。

登録したのは丁度日本に出張に行くための飛行機を待つ空港で、空港まで利用したUber-Xのドライバが、かなり満足しているという話だったので興味を持ち、即申請してみた。サインアップはあっけないほど簡単に終了。この段階では、メアド、電話番号、車種、年式、ライセンスプレート番号、免許証番号、社会保障番号などを基本情報を入力するだけ。

成田について飛行機を降りたら、もうApproveされたので次のステップへ、というメールが届いてた。次のステップとは:

  1. ドキュメントのアップロード(免許証、保険証、自動車登録証)
  2. バックグラウンドチェック
  3. 車検
  4. 銀行口座登録

ドキュメントのアップロードはiPhone向けの専用ページに行き iPhoneで写真を取るだけで完了。

バッググラウンドチェックについては、チェック機関の審査を受けることを承認すればUberが勝手にやってくれる。ちなみに私は日本から引っ越して以来、ずっと同じカウンティに住んでいるのですぐにチェックが完了したが、過去に引っ越しを繰り返している人などは、数日かかる場合もあるらしい。

Uberで車検を受ける

車検については専用の用紙をダウンロードして、地元でチェックを受けてアップロードすればオンラインでも済ませることができたが、サンフランシスコのUberの車検場まで行けば無料でやってくれる上に100ドルのボーナスがあり、更にその場で最終登録手続きが済ませられるというので、土曜日の朝に行ってみた。

車検場は間違って3回通りすぎたほど荒んだ高架下の駐車場で、周りにはホームレスが沢山いて少しデンジャラスな香りのする地域。車検の内容は、ライト、ウィンカー、ブレーキランプ、タイヤ空気圧といった簡単な内容でボンネットを開けることもなく、数分であっという間に終了。

次は終わった用紙を持って、駐車場内の掘建て小屋で最終登録手続き。自分の前に4人位が並んでいて、待っている間にもひっきりなしに車検の車が入ってきていたのでドライバーはかなり人気のようだ。

最終登録はUberのスタッフとの個別面接だが、これも事務的に書類の確認と、必要な場合はiPhoneの貸し出し手続きを行うだけだ。UberのドライバアプリはiOS版しか無いため、iPhoneを持っていない、または自分の電話番号をユーザに晒すのが嫌という人はUberから週10ドルでiPhone4を借りることができる。

ドライバー専用のアプリはApp Storeには無く、登録が済むと専用リンクから直接ダウンロードしてインストールする。アプリを立ち上げ、顔写真を登録すると準備完了だ。これで今日からUberドライバー。びっくりするほどあっけない。

運転技術のテストや人となりや英語力など、まったく気にしていないようだ。いや、車検場の駐車場がやけに狭くて、邪魔なところにものが置かれていたのは、運転技術を試していたのかもしれない。

トレーニングや講習会といったものも無く、ペラペラな小冊子が配られるだけ。そこには、「身だしなみを整え、清潔にしよう、利用者にナイスに」などと当たり前のことが書かれているだけだ。実際のオペレーションについてのFAQやビデオはドライバー向けサイトに丁寧にまとめられているが、これに目を通すことが強制されているわけではない。

ドライバーとして客を取る

ドライバーはアプリ内でONLINEボタンをクリックすると、呼び出しの待ち受け状態となる。この状態で町中を流していても良いし、一箇所にとどまって待ち受けても良い。近くで誰かがUberを呼ぶと、待ち受け状態の車の中で最も近い位置にいるドライバーのアプリに呼び出しがかかる。ここで、ドライバーは13秒以内にこの仕事を受けるかを決めて確認ボタンを押す必要がある。13秒を過ぎると自動的に次に近い位置にいるドライバーに権利が移る仕組みだ。

13秒以内に確認ボタンを押すと、Userの詳細(名前、レビューポイント)とUserの待つ場所へのナビゲーションが始まる。多くの場合、5分以内で到達できるところからの呼び出しだ。

現着すると、アプリで「到着しました」ボタンを押す。するとユーザにも車が指定場所に到着したことが知らされる。

California Public Utilities Comittee の規程で、Uberの業務を行っている時はフロントガラスにUberのロゴのステッカーを表示することが義務付けられている。

CPUC sets regulations and rules for ride services | Transportation | San Francisco | San Francisco Examiner

お客さんが車に乗ったら、目的地を確認。ルートについてトラブルになることが多いらしく、Uberのドライバ向けサイトには、「ご希望の道順がありますか?」と最初に聞くように薦められている。

後は、現地に到着したらアプリの到着ボタンを押すだけ。料金がユーザのカードに課金され、ドライバーとの現金のやりとりは一切発生しない。完全なキャッシュレスだ。Uberによれば、チップを払おうとするユーザがいた場合、一度「チップは必要無いシステムです」と断った上で、あとはユーザの判断に任せろとなっている。

ドライバ側には、今のライドの料金がすぐに表示され、専用サイトにログインすれば、Uberの手数料を差し引いた自分の取り分がすぐに確認できる。Uberの手数料は地域や時間帯によっても違うようだが、 最近値上りして20~25%を取っているようだ。

Uberアプリ

上は同じ時間、同じ場所でのドライバアプリからのマップ表示(右)とユーザアプリ(左)の表示だ。ユーザアプリからは現在地周辺にいるUber-X車の場所がわかる。今なら最も近い車が二分以内に到着可能だ。

右はドライバのマップで、この時点では特に表示がないが、渋滞時の割増料金などがある場合には、対応エリアが表示され需要の多いエリアにドライバーを多く配車できるようになっている。

もうお客を取るのはやめた、という時は左上のGo Offlineボタンを押せば良い。

評価システム

Uberのドライバは星5つからスタートする。毎回ユーザがドライバを5段階評価し、平均が4.6を下回った時点で、Uberのシステムから外され仕事が来なくなる。このため、ドライバーは常に良いサービスを心がける必要があり、Uberの利用者満足度を高めている。一方、初心者ドライバの最初の仕事でも、ユーザには5つ星ドライバーに見えるので、必ずしも5つ星イコール優良ドライバでない事を知っておく必要があるかもしれない。

余り知られていないが、Uberドライバは同様にユーザのレーティングを行っている。呼び出しをかけているユーザの評価が事前にわかるので、評価の低いユーザの呼び出しをパスすることも可能だ。

First Ride

準備も出来たので早速最初のお客様を取ってみることにした。火曜日の朝8時、子供を学校に送った帰り道でUber Partner Appを起動しチェックイン。シリコン・バレーでも特にトラフィックの多いLawrence ExpresswayとEl Camino Realの近くを流していたらものの数分でどんどん呼び出しがかかる。最初の二件は呼び出し先の住所に馴染みがなかったのでどうしようか考えている間に13秒がタイムアウト。13秒は意外に短いので即決が必要だ。3件目は必ず取ろうと待っていた所、El Camino Real沿いのよく知っているホテルからの呼び出しだった。ユーザは女性名で星5つ。今回は速攻で確認ボタンを押し、現地に向かった。到着まで約4分位だったろうか。ホテルの入口で、現地到着を知らせるボタンを押すと、ユーザはすでにホテルの玄関の前で待っていた。

どうしたものかわからず、とりあえず車から降りて自己紹介。Nice to Meet Youなんてぎこちない会話をしてから、ドアを開けて後部座席へ。Uberの薦めに従って、ミネラルウォーターのボトルも用意してある。

行き先を聞くと、Sunnyvaleの某企業HQ。よく知っている場所だが、Preferred Routeが無いか一応確認し、お任せするというので、ナビに従って行くことにした。車内ではNYからカンファレンスに参加するために来たという彼女と軽いチャット。これが初めての仕事だと言おうかと思ったけど、不安にさせては行けないと思い黙っていることにした。

朝の通勤ラッシュの中、サニーベール市内の短いライドにかかった時間は4.3マイルで17分40秒。お客さんへの料金は$13.44。初仕事の報酬は$9.33だった。

ドライバーとしてUber-Xを体験してみて

お金のトランザクション、Ratingによるドライバのモチベーション維持、ユーザにもドライバにも無駄な時間をかけさせない効率の良いマッチングシステムなど、とても良く出来ていると関心した。話しによれば、この地域なら月曜から金曜までみっちり働けば週1,500ドルも可能だという。月収6千ドルなら、その辺のリテイル店舗などで働くよりは割がよいかもしれない。勿論車の維持費やガソリン代は自分持ちだ。

Uberのユーザの多くがドライバーとの会話や出会いを楽しんでいるというが、それと同じ楽しみをドライバー側から体験できて、しかもお金まで貰えると考えると悪くないかもしれない。

シリコンバレーまで来てUberを利用する人の多くがビジネスパーソンであることを考えると、それらの人とランダムにワン・オン・ワンのネットワーキングができるチャンスが得られるというのは考えようによっては美味しい話だ。

知らない人を車に乗せるのには不安があるが、会員制のため利用者も個人情報を登録しているし、キャッシュのトランザクションが無いので強盗のターゲットにもなりにくい。そう考えれば一般のタクシードライバーよりは余程安全といえるだろう。

今後も続けるかと言われると、オフィスで本業をしていたほうが金銭面では効率が良いので、あくまで余暇のネットワーキングと話のネタ程度に留めることにする。また面白い発見や体験があったらレポートしようと思う。

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